平成28年度の地域別最低賃金の改定が行われ、栃木では、10月1日から24円引き上げられ、時給775円になりました。

 最低賃金は、最低賃金法に基づき、この金額以下で働かせてなならないという金額で、パート、学生アルバイト、嘱託など呼称に関わらず、すべての労働者が対象になります。障がいがある、あるいは見習い期間中ということで一部減額が認められますが、減額には労働基準監督署の許可が必要です。

 反貧困ネットワーク栃木では、今年度、栃木地方最低賃金審議会に意見書を提出し、審議会の傍聴にも取り組んできました。

 次ページ以降は栃木最低賃金審議会に提出した意見書です。

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 2016年7月25日

 

会長 那須野公人 様

 

反貧困ネットワーク栃木  

共同代表 白 崎 一 裕

連絡先(事務局)石川輝雄

宇都宮市弥生2-14-17

石川税務会計事務所

TEL 028-638-1231

 

私たち反貧困ネットワーク栃木は、栃木県内の貧困問題に取り組むため、2009年に栃木県において結成されました。働いても働いても十分な賃金が得られないことが貧困問題の根底にあるため、その中で、労働者の賃金問題にも取り組んでいます。

今年度、栃木県最低賃金改定にあたって、最低賃金法25条5項及び6項にもとづき、下記の通り意見を述べます。

 

 

(1)栃木県の最低賃金を時給1,000円とすること。   

今年度1,000円への引き上げが不可能ならば、雇用戦略対話におけ

る合意を踏まえ、800円に引き上げること。

 

労働分野の規制緩和により、非正規雇用労働者が増大しており、その割合

は全労働者の4割に達しようとしています。これに伴い、年収200万円以

下の労働者も増大しており、「働く貧困層」の問題は深刻になっています。

現在、栃木県最低賃金は751円ですが、この金額では、労働基準法で定

められ た上限の月174時間働いても月13万円、年収では156万円ほ

どです。ここから、社会保険料や所得税、市県民税を差し引くと実質的な手

取り収入は10万円を下回り、憲法で保障された「健康で文化的な生活」を

営むことは到底困難です。

これまで最低賃金の引き上げにつては、最低賃金法9条2項の「地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」に基づき、「賃金改定状況調査結果」の第4表を重点に、「上げ幅」論議に終始してきました。

その結果、9条2項の賃金の水準をどう考えるかという議論があまりされ

ない中、欧米先進国が1200円以上の最低賃金を実現していることに対し、

全国平均でも798円と大きく立ち遅れています。そして賃金メジアン(中

央値)に対する最低賃金の相対水準でもOECD諸国の中で最も低いランク

に留まっています。また、国内的には、地域間格差が拡大する一方というこ

とになってきました。

韓国で、昨年大幅な最低賃金の引き上げが行なわれた根拠は「一般労働者

の賃金引き上げ分より最低賃金の引き上げ率が高くなってこそ、所得の不均

衡を改善できる」という『所得分配改善理論』でした。

「働く貧困層」ワーキングプア問題・子どもの貧困問題の解決のためにも、これまでのような「上げ幅」論議ではなく、最低賃金の水準を改善する議論が必要です。そこで有効なのが、2010年6月の政労使の雇用戦略対話における「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、2020年までに全国平均1000円をめざす」との合意事項です。

時給1000円になると、月174時間働いたとして年収が200万円を超えることができるとともに、最低賃金額が欧米先進国に一歩近づき、最低賃金法の目的をやや達成するのではないでしょうか。

「できる限り早期」にといわれながら、2010年の政労使の合意後、6年が経過します。今年度上記1000円が難しいのであれば、雇用戦略対話に基づき少なくとも800円を答申すべきです。

毎週日曜日に入る求人広告をみても時給800円以下の求人が多数あります。すぐにでもこの状況を改善する必要が高いといえます。また、栃木県が境を接している埼玉県は平成27年で820円となっており、県堺を超えただけで69円もの差額があるのは、不平等です。本来は全国一律の最低賃金が望ましいことはいうまでもありませんが、直ちに実現するのが難しいならば、少しでも近づける努力をしてもらいたいと考えます。

 

(2)実質的な審議が行われる小委員会をはじめ、全審議会を完全に公開すること。

 

肝心の金額の議論を行う専門部会が公開されていないため、どのような議論で答申が出されるのか、果たして実際最低賃金の対象になるような非正規雇用労働者などの低賃金労働者の意見がどのように反映されているのか、まったくわからないままとなっています。

鳥取県の地方最低賃金審議会は6年前、完全公開へ踏み切りましたが、当時の会長の藤田安一鳥取大学教授(公共政策学)は「公開して支障はなく、活性化した。むしろ非公開では委員間の信頼を失う」と話しています。

最低賃金については答申の出たのち異議申出を受け付けしますが、専門部会が非公開ではどのような議論がされたのかわからず、異議申出も的を外れたものになりかねません。

活発な議論を期待して、専門部会を含め、すべての審議会を公開とすべきです。                               

 

以上