『敗北者たち I vinti』1953年
戦争中は子どもで、戦後、集団による暴力を目撃することとなった、「燃え尽き世代」の三都の若者たちを描いたアンソロジー。
彼らは一様に裕福な家の子で、貧困や格差とは無縁でモラトリアム期間にあり、事件で一獲千金を狙ったり目立ったり有名になったり他者の関心を得たいという行動原理で衝動的に突っ走る。そして殺人に罪悪感を感じない。
フランスの大学生たちは、いつもお金を持っていることを自慢しているプレイボーイ気取りの友人ピエールを殺害し、その持ち金を奪って逃げようと計画する。
(奧右がピエール)
友人たちは埋蔵金があるとされるパリ郊外の廃墟となった城へ行き↑、中の一人の女性を餌にしてピエールを誘導、ピエールが1人になったところで他の青年が拳銃で撃つ(ピエールは負傷したが死なず、その後道に這い出て見回り番人に発見され、事が公になる)。
ピエールと、おびき出し役の女性
ピエールを銃で狙う友人
しかし撃たれて倒れ込んだピエールの「所持金」は贋金。友人たち↓は逃げるが、親の銃を持ち出しピエールを撃った兄弟の一人が父に連れられ自首しにいくところで、ジエンド。
この兄弟は一緒に城に行ったのだが、帰宅して警察の捜査が入ったとたんに一人が父に「こいつが撃ったんだ、俺じゃない」と責任逃れ。しかしその(多分)兄は父に連行される(多分)弟のことが急に心配になり、付いていくが、「お前は関係ないんだろう?だったら家にいろ」と父に言われると歩みを止めて、二人を見送る。
イタリアの、裕福な家庭の一人っ子であるクラウディオは、実はアメリカのタバコを密輸するギャングの一味。
クラウディオ(手前の青年↓)は親には内緒で夜その仕事をし、金を得るとガールフレンドに会いに行くという生活。
ある日密輸現場に警察が来ると、逃げようとしたクラウディオは行く手を阻む男を射殺。
クラウディオが負傷したままガールフレンドに会いに行くと、彼女は「わたしの主治医に診せないと」とクラウディオを助手席に車を運転する。
しかし病院に着いて彼女が主治医に会いに行って戻るとクラウディオは車にいなかった。
彼はそのまま自宅へ帰り、警察が来て事情を知らされた父が「ずっとそばにいた息子が怪物になってしまった!」と嘆き妻と息子の部屋に行くと、ベッドでうつ伏せになり、クラウディオは既に絶命していた、でジエンド。
イギリスの「自称詩人」の実は失業中の青年は、映画館で隣りの席になった中年女性に外に誘われると、一緒に散歩をして、人目のなくなったところで絞殺。
そして四日後、「目撃者」としてその情報を日刊紙に売り込んだ(得た賞金をすぐにドッグレースにつぎ込み、増やした)。
(自分の写真が目撃者として載った新聞に見入る青年)
(意中の女性に自分が新聞に載ったことを自慢する青年。しかし女性は不快にしか思わない)
最初目撃者だった青年は、更に目立ちたく有名になりたいがために自分が犯人だと日刊紙の記者に告白。
それは彼が注目を浴びたいがための狂言とはじめみなされたが(彼は目撃者として新聞に載る写真の修整を命じたりした)、彼の目撃情報(「死体の皮膚は白かった」)の誤り(彼が通報したのは死後4日経っていてもう皮膚は「白く」なかった。「白い」というのは、殺した犯人だからわかるのだろうという推察)により、彼は被告となった。
裁判が始まっても、その青年は何の罪悪感もなく終始不真面目な態度。
(奧右が被告の青年)
青年に死刑が宣告されると、関わった日刊紙の記者は気持ち悪さと疲労感に襲われ、会社の馴染の交換手の女性に電話ボックスから電話をかけ、いつもの冗談を言って日常気分を取り戻すのだった、でジエンド。
燃え尽き世代は、自分たちを持て余していて、しかし新たな何かを作り上げようというエネルギーはなく、退屈してクラブで自慢し合い噂し合い、一人前気取りで時間を潰し合っている。この様子に、日本の「しらけ世代」を想起した。しらけ世代 - Wikipedia
三都の物語の展開の仕方に、それぞれのお国柄が出ているように思えた。特にイギリスの話の、冒頭から犯人がわかっている感じが、シャーロック・ホームズものっぽいと思った。
★Wikipediaより★
『イ・ヴィンティ』(英語: The Vanquished)は、ミケランジェロ・アントニオーニ監督
による1953年のドラマ映画です。アンソロジー映画である本作は、3つの異なる国を舞台にした3つの物語で構成されており、殺人を犯す若者という共通のテーマを持っています。パリを舞台にしたフランスの物語では、2人の男子生徒がお金のためにクラスメートを殺すことを決意します。ローマを舞台にしたイタリアの物語では、タバコの密輸に関わっていた大学生が警察の家宅捜索中に男を撃ち殺します。ロンドンを舞台にしたイギリスの物語では、失業中の若い男が女性の死体を見つけたと言い、マスコミに自分の話を売り込もうとします。この映画は、アントニオーニを監督を提案したスソ・チェッキ・ダミコのフィルム・コンステレーションの企画で、1953年のヴェネツィア国際映画祭で上映された。
プロット
フランスの物語
2人のティーンエイジャーは、いつもお金を持っていることを自慢している友人のピエールを殺害することにしました。彼らの計画は、ピエールを含む少年少女のグループが、埋蔵金があるとされるパリ郊外の廃墟となった城に行くことです。ピエールを一人にすると、手に入れた拳銃で撃つ。彼のお金は幻影であり、彼は負傷しているが死んでいないので、彼らは家から逃げ出します。銃を発砲した少年の父親は、警察に自首するよう説得する。
イタリアの物語
裕福な両親の一人っ子であるクラウディオは、アメリカのタバコを密輸するギャングに所属しています。警察が作戦を急襲した際、彼は1人を射殺し、1人で逃走する。暗闇に落ちて、彼はひどく怪我をします。彼はガールフレンドの家にたどり着くが、彼女は彼を病院に連れて行く。よろめきながら家を出た両親は、彼がベッドの上で死んでいるのを発見する。
英語の物語
日刊紙の犯罪記者は、ヒースで女性の死体を発見し、その記事の対価を請求したいという青年オーブリーから電話を受ける。新聞は警察に通報し、警察は遺体を見つけて運び出した。そして、オーブリーの口座を一面に印刷し、彼の写真とともに支払います。さらなる名声を求めて、オーブリーは自分が殺人者であることを告白するが、彼を有罪にするのに十分な証拠がないと確信している。しかし、彼の原作に誤りがあり、警察に発見され、彼は死刑を宣告される。
キャスト
- フランス物語
- ジャン・ピエール・モッキー
- エチカ・シュロー(シモーヌ役
- アンリ・ポワリエ
- アルベール・ミシェル - Le père de Georges
- イタリアの物語
- フランコ・インテルレンギ(クラウディオ役
- アンナ・マリア・フェレーロ(マリーナ役
- クラウディオの父役のエドゥアルド・チャンネッリ
- クラウディオの母親役のエヴィ・マルタリアティ
- 英語の物語
- パトリック・バー - ケン・ウォートン
- フェイ・コンプトン(ミセス・ピンカートン役
- ピーター・レイノルズ(オーブリー役
- デビッド・ファーラー
製作と公開
劇場用映画は3つのエピソードすべてでイタリア語に吹き替えられたが、パリのエピソードはフランス語で、ロンドンのエピソードは英語で話されている。Medusa Filmによるイタリア語DVDは、復元されたノーカットのトリリンガルバージョンを提供しています。
イタリアのエピソードは検閲の理由で変更されましたが、後に1962年のアンソロジー映画『Il fiore e la violenza』に収録されました。この映画は、1954年に英国映画検閲委員会によって証明書を拒否され、英国で公開されることはありませんでした。[1]フランスのエピソードはフランスの検閲に問題があり、1963年まで公開されませんでした。
英語のエピソードは、19歳のハーバート・レナード・ミルズによる48歳のメイベル・タターショー夫人の殺害に大まかに基づいています。1951年8月3日、ミルズは「完璧な殺人」を犯したかったので、タターショーをシャーウッド・ヴェイルに誘い込み、そこで彼女の頭を殴り、絞殺した。その後、彼は家に帰り、遺体が発見されるのを待ちました。8月9日までにこれが実現しなかったとき、彼はニューズ・オブ・ザ・ワールドに電話をかけ、絞殺された女性の死体を発見したことを伝え、その話の対価を要求した。ミルズはすぐに関与し、その罪で裁判にかけられ、有罪となった。彼は1951年12月11日に処刑された。ノッティンガム・イブニング・ポスト紙によるミルズの逮捕の報道は、映画のナレーション付きイントロダクションでスクリーンに映し出され、ジョン・ストラッフェンを含むヨーロッパ中の若者による犯罪を報告する人々もいる。
レセプション
I vintiは、アントニオーニの最高の努力とランク付けされることはめったにありませんが、肯定的な評価で迎えられています。レビューアグリゲーターのRotten Tomatoesは、7人の批評家のうち86%の支持率を報告しています。(注2)
脚注
- ^ BBFCデータベース - I Vinti
- ^ 「I Vinti (1953) on RT」。腐ったトマト。2019年8月13日閲覧。★