ヴィレッジ(2023) | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

ヴィレッジ(2023)

84点

2019年の日本アカデミー賞で主要賞を独占した、骨太の社会派作品『新聞記者』。そのメガホンをとった藤井道人監督が、今回は「理不尽な日本社会の縮図」をドロドロと描いているのが本作。ちなみに2004年公開M・ナイト・シャマラン監督の同作とは無関係。
外部から閉ざされた村・霞門村。そのゴミ処理施設で働く、重い心の傷を持つ主人公の片山(横浜流星)。村と主人公、両者の過去を紐解く不気味なストーリー。
閉鎖的な村のゴミ処理場の穴と、一見ミスマッチな伝統芸能の「薪能」を上手く演出の道具として使い、過去の事件をフラッシュバックさせる手法。横浜流星の好演も手伝い異様な雰囲気は抜群。黒木華や古田新太も相変わらずいい味出している。
登場人物のほとんどに暗い影が描かれているが、そこはどんよりした人間ドラマというよりは、先が気になるサスペンス的な展開。そしてエンディングにはまさかの意外な結末が用意されている。ネタバレは避けるが、この終わり方はなかなか良かった。

ネタが出尽くした感のある今の時代に、これだけクオリティの高い脚本なのがとにかく驚く。そこはぜひ見て確認して頂きたい佳作。若手とベテランをちょうどよく融合したキャストも映画を盛り立てている。
興行収入では苦戦しているとネット記事に書かれていたが、こういう作品がヒットする土壌を作らないと、邦画に未来はないと思う。

監督:藤井道人
出演:横浜流星、黒木華、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、杉本哲太、西田尚美、木野花、中村獅童、古田新太
2023年  120分