高浜とは、福井県の高浜町のことだ。
僕が17歳の時、友達二人と高浜に泳ぎに出掛けた。
宮崎旅館という小さくて優しい旅館で2泊した。おとん、おかん、あの時は旅館代ありがとう。
旅館から浜へ歩いて行くと、途中に、『引っかけ橋』と呼ばれる小さな橋がある。
大阪のそれとは全然違う、五メートルくらいの橋だ。
僕らも若かった。
男3人で、女の子3人に声をかけた。
男友達タダシ
『ちょっとすみません🎵
この辺でエリマキトカゲ見ませんでしたー?』
すかさず僕、
『この辺でえりあしの長いおばさん見ませんでしたー?』
女の子たちは笑った。
僕『俺らは京都から来てんねけど、どっから来てんの?』
女の子『地元やでー。』
タダシ『俺らは京都から来てんねけど、どっから来てんの?』
僕『それ今、聞いたやん!』
こんな感じで会話は続き、僕たち六人は、恋をすることになる。
その日は宮崎旅館に泊まり、次の日も、その女の子たちと遊んだ。
3人とも年は二つ下で、名前が和美、由美、ゆかり。
旅館では、
タダシ『あおや、誰が気に入ったん?』
僕『由美ちゃんやわー🎵お前は?』
友達A『俺、和美ちゃん♪』
タダシ『ほんなら俺、ゆかりちゃん!』
僕『ほんならて何ぃ?』
僕は見た瞬間から由美ちゃんが気に入った。その夏、僕らは4回、高浜を訪れる。
高浜にいない時も、実家の宇治田原から毎日、由美ちゃんに電話をかけた。
当時、家の電話だったので、由美ちゃんからかかって来た時も、僕は、
『電話代かかるし折り返すわ。』
なんて言いながら長電話を楽しんだ。つまらないギャグなどを織り交ぜ、僕のトークは炸裂した。
翌月の電話料金が2万を越えたので、おかんの罵声も炸裂した。
ごめんな、おかん。
そして、おとん。
もう一度おかん。
夏が終わる頃、高浜の堤防をバイクを押しながら由美ちゃんと歩き、僕は告白をした。
頭の中では中村あゆみの曲が流れていた。
由美ちゃんは小さくて、ショートカットで、目がかわいかった。
僕『由美ちゃん、どうやら好きになってしもたみたいやわ。こんな男前な俺やけど、付き合ってくれへん?』
由美『男前ではないけど、かまへんよ🎵』
僕『う、うそん?!』
その日、由美ちゃんは家に僕を招き入れてくれた。台所には由美ちゃんのおばあさんが座っていて、
開けっ放しの隣の部屋で、僕と由美ちゃんは、ハッピーターンを食べながら、ダラダラと話をしていたのを覚えている。
おばあさんは、あまり動かなかったのも覚えている。
その日から、かぼそい遠距離恋愛が始まった。
夏休みが終わり、会いに行く事も出来ず、電話で話す毎日が続いた。
その次の月、電話代の請求が来て、またおかんが発狂していた。
秋が深まったある日、由美ちゃんから電話があった。少し暗かった由美ちゃん。
由美『あおや君、私、こっちに好きな人、出来てしもてん。』
僕『ふーん、、、て、うそん?』
電話を切りすぐ、僕は城陽市の友達の所へバイクを飛ばした。
オリオン座がキレイだったのを、なぜか覚えている。
その後も、由美ちゃんと会う機会があり、由美ちゃんは彼氏がバンドをしていて、
小浜でライブをすると言うので、僕はなぜか、由美ちゃんの彼氏を見に、一緒にライブに出掛けた。
全然面白くなかった。
その1ヶ月後、僕はなぜだろう。地元の友人とバンドを組む。
由美ちゃん、僕もバンドを組んだよ。そんな事も伝えられないまま、僕の恋は終わった。
けど、キスも出来なかったこの恋は、僕の中では今でも、セピア色に輝いている。
嵐山あおや