ムスメは一歳をすぎても、まだまだおっぱいにくっついていた。
なんせくっつけといたほうが、私が寝かしつけるのにラクなんである。

が、この間アメリカにずっといた友達に言われて考えた。
「私二歳半まであげてたんだけどさあ、日本の電車の中でおっぱい~!って叫ばれたんだよねえ。アメリカではいいけど日本で日本語で叫ばないでえ~」

そうか、喋るようになると言葉で要求されるのか。
それはイヤだ。
泣かれただけですぐ負けるのに、言葉で言われたら逆らえなさそうじゃないか。
よし、喋るようになる前には卒乳しよう。

と思っていたのだが、それからすぐムスメは喋りはじめ、いつの間にかおっぱいという言葉も覚えてつぶやくようになった。
私はぱいちゃんとしか言ってないのに。
犯人はアイフォンから流れる”げんこつ山のたぬきさん”である。

🎶げんこつ山の~たぬきさん。おっぱい飲んでぇねんねしてっ。だっこしておんぶしてまあた明日🎶
…キケンすぎる幸せな歌だ。私もその生活がいい。

本格的に叫ばれる前に、と、10日前くらいに寝るときだけの一回に回数を減らした
そしておととい土曜日に外食に行ったらベビーカーで寝てくれたのを見て、昨夜考えた。
日曜だし、パパはいるし、このまんま寝かしつけてくれたら、月曜夜にはおっぱいのことなんて忘れてるんじゃね??
三日で忘れるって聞くし。

「そんなわけで寝かしつけよろしく」
と言ったら、しぶられた。
「ヘルパーにやらせりゃいいじゃん」
…日曜は休みだ。

私はムスメが泣くのがとーーーってもイヤなんである。
誰でも嬉しくはないとは思うが、私の場合は相手の要求を察して先回りして解決してあげないと何をされるかわからないという幼児期の虐待状況が呼び起こされるらしい。
泣かれると投げそうになるので、泣かれる状況をなるべく作りたくない。
私の心の平穏のために。

「だって今日はともかく、平日早く帰ってきて寝かしつけられるわけじゃないんだからさあ」
ま、そーだけど、でも。

「そもそもね、一年前に私が卒乳するときは何日かヘルパーに寝かしつけ任せたいんだけど、どう?って聞いたら、絶対ダメ、可哀想って言ったのアナタよ???だからあなたにやってって頼んでるんだけど」
「一年前と今じゃ状況が違うだろおおお」

???????
一年前だろうと何だろうと、卒乳するときは、の話をしたんだけど、そして今がその時なんだけど…
なんで状況が違うの????

わからん。
ああ、ダンナと日本語が通じない。

まあ父親がいいと言ってるんだから、今日月曜夜はヘルパーに任せて食事に出かけちまおう。
丸三日以上飲まなければ、おっぱいの存在も忘れるだろう。

けっきょくラストおっぱいは、金曜夜のいつものごとくiPadで本を読みながらテキトーにあげてたヤツだった。
一か月くらい、あげるたびにそろそろ卒業だよ~、と言ってはいたが。

最後って言ってあげなかったな。
くっついてもらえなくなってさみしーのは間違いなく私のほうだなあ。

そしておっぱいを吸われているときは幸せホルモンがどっぷり出ているらしく、それが出なくなることがとっても心配である。
おっぱいの回数を減らしてからかなり鬱っぽい。
偶然かもしれないが…

天然の薬よ、さよーなら。

そんな今朝、ムスメはオマルで初おしっこ成功だ。
もう赤ちゃんじゃない。
赤ちゃんのムスメとも、さよーなら。