夏至June
心が整う。音楽は、雑念除去・集中のための宗教
ほんとにそう聞こえる
そう言っているようにしか見えない（笑）
6月25日付の朝日新聞文化面、白石かずこさんの追悼特集が興味深かった。
見出しは「両性具有の風 言葉は永遠に」
以下引用。
「白石かずこさんを悼む
寄稿 小池昌代（詩人）
知性深く沈め 前へ押し出す朗読
白石かずこさんが亡くなられた。現代の詩の大河が、干上がったような寂しさだ。だが残された作品群がある。それを思えば哀しくはない。分厚い三冊本を繰ると、ああ、詩は、なんて自由なんだと、心が砂のようなものでざらざらと洗われる。この詩人には『砂族』という詩集があった。砂だ、砂の言葉だ。粘着力のある日本語とはわずかに切れている。
白石かずこはまた、詩を声の乗せ、世界中で朗読をした。あの声とその人を思うとき、哀しくはないと書いたそばから哀しみがわいてくる。わたしが最後、その声を聞いたのは二〇〇〇年に入ってからのこと。
（中略）
舞台に立つと、古代エジプトの豊穣の女神、イシスみたいに威厳があった。いや、額田王かな。
（中略）
流砂の上に 点
のように 沁みいる影があり
それは バス停なのである
どこから どこへ という標識は ない
ここでは 目的とか それから とか なぜ とか
すべての 問い に 答えるもの もいなければ
意味というものも
磨滅して 古い 辞書の中 もはや
ザラザラ と 石の舌だして 笑うだけ
詩はまだ続く。成熟した詩人の野太い声は、知性を深く沈め、大車輪のごとく、言葉を前へ、押し出していく。充分な大人になっても、どこかはぐれた不良少女あるいは異国から来た旅人のような顔をして、どこにいても風景からくり抜かれ、際立つ人だった。わたしの知る限り、優しく率直で、意外なことに、揺れる弱い心を奧の方に秘めていた。
モダニズムの影響下にあったデビュー詩集『卵のふる街』（一九五一年）以後、第三詩集のあたりから、一人称の「おれ」が本格的に登場、いよいよかずこ詩に、両性具有の、広大無辺な風が吹き渡るようになる。同時にその頃、マスメディアによってスキャンダラスなレッテルを貼られ、受難と闘いの時代を通過したこと、今を生きるわたしたちは忘れない。「男根」という詩を収める『今晩は荒模様』は、今読んでも、切り立つ素晴らしい詩集である。
その後も、白石かずこは前線で書き続け、晩年に至るまで、その言葉にはサビがつかなかった。野放図に見えながら、作品内に太い生命力が流れていて、何をどんなふうに書いても、全体が不思議な、哲学的調和に統合される。若い人々に、かずこ詩を読ませると、『かっけー』と言う。その詩はいま、"永遠" につながった。」
「飛鳥の春の額田王」安田靫彦
安田靫彦 - Wikipedia（やすだ ゆきひこ）
- 「卑弥呼」（1968）（滋賀県立近代美術館）
- 「草薙の剣」（1973）（川崎市市民ミュージアム）
ファッションを見るに、白石かずこさんと山口小夜子さんは同じ時代の空気を吸っていらしたのかなと思った。
同じく文化面の「村上春樹作品原作 アニメ映画上映会」の記事も面白かった。
見出しは「小説に何か加え 新しいものに」
以下引用。
「村上春樹作品を原作にした初めてのアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』の特別上映会が15日、東京都新宿区で開かれ、ピエール・フォルデス監督と村上さんらがトークを繰り広げた。
（中略）
映画は『かえるくん、東京を救う』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』など６短編を再構築して作られた。フォルデス監督は『村上作品の神秘的で魔術的な世界を、どうにかして捉えたかった。１編だけでは厳しいのだ、複数を少しずつ取り入れるうち、植物の根がからみあうようにつながっていった』と話した。
近年、『バーニング』『ドライブ・マイ・カー』など、原作映画の公開が相次ぐ村上さんは『短編の映画化は嫌じゃないんです』と語った。『監督自身が足していく部分が多いから意欲的なものができる。長編は引く作業になるから。せっかくなら、ぼくの小説をそのまま映像化するのではなく、何かを付け加えて新しいものにしてほしい』」
村上春樹作品のアニメ翻訳
二作品とも、トーンとテンポが同じ。三角関係の危うさの美しさ。
ニアミスしながら間違えながら、獲得してゆく正しい名前
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