プロフィール しまだやすじ 労働組合わたらせユニオン書記長

 

 

今年度の最低賃金の改定が行われ、10月から栃木の地域別最低賃金が7

75円、全国平均では823円になりました。3%を超える引き上げで、30人未満の事業所では、働く労働者の1割以上の人がこの改定によって賃金引き上げになり、日本全体では300~500万人に影響が出ると言われています。

 安倍首相の昨年の経済財政諮問会議における3%引き上げ発言など、アベノミクス実現のための最低賃金引き上げ要請が、最低賃金審議会の議論に大きな影響を与えたことは間違いないと思いますが、毎年3%づつ最低賃金を引き上げたとしても、平均で1000円を超えるのは2023年です。栃木の最低賃金775円では、フルタイムで週40時間働いたとしても、年収は163万円余で、ワーキングプアといわれる200万にはるかに届きません。

 国際的にも日本の最低賃金は先進国では最も低い国の一つです。国連の社会権規約委員会は2015年5月、日本の最低賃金の水準が生活保護費や最低生活費などを下回っていることに懸念を表明し、最低賃金の水準を決定する際に考慮する要素の再検討を要求しています。

  なぜ、日本の最低賃金は低いのでしょうか。日本では、最低賃金の対象は主婦パートや学生アルバイトなど家計補助的労働者で「お小遣い」程度でよいと考えられてきました。日本の最低賃金は、1959年の最低賃金法の成立により中卒女子初任給の賃金を最低賃金とする業者間協定として始まりました。その後、最低賃金の水準が議論に上ることはなく、30人未満の中小零細企業の賃上げ率が引き上げ額の最重要参考事項として「上げ幅」の議論が行われてきました。

  いまや最低賃金近辺で働いている労働者は、遊ぶ金欲しさの労働者ではな

くなっています。労働者全体の4割が非正規労働者になり、家計の中心とし

て、生計維持のために働く労働者が増えています。最低賃金は「引上げ額」の議論を脱却し、憲法25条や、最低賃金法に基づく、生活できる最低賃金の水準とは何かを議論すべき時が来ています。