『ミラノの奇蹟 Miracolo a Milano』1951年
ネオリアリズムの寓話化。
人間社会の縮図&限界&願望にも見えた。
キャベツ畑に捨てられていた裸の赤ちゃんトトを、老婦人ロロッタが拾って育てる。
トトと臨終のロロッタ
(ロロッタの棺を追うトト(右)と、警察に追われて、遺族のふりをする男(左))
ロロッタが死去すると、トトは孤児院に入れられ、青年になるとそこを出る。
さてそこから、どうやって生きていくのか、が描かれる。
孤児院から出たその日。
トトにとって外の世界は物珍しい。
あっちを見て、こっちを見て、としているうちに、劇場の前に来た。
そこで出入りのセレブを見ていると、感激し、トトは思わず拍手。
拍手の際に地面に置いた鞄を、そっと盗んだ男がいた。
彼を追って「それは僕の鞄だ」と言うと、男はあっさり鞄を手放す。
トトは鞄を拾うが、その男が余りにも可哀そうなオーラを出しているため、咎めるということはせず、「この中、実は何にも入ってないんだ」と言う。「でも、いい鞄だ」と男。するとトトは、その鞄を開き、中に入っていたママ(老婦人)の遺影と少しの布ものを取り出し、鞄をその男にあげる。
その縁で、家のないトトは男についていく。
男はホームレスで、ホームレスの溜まり場で寝起きしている。
ホームレスたちは、寒い中、太陽の陽を求めて一か所に集まり、おしくらまんじゅう。
トトはここで寝起きしているうちに、ここの人たちと近所の住人が捨てた廃材を集めて家を建設、共同体をつくることになる。
(トトはここの住人の誰にでも心を寄り添わせる、まるでニコニコ公務員(右))
すると後から後から、新たにやって来て住む人が来た。その中には、トトと恋人同士になる少女もいる。
(恋人同士になった少女とトト)
しかしここは私有地。
ちょうど、これまでの所有者が土地を売ろうとしていた。しかしやって来た大会社社長は値段が高いことを理由に買うことをやめた。
そんなある日、祭りを開催するため旗付きの棒を地面に立てようと突いていると、水と石油が噴き出た。
水が出たことで、もう汲みにいかなくていいとなり、住民たちは大盛り上がり。
しかし、共同体の中で1人孤立してトラブルを起こしていた男が、この土地を買おうとしていた大会社社長に告げ口に行き、金と引き換えにこの土地に水と石油が出るという情報を売った。
帰ってきた男は、毛皮に山高帽をかぶっている。
大会社社長がこの土地を買った。
社長は水と石油で商売しようと、住民に退去命令を出す。(左がトト。右が社長の部下)
しかし住人は立ち退かない。
社長は兵士を雇い、手榴弾を投げ、共同体は煙に包まれ、退去する者が続出。
トトと恋人女性
そのピンチに気づいた天国のロロッタから、トトに白い鳩が授けられる。
それは願ったもの何でも出してくれる魔法の鳩。
その力でトトは、住人の願いを次々叶えてあげる。
(鬱気味で自殺願望のあった芸術家肌の男(右)は、トト(の鳩)に白い美女の像を生身の女性↓にしてもらうと、生気が漲る)
しかしその鳩(一見平和の象徴のようでありながら、人間の果てしない欲望を引き出す悪の装置とも言える)を隙あらば取り戻そうとする、天の使いもいる。
その使いから逃げ、トトは恋人と住人と大教会の前まで来て、掃除中の清掃員たちの箒を奪い、ラストは住人全員で箒にまたがり天国へ移住していったのでした、でジエンド。
捨て子、孤児、ホームレスにとっての安住の地を巡る闘争に見えながら、実は人間存在そのものの、物理的生活環境の話でもあると思った。
人類にとっての理想の社会とは、というシミュレーションにも見える。
何もないところでどこにも所属していない人達が共同体を作ったらどうなるのか、の話。
しかし結果、あれがほしいもっと欲しいあの人より欲しいになり、競争社会になり、資本をためこみ、その金で他人を使い……、結局資本主義の競争社会になる、というようなオチ、からの、逃走(天国への移住)。
理想の地となると、それは天国しかないだろうとも思う。
現実という言葉は理想という言葉の逆概念とも言えるのだから。
ラストシーンは、『E.T.』のラストに影響を与えたのらしい。『魔女の宅急便』も想起。魔法の箒の浮遊感、解放感というのは、人類の偉大な脳内発明だと思った。
★Wikipediaより★
『ミラノの奇蹟』(ミラノのきせき、イタリア語: Miracolo a Milano)は、1951年にイタリアで公開された映画。
監督はヴィットリオ・デ・シーカ。
脚本のチェーザレ・ザヴァッティーニが執筆した小説を基にした
第4回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞[1]。また、本作のラストは後にスティーブン・スピルバーグ監督作『E.T.』にも影響を与えた[2][3]。
あらすじ
捨て子だったトトは、老婦人のロロッタに拾われ可愛がられる。だが、ロロッタの死により養護施設に入る。
月日が経ち、立派な青年となったトトは、自分の鞄を盗んだ男に同情して鞄を渡し、代わりに一晩泊めてもらうことになる。その男が住むのはどこかの私有地の一角のみすぼらしい工作物。しかし、大風で一帯の同じような「家」が壊れたことから、仲間と共同で大規模な整備を行い、同様に貧しい人々に住まわせる。
ある日、地主が新しい買い手とともにやって来る。いったんは地主たちを追い払った住民たち。その後その土地で石油が湧き上がると、とあるいさかいで仲間外れがちになっていた男がこっそり地主にそのことを告げにいく。主人公は、老婦人の亡霊に貰った魔法の羽でどんな願いでも叶える力を得ており、地主たちの明け渡しに対抗する。
キャスト
- トト: フランチェスコ・ゴリザーノ(イタリア語版)
- ロロッタ: エンマ・グラマティカ(イタリア語版)
- ラッピ: パオロ・ストッパ(イタリア語版)
- モッビ: グリエルモ・バルナーボ(イタリア語版)
- エドウィジェ: ブルネラ・ボーヴォ(イタリア語版)
※日本語吹替 - テレビ版・初回放送1963年5月30日『テレビ名画座』
- 吹替は上記の他、1991年4月27日に『ウィークエンドシアター』で放送されたテレビ朝日版も存在する[4]。
スタッフ
- 監督・製作:ヴィットリオ・デ・シーカ
- 原作:チェーザレ・ザヴァッティーニ『Totò il Buono(善人トト)』
- 脚本: チェーザレ・ザヴァッティーニ、ヴィットリオ・デ・シーカ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、マリオ・キアーリ(イタリア語版)、アドルフォ・フランチ(イタリア語版)
- 撮影: G・R・アルド(イタリア語版)
- 編集: エラルド・ダ・ローマ(イタリア語版)
- 美術: グイド・フィオリーニ(イタリア語版)
- 衣装: マリオ・キアーリ
- 特殊効果: ネッド・マン
- 音楽: アレッサンドロ・チコニーニ
受賞
- 第4回カンヌ国際映画祭(1951年)パルム・ドール[1]
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー(1951年)外国語映画賞★