3月12日、とっても感じのいいコンサートに行ってきました。タイトルは「原田力男・没後10周年追悼演奏会」、企画&構成はピアニストの大井浩明氏。会場は東京・上井草のちひろ美術館。ここは、いわさきちひろさんの作品を常設している居心地の良い美術館です。原田力男さんは、調律師として活躍されながら私財を投じて演奏会を企画し続け、新しい音楽の作曲家や演奏家を育ててこられた方とのこと。つまり、僕らの国に最も必要なタイプの人だったんですね。
 さて、コンサートはシューベルトの即興曲でそっと開演、二曲目からは一転して現代曲、しかも全て日本の曲でラストまでっていう、気持ちよい展開。作曲者も立ち会う中、ぼくら聴衆も全身を鼓膜に!この会、すごいことに公募までして、全8曲中4曲が初演。とりわけ感動したのは吉松隆さんの曲「シリウスの伴星に寄せる作品1」(初演)と故・甲斐説宗さんの二曲、「アナラポスのためのインターアクティビティー」と「ヴァイオリンとピアノの為の音楽?」でした。
 吉松隆さんの音楽は、深いペダリングのピアノが僕の心のなかに一音一音しみこんでいき、命の水で虚空を満たしていくような印象、やさしさへの意志が伝わってくる見事な作品そして演奏でした。(あ~、こんな曲を踊れる体になりたいっ!!)
 それから、甲斐説宗さん。やっぱり凄い!強い!圧倒されるような力強さ、明快、シンプル!広大な宇宙にポンって音を置いて「ど~だっ?!」て対峙してみるような気迫ある音楽で、(合気道の)植芝盛平の言葉に触れたときのような電撃的体験。「ヴァイオリンとピアノのための~」(名曲!)は甲斐史子さんの大胆かつ明快な演奏で胸のすく思い。アナラポスによる曲は、渡邉理恵さんの演奏。絶妙のバランス感覚、集中力あふれる丁寧な演奏によって、楽器制作者と作曲家の魂が響き合い、時が円環するがごとき印象。
 あと、鈴木悦久さんという作曲家の「クロマティスト」がいい感じでした。誰もいないらせん階段で数がたわむれているみたいで、ダンスに近い感覚&さわやか!・・・と、諸々きりがないのですが、このコンサート、全体が一つの作品のように響き合っていました。音を通して人間と人間が絆を深めていく場所に出会った気分で、実りあるソワレでした。やっぱり同時代の音楽って、共感しちゃうんですね。がんばろう!っと背中を押された気分です。