先週WOWWOWで放送されたドキュメンタリー『Wagner's dream』を観た。ロベール・ルパージュによる《指輪》新演出の挑戦、それを迎えるMETのスタッフや出演者たちのプロセスに密着したもの。
ワーグナーの『ニーベルングの指輪』。上演に4日間16時間を要するこのオペラは、誰もが知る名作にして、上演困難な要素が山のようにある、おそるべき演目だ。
ルパージュの演出は前衛に富み、ワーグナーの起源をこれまでのドイツよりさらなるルーツを求めて北欧神話エッダに辿ろうとし、オペラのシーンを地殻変動の実像に重ねてゆく。その斬新な解釈から出演者や音楽家を刺激する。さらに巨大なセットや3D映像を扱う最新のテクノロジーの多用が重なり、全てをナマで上演するのだから、作業や準備は複雑を極めてゆく。
それぞれが本気で能力を発揮しないと目新しさに全てが呑み込まれて心や内容が壊れてしまう。
その新演出を実現する人々のドラマチックな日々を見て、胸が熱くなった。
劇場長の勇気ある決断に始まり、難航する運営、劇場最長のリハーサル、技師たちの苦労、発想に対する一部の無理解や危ういモチベーションの揺れ。つらくなってきた現場に、抜擢された出演者の力強さが新しい風を運ぶ様子。
初日、E♭の長大な持続からスタートする開幕シーンはゾクゾクするほど美しく、しかし幕切れに待ち受けていたのは突然の機械故障による緊急のシーンカット、不評、保守的な観客の反発。やがて出演者の不調や指揮者の病気降板など、続々と荒波がプロジェクトを襲う。それでもスタッフひとりひとりがユーモアと笑顔を絶やさない。気が遠くなるようなトラブルを一つ一つ克服しながら、上演とリハーサルを繰り返し、やがて全4部の作品を成功させてゆく。
常識の殻から抜け出す勇気と努力は、本当に素晴らしいと思った。人は何かを創り出す能力がある、ということに掛けてゆく気概が、伝統に風を吹かせ、停滞を一新してゆく。
僕自身も創作の追い込みのなか、ハッとさせられことが多かった。
いいタイミングで、いいドキュメンタリーを見ることが出来た。
ワーグナーの『ニーベルングの指輪』。上演に4日間16時間を要するこのオペラは、誰もが知る名作にして、上演困難な要素が山のようにある、おそるべき演目だ。
ルパージュの演出は前衛に富み、ワーグナーの起源をこれまでのドイツよりさらなるルーツを求めて北欧神話エッダに辿ろうとし、オペラのシーンを地殻変動の実像に重ねてゆく。その斬新な解釈から出演者や音楽家を刺激する。さらに巨大なセットや3D映像を扱う最新のテクノロジーの多用が重なり、全てをナマで上演するのだから、作業や準備は複雑を極めてゆく。
それぞれが本気で能力を発揮しないと目新しさに全てが呑み込まれて心や内容が壊れてしまう。
その新演出を実現する人々のドラマチックな日々を見て、胸が熱くなった。
劇場長の勇気ある決断に始まり、難航する運営、劇場最長のリハーサル、技師たちの苦労、発想に対する一部の無理解や危ういモチベーションの揺れ。つらくなってきた現場に、抜擢された出演者の力強さが新しい風を運ぶ様子。
初日、E♭の長大な持続からスタートする開幕シーンはゾクゾクするほど美しく、しかし幕切れに待ち受けていたのは突然の機械故障による緊急のシーンカット、不評、保守的な観客の反発。やがて出演者の不調や指揮者の病気降板など、続々と荒波がプロジェクトを襲う。それでもスタッフひとりひとりがユーモアと笑顔を絶やさない。気が遠くなるようなトラブルを一つ一つ克服しながら、上演とリハーサルを繰り返し、やがて全4部の作品を成功させてゆく。
常識の殻から抜け出す勇気と努力は、本当に素晴らしいと思った。人は何かを創り出す能力がある、ということに掛けてゆく気概が、伝統に風を吹かせ、停滞を一新してゆく。
僕自身も創作の追い込みのなか、ハッとさせられことが多かった。
いいタイミングで、いいドキュメンタリーを見ることが出来た。