当日の夜、居酒屋でぼったくられながら、その後、豪快なママのいるスナックへと入った。
ママは具志堅用高みたいな出で立ちだが、女の子の中に、少しアゴに特徴があるかわいい子がいた。
いくちゃん。
アゴの特徴とは、アゴが綾瀬はるかチックという意味だ。
『南方先生!あなたは未来から来たのですか?』
そのいくちゃんとは話が合い、次の日も通った。年は10ほど下だった。
いくちゃんは、『グラバー園でハートの石を見つけたら幸せになるよ♪』
と教えてくれたので、次の日、グラバー園で一人、ハートの石を見つけた。
ちょっと幸せだった。
僕は嫁には全部言う主義だから、ホテルに帰って、いくちゃんの話を嫁にもした。
ホテルの名は、丘の上にあるマジェスティクホテルと言う変わった名前のホテルだった。
マジェスティクとは、フランス語かオランダ語で、威風堂々という意味だ。
話はそれたが、3日目の夜、いくちゃんと同伴をした。
中華街の門の近くで、二人仲良くお寿司を食べた。食べているいくちゃんのアゴがかわいかった。
綾瀬はるかにアゴだけそっくりだった。
『南方先生、ペニシリンを!』
そして最後の夜、永遠という名の香水を渡し、アフターの約束もした。
いくちゃんは、僕との別れを悲しみつつ、快くオッケーしてくれた。
店が終わった時、豪快なママが言った。
『あおやさん、稲佐山、案内してあげるわ!』
僕『え……』
いくちゃん『南方先生……』
ママはすべて知っていた。いくちゃんとアフターへ行くことも。
ママ『いくちゃん、今日は帰り!』
強引ではあった。
ママはタクシーで僕を、福山雅治の増築された家を見に連れて行き、
そのあと、夜景のキレイな稲佐山へ案内してくれた。
いくちゃんからメールが何度か鳴り、僕は心の中で、
『なんでこのおばはんと夜景見てんねやろ?』
と断りきれなかった自分を罵った。
夜景を見ながら具志堅は言った。
『旦那、漁師やから今夜、帰らんのよ……』
僕は心の中で、なんでそんな髪型なん?と思いながら、言葉ではこう言った。
『どんな魚とって来るの旦那さん?』
ママ『魚は知らん。今夜、私、一人なんよ……』
僕『そら寂しいね。そろそろ帰るわ。』
ママ『あんた、なんや!男ちゃうんか!』
半分キレていた。顔面にストレートが飛んで来たらイヤなんで、タクシーに乗り込んだ。
ママはホテルまで送ってくれて、タクシーから僕が降りる時、
『ホテルはダブル?シングル?』
と聞いてきた。僕はそれには答えず『ママ、ありがとう。』と言って走ってホテルに入った。
怖かった。
そのあと、部屋からいくちゃんに電話をし、1時間しゃべった。
いい想い出ができた。
今頃、どうしてるかな、いくちゃん……
長崎がテレビに映ると、いつもいくちゃんを思い出す。
嵐山あおや