盆を過ぎて
人影も少しまばらになった渚を歩く・・・。

波打つ波線がただ白く、
直射日光は白く熱く、
意識も、
真白く白めく。

ただ、てくてくと歩く。
どどどどと泣く白昼の海鳴りが、
内側に染み込んでは、
なにかをみじんに砕き、
壊して、
白くしてゆく。

白い波線を、
ゆるやかに冷たい水を、
踏んで、
ただ、てくてくと歩く。
強すぎる日差しが、
この私の人影も消して、
白くしてゆく。

むかしむかし、人は水だったのだ、と聞く。
遠い未来、また人は水になるのだ、とも思えてくる。

てくてくと歩くことをやめると、
どどどどと泣く白昼の海鳴りの遠くから、
少し怖ろしいような、
沈黙が、聞こえてくる。

「Es lebt – ein namenlos Wesen
 im namenlosen All.
 ある、なまえのない存在が、いきている、
 なまえのない、万象のなかで」
(Christian Morgenstern)

またてくてくと歩き始める。

渚に背を向けて、
人の声がする方へ、
私の歩く足音を聞きながら、
てくてくと歩きながら、

私は、

誰かが隣にいることに、
気付く。