僕と友人2人で、敦賀市に泊まりで出かけた。
ビジネスホテルに三人部屋をとり、チェックインだけ済ませた。
以前、敦賀市の本町という飲み屋街で店を出していた事もあり、本町の友人の店で食べて飲んだ。
そして2軒目でも飲んで歌い、12時くらいに店を出てホテルへ向かった。
ホテルに着く頃、僕は便意に襲われた。
また便の話だ。
僕はほぼ、和式トイレでしか便が出来ない。それは実家が和式だったので、その癖が付いていた。
洋式ではうまく肛門が開いていない気がするのだ。
僕らの泊まってるホテルは、残念ながら和式がなかった。
僕はしつこく、ホテルマンに聞いたが、ホテルマンはどこにも和式トイレはないと言う。
僕は、
『本当にないですか?よく思い出したみて。』
何度も念を押して和式トイレを探す僕に、ホテルマンは心で首をかしげていた事だろう。
仕方なく僕はティッシュを持ち、ホテルから出た。
そして見つけた。
道路を挟んだ、ホテルの駐車場の奥の暗闇を。
そして念のため、酔っ払ってる友人に入口あたりで見張りを頼んだ。
もう一人はアホらしくなって部屋に戻った。
B地点は草も生えていて、奥は土の駐車場だった。
僕はほどよい草の場所を見つけ、そこに座り込んだ。
ほどよい草でないと、跳ね返る可能性があるからだ。
5センチから10センチがベストで、それ以上だとお尻がサワサワする。
そして僕が第一弾を出した時、事件は起きた。
地図でいうB地点の下から、声が聞こえた。
僕は車と同じ向きに座っていたから、Bがお尻だと思ってくれていい。
後方からカップルの声が。
案外近いし、近付いてくる。
僕はあせった。
どうしよう。
どうにも出来ない。
拭いてないので、立てば便が付く。
僕はお尻を出したまま、蟹のように動いた。
闇夜に動く、敦賀の蟹。
本場、越前蟹。
僕の後方では女子が、
『キャー!なんか動いたで!』
と悲鳴に近い声。
真っ暗が幸いした。
僕は蟹のまま、地図の右上の車の影まで変な歩き方で動いた。
僕が安全地帯だと思っていたB地点の先には、あぜ道があったのだ。
でも誰が想像出来よう。こんな夜中にカップルが歩いて来るなんて。
何しとんねんカップル!
逆にカップル側から言えば、誰が想像出来よう。
あぜ道を歩いて来たら、ウンコをしてる男がいて、暗闇を蟹みたいに歩いて逃げて行くなんて。
僕はそれ以来、なんとか洋式トイレの上に足を置いて、座って便をこなすようにしている。
おしまい。
嵐山あおや