テレンス・マリック監督の映画『シン・レッド・ライン』(The Thin Red Line:1998)がテレビ放映されたのを録画したまんま、気になっていた。もう、かなり時間が経っている。夜中に眠れなくって、よしっ。と観た。
はじめて見たのはVHSのころ。その美しさに圧倒されながら、やっぱり映画館で見とけば良かった、ああ失敗したな。と思った。何度見ても、そう思う。公開された当時、ずいぶん話題になったにもかかわらず、戦争映画なのだときいて、二の足を踏んでしまったのだった。
たしかにカメラが写しているのは戦場だけれど、観ていると人間の深層心理のなかに入り込んでゆくような気になってくる。どうしてこんなに哀しみは美しさに近づいてゆくんだろう。
兵士たちの目。戦場の劫火に追われながら、その現実から遠くはなれた場所をじっと見つめているようだ。
婚約者の吐息を、反抗期にさしかかった息子の眼を、幼時の記憶や、故国でのストレスや、テーブルや、ベッドシーツや、カーテンを、見つめながら爆音や弾丸や夜の闇にさらされている。
そして誰かに銃口を向けている。
恐怖のなかに、不安のなかに、何者かが人々を巻き込んでゆく。修羅のごとき人間がある場所には、緑深い自然があって、ひとひとり、喜び哀しみ罪を犯し償いながら生きて死ぬ姿をじっと動物や植物が見ている。自然の向こう側には宇宙がひろがっている。
水中を泳ぐ子どもたちの映像と炎に追われる兵士たちの映像。その対比に、僕は強く感情を揺さぶられる。
ゆらめくブルーから激震する赤の世界へ。
ひとは泣きながら生まれてきた。という、たしかシェークスピアだったかしらん、あの言葉が脳裏をよぎる。
なぜなんだろう。
最新作の『ツリー・オブ・ライフ』でも思ったけれど、この監督の映画はとてもダンスに似ていると思う。
ヴァイブレーションとリズムが、別の世界に連れて行ってくれる。
その世界のまわりには、ただただ深い闇が広がっていてほしくなる。
はじめて見たのはVHSのころ。その美しさに圧倒されながら、やっぱり映画館で見とけば良かった、ああ失敗したな。と思った。何度見ても、そう思う。公開された当時、ずいぶん話題になったにもかかわらず、戦争映画なのだときいて、二の足を踏んでしまったのだった。
たしかにカメラが写しているのは戦場だけれど、観ていると人間の深層心理のなかに入り込んでゆくような気になってくる。どうしてこんなに哀しみは美しさに近づいてゆくんだろう。
兵士たちの目。戦場の劫火に追われながら、その現実から遠くはなれた場所をじっと見つめているようだ。
婚約者の吐息を、反抗期にさしかかった息子の眼を、幼時の記憶や、故国でのストレスや、テーブルや、ベッドシーツや、カーテンを、見つめながら爆音や弾丸や夜の闇にさらされている。
そして誰かに銃口を向けている。
恐怖のなかに、不安のなかに、何者かが人々を巻き込んでゆく。修羅のごとき人間がある場所には、緑深い自然があって、ひとひとり、喜び哀しみ罪を犯し償いながら生きて死ぬ姿をじっと動物や植物が見ている。自然の向こう側には宇宙がひろがっている。
水中を泳ぐ子どもたちの映像と炎に追われる兵士たちの映像。その対比に、僕は強く感情を揺さぶられる。
ゆらめくブルーから激震する赤の世界へ。
ひとは泣きながら生まれてきた。という、たしかシェークスピアだったかしらん、あの言葉が脳裏をよぎる。
なぜなんだろう。
最新作の『ツリー・オブ・ライフ』でも思ったけれど、この監督の映画はとてもダンスに似ていると思う。
ヴァイブレーションとリズムが、別の世界に連れて行ってくれる。
その世界のまわりには、ただただ深い闇が広がっていてほしくなる。