僕が20歳の頃、サチ(仮名)という女子と付き合っていた。
ショートカットでかわいかった。
付き合って半年、サチの家に泊まり、朝、起きたらサチが僕に、
『おはよー、まこと♪』
と言った。
ま、こ、と?
僕はまことではない。
まさとでもない。
しもんまさと、でもない。
知ってます?およげたい焼き君って。

結局、元彼と間違ったらしい。
もう半年付き合ってるのに?と思いつつ、そこは流した。
まこと事件の、その次の週。
携帯がなかった時代、僕らはいつも家電で『おやすみの電話』をしていた。
何がおやすみの電話やねん!
『アイシテルのサイン』みたいに言うなー!
と思った人います?
全然似てへんやん!
その日はサチから、早い時間におやすみの電話が来たの。9時頃。
サチ『あおや、今日は早く寝るね。私のこと好き?おやすみ。』
サチはいつも、私のこと好き?と聞いた。
僕『そんなん聞くなよ。付き合ってんねから。おやすみ☆』
………
しばらくして。
予感というものがあるなら、その時の僕は、その予感が働いた。竜雷太。
1時間後、僕はサチの家に電話を入れた。お母さんが出て、
『さっき出て行きましたよ。』
次の日、サチから事情を聞くと、まことの家で朝まで、まことの相談にのっていたらしい。
まことの相談って、ほんまの相談ってこと?
まことの相談。
僕はそれを聞き、すぐに別れた。
数年後、サチが子供を産んだと噂話に聞いた。
サチ、僕は寄り道だったかもしれないけど、付き合ってる時は『私のこと好き?』て聞くな。
好きやったに決まってるやろ……
嵐山あおや
