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超純粋

 『走れメロス』

上巻


P。12 & 13。~



メロスは不安になり、

いてもたっても

いられなくなって、

ちょうど、

かれの腰もとを

通り越そうとしていた

ひとりの男の子を

呼びとめた。

その子は

小っこい背中に、

布袋にはいった

ソロバンを、

ななめにくくり

つけていた。


こんなスタイルの

男の子をつかまえて、

----何かあったのか、

二年まえに

この市に来たときは、

犬たちまでも

歌をうたって、

きみたちの

小山という小山=

広場という広場は

にぎやかであった

はずだが、

 となんとなく

遠慮がちにたずねた。

少年は、

首を振って

答えなかった。


しばらく歩いて

高校生に逢い、

こんどはもっと、

語勢を強くして

質問した。

高校生は

答えなかった。

メロスは両手で相手の

からだをゆすぶって

質問を重ねた。

高校生はあたりを

はばかる低声で、

わずか答えた。


----文部省は、

人をテストします。

----”なぜ”、

テストするのだ。

----わかりません・・・・

・・・・悪心を、

抱いている、

というのですが、

誰もそんな、

悪心など持っては

いませんよ。


----文部省は、

毎朝、きみたちに、

どんな話を

してくれるんだ?

----別に、

 なんにも・・・・

----お昼の時間に、

話してくれるのか?

----別に、

 なんにも・・・・

----文部省には、

言葉がないのか?

----・・・・


----たくさんの人を

テストしたのか。

----はい。

はじめは大学生を。

それから高校生を。

それから中学生を。

それから小学校の

五六年生を。

それから小学校の

三四年生を。

それから小学校の

一二年生を。


----おどろいた。

文部省は乱心か。

----いいえ、

乱心ではありません。
最も

根本的なところで、

子供を、

信じることが

出来ない、

というのです。


----なぜ、

子供たちを

信じることが

出来ないのだ?

なぜ、

子供たちの

感受性と想像力を、

信じることが

出来ないのだ?

なぜ、

子供たちの

希望と勇気を、

信じることが

出来ないのだ?

なぜ、

子供たちの

体育と図工と音楽を、

信じることが

出来ないのだ?


~P。12 & 13。


[欄外]


=(読み方)=

(こしもと)(せなか)

(ぬのぶくろ)

(このしに)(えんりょ)

(くびをふって)(あい)

(ごせい)

(ていせい(こごえ))

(あくしん)(いだいて)

(らんしん)

(かんじゅせいと

  そうぞうりょく)

(きぼうとゆうき)

(たいいくと

 ずこうとおんがく)


~P。12 & 13。