ゴダールのマリアで主役を張ったミリアム・ルーセルの美貌をこれでもかと晒け出しながら川端世界を視界に開いた『美しさと哀しみと』に溜息が絶えず、『私生活のない女』のダンスシーンほどカッコイイと感じたのは他に思い当たらない。

アンジェイ・ズラウスキー監督が17日に亡くなったそうだ。
愛と殺気と哲学とヒステリーと陶酔が破片のようになって胸かき乱すそのフィルム群はパゾリーニや衣笠とさえ並ぶと思う。

好きで殆どを見たが、退屈は一景もなし、そして全てが官能的に混乱していた。混乱というのは新しい秩序ではないかとさえ思えた。

激しい美の向こうから、簡単に解ってたまるか、という感じの怒りのような何かが押し寄せてくる。それが肌に合った。ズラウスキーの作品には目に見えない魂の敵が透明なまま映り混んでいるのかとも思っていた。

ポルトガル・シントラの廃墟で撮影されたという『コスモス』は未だ観ていない。15年ぶりのメガホンが遺言となった。