もう一回あともう一回と、時間を惜しむように練習して帰って行かれる時のレッスン生の方々のその顔は明らかに変わっている。仕事を終えて稽古場に来た時は少しホッとしたような顔だったのがレッスンの最中に繰り返し繰り返し音楽を浴び繰り返し繰り返しカラダの動きを繰り返すうち、少女のような熱を帯びた顔に、あるいは少年のような冴えた眼にきまって成る。ご本人たちは懸命に練習しているのだから気がつかないかもしれないが、レッスン中のお顔の変化はとても美しい瞬間なのだ。踊りは魂の旅であるという言葉をむかしトルコ人の旋回舞踊の先生から教わった覚えがあるが、レッスンに参加している人の顔を見ながらよくその言葉を思い出す。ひたむきに音を聴き何度も何度もカラダを動かしていると、人は純粋な魂の営みに帰還してゆくのだろうか。力一杯に身を振るとき、邪念は振り払われて、血の通いとともに心のなかがすっきりと澄んでゆくのだろうか。踊る、それは今現在を生きているという心身の鼓動を味わうことに他ならない。集中、解放、リラックス、その繰り返しの中で、人は鼓動や呼吸を実感してゆく。雑念やストレスを断ち切ってゆく。生き生きする。そんなプロセスから少女の顔が少年の目が帰ってくるのかもしれない。