『マロンブラ Malombra』1942年
19世紀のコモ湖畔の城を舞台にしたゴシック(超現実)メロドラマ。
主人公のマリーナ
シッラとマリーナという男女の体を、前世でその仲を引き裂かれたレナートとチェチリアが乗っ取り、一緒になろうとし、チェチリアは自分の首を絞めた夫の生まれ変わりを復讐として殺し、シッラの体を乗っ取り切れずに現世での意識で他の女性を愛そうとするレナートの霊がまだらなシッラの体を一発で銃殺。完全にマリーナの体を乗っ取っているチェチリアは殺人犯として追われたため、船で、前世で死んだ場所へ行き、死ぬんだろうというところでジエンド。
シッラの恋人は司祭と一緒にシッラの墓を見て、司祭の「これで安らかに眠れる」との言葉に頷くのだった。
マリーナは、孤児になったためコモ湖畔のおじの屋敷(マロンブラ)へ引き取られる。
おじはマリーナに、結婚するまでこの家から出てはいけないと言う。
マリーナはずっと使っていなかったほこりだらけの3階の部屋がいいと言い、そこに住むことになるが、マリーナはその部屋のピアノの中から、チェチリアが書き残した、自分の生まれ変わりの誰かへの手紙を読み、それで完全に、チェチリアを内蔵する。
ここが、納得できるように描かれていて、絵空事にならない流れになる。
マリーナの体を乗っ取ったチェチリアは、『過去から来た亡霊』という本の著者であるシッラへ、「過去から来た亡霊が自分だという感覚は正しいと思いますか」という手紙を、差出人チェチリアで書き、もしも返事をくださるならばミラノ郵便局留めで出してください、友人が取りにいきます、と書き、シッラは「それは現実的な感覚ではない」と書き、ミラノ郵便局留めでチェチリア宛に出す。
シッラが書いた『過去から来た亡霊』を読む、チェチリアinマリーナ。
そして、いわゆるひょんなことから、運命の波に抗えず、シッラはチェチリアの入ったマリーナのいるマロンブラ邸にやってくることになり、思いを遂げたいチェチリアと、完全にレナートの入っていないシッラに齟齬が生じ、ラストはチェチリアが暴走して前世での夫とレナートの入っている肉体を殺し、自分も死ぬ、という自暴自棄自棄ラストなお話。
チェチリアとレナートのことは、この一家では伝説のようになっていて、シッラがこの屋敷の壁を見ると、そこには自分の母の肖像画があるという、因縁の関係。
マリーナの遺産目当てで、息子を連れてその母親が船で乗り込んできてマリーナと結婚させようとするのだが、マリーナのおじが死去して金庫から遺言書を出し読むと、マリーナの遺産相続は微々たるものとわかり、母と息子はこの屋敷から撤退する。
自棄を起こしたチェチリアinマリーナを宥めようとしている関係者2人
完全にマリーナの体を乗っ取り主導権を握っているチェチリア(の霊)
シッラと相思相愛の女性とシッラ↓。しかしレナートの霊がシッラの体を乗っ取り、この女性ではなく、チェチリアの入ったマリーナと一緒になろうとする。この女性はその運命の力に気づき、自分が相手ではないと身を引くのだが、しかし司祭の本当の気持ちを伝え、自分の運命のために動こうとした矢先、シッラがマリーナに一発心臓貫通で射殺されてしまう。この辺り、決して狙いを外さないチェチリアの霊の執念が怖い。チェチリアにとって、「今度こそ失敗はできない」のだ。
チェチリアの霊の入ったマリーナ役が適役で、魂の任務を今度こそ絶対遂行してやるという野心で目の中の炎が燃え続けていた。
ゴシック小説というのが、正にこういう感じなのだろうなと思った。
プロテスタント派が否定した、カトリック派の超現実、つまり霊の話。
それを物語とする場合、舞台設定として、湖畔の古い屋敷、伯爵家の遺産相続、肖像画、結婚話、夫により引き裂かれた夫人と恋人の仲、使われていなかった屋敷の埃だらけの部屋、などが好都合なのでは、と思った。
こんな所に屋敷が?というロケーションも最高だった。壁が湖に接していて、階段を下りるとそこがドックで、そこから船で行ける。しかしこの屋敷の表は、街に繋がっているのだ。
両親を失い孤児になり、伯爵であるおじの所へ女中(左)と行こうというときの、マリーナ。ここではまだチェチリアは入っていない。チェチリアの霊は、「3階の部屋のピアノの中に隠しておいた手紙が読まれる」ことで、マリーナの体に入った。
今では霊が何かに取りつくということは面白おかしく語られることもあるが、この当時はとにかく深刻でおどろおどろしいものでしかなかったのかなと思った。
ど根性ガエルこと、「ひろしのシャツの前面に入っているピョン吉」のことをわたしはずっと「死んだカエルの霊」だと思い込んでいたが、ひろしが転んだ際に押しつぶされてくっ付いてしまったまま固定されただけ(笑)なのらしい。
★平面ガエル
★マロンブラは、マリオ・ソルダーティ監督、
の1942年のイタリアのドラマ映画です。原作はアントニオ・フォガッツァーロの
小説『マロンブラ』であり[1]、1917年に同名の無声映画化されている。チネチッタで作られ、ジーノ・ブロジオがデザインしたセットが使われました。製作はリカルド・グアリーノのラックス・フィルム。カリグラフィズモスタイルの映画に属します。
この映画は、19世紀のコモ湖畔の城を舞台にしたゴシックメロドラマです。
キャスト
- イサ・ミランダ:マリーナ・ディ・マロンブラ
- アンドレア・チェッキ(コラード・シッラ役
- イラセマ・ディリアン:エディス・スタイネッゲ
- グアルティエロ・トゥミアティ(イル・コンテ・チェーザレ・ドルメンゴ役)
- ニーノ・クリスマン:ネポ・サルバドール
- エンツォ・ビリオッティ(Il commendator Napoleone Vezza)
- エイダ・ドンディーニ:フォスカ・サルバドール
- ジャチント・モルテーニ - アンドレア・スタイネッゲ
- コラード・ラッカ(トシ神父役
- ルイジ・パヴェーゼ(イル・プロフェッサー・ビンダ役
- ナンド・タンベラーニ:ドン・イノチェンツォ
- ドレッタ・セスタン(ファニー役
- パオロ・ボネッキ(イル・ドットル・ピトゥール役
- エルヴィーラ・ボネッキ(ジョヴァンナ役、ラ・ガヴァナンテ)
- ジョヴァンニ・ベッレッレ(L'ispettore della cartiera)
- ジャコモ・モスキーニ(ジョルジョ・ミロヴィッチ役、イル・ノタイオ)
- アンナ・フアラ(La governante di Fosca)
場所
この映画は、ヴィラプリニアーナ、トルノ(コモ)で撮影されました。(Dizionario del Turismo Cinematograficoによる情報))★