『にがい米 Riso amaro』1949年
素晴しくて、泣いた。
尊い労働と米と女たちの連帯の話。
信頼、騙し騙され、男と女、労働者同士の一体感。
40日間の田植えを終え、解散となる前日、忍び込んだ盗人男と男女関係になったシルヴァ―ナは、男に言われて、「倉庫の米を全部トラックで盗む」計画に加担、米をトラックに運び込むのを見つからないように労働者たちの気を引くため、女たちが苦労して田植えを終えたその水田の仕切りを外し、川の水を入れ、水稲が全滅した。
シルヴァ―ナはしかし、男の情婦と撃ち合いになり自分が男を射殺することになり、罪悪感から、解散パーティーのために組まれた櫓のてっぺんに登り、そこから投身自殺。
夜が明け解散するとなった女たち。中の一人が、筵(むしろ)のかぶせられたシルヴァーナの遺体に、給料代わりである米の袋から米をつかみ、パラパラとかける。他の女たちもそれに倣い、即席でシルヴァーナの葬式が行われる。
シルヴァーナの遺体
ナレーションが「解散した女たちは、他の労働現場で働く。そしてここには来年の5月に、また女たちがやってくる。同じメンバーもいるかもしれないし、もう二度と来ない女性もいるかもしれない」でジエンド。
男の目を引くシルヴァーナの豊満な体。常に踊り、脇毛を剃っていないところも、シルヴァーナの自由奔放さの表現となっている。
↑左が、警察の追っ手から情婦フランチェスカと逃げ、この水田地帯に労働に来る女たちに紛れて列車に乗った盗人ウォルター。彼はフランチェスカを捨て、まだ子供気分の残るシルヴァーナを手籠めにして自分の女にした。「お前の望む物をなんでもやる。一緒にこんなところを出よう」と言うウォルターに従い「女の幸せ」に浸るシルヴァーナ。しかし棄てられたフランチェスカも同じことを言われ、破滅したのだった。
フランチェスカはシルヴァーナに「あんたがもらったその盗品の宝石も偽物。その男とおんなじ偽物だよ」と撃ち合いになり、結局、シルヴァーナがウォルターを撃ち殺すことになる。
シルヴァーナは殺人と、女たちの40日間の命を懸けた水稲を駄目にしたことに罪悪感と身の破滅を感じ、泣きながら夢遊病のように櫓(やぐら)に登っていき、死去する。
シルヴァーナ↓は隣りのキャンプの軍曹↓も虜にしたが、軍曹はシルヴァーナの、盗人男と同質の性質を感じ、フランチェスカと行動を共にし、水田に流入してしまった水をなんとかしようと動くことになる。
左がシルヴァーナ。右がフランチェスカ。2人は目覚める前の女性と覚醒して人間になれた女性とも言える。
シルヴァーナ
真ん中がフランチェスカ。周りが40日間の田植えにやって来た女性労働者たち。
セクシャルな女性+水田という組み合わせは面白い。豊満な乳房というのは、乳を咥えて育つ哺乳類である人間に安心感をもたらすのかもしれない。米倉庫の中はまるで白い米の砂漠のようで、そこに寝そべると気持ち良さそうと思い、そう思うのが不謹慎とも思った。
男に言われ、水田の仕切りを外し、川の水を流入させて水稲を水浸しの全滅にしたシルヴァーナ
女性たちの働く過酷な労働現場である長野県の製糸工場を描いた『あゝ野麦峠』を想起。あゝ野麦峠 - Wikipedia
1956年のリメイク版はこちら
★Wikipediaより★
『にがい米』(イタリア語: Riso amaro) は、1949年製作・公開、ジュゼッペ・デ・サンティス監督によるイタリア映画である。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
---|---|---|---|
NHK総合版 | 東京12ch版 | ||
ウォルター | ヴィットリオ・ガスマン | 納谷悟朗 | 青野武 |
フランチェスカ | ドリス・ダウリング | 富田恵子 | |
シルヴァーナ | シルヴァーナ・マンガーノ | 楠侑子 | 弥永和子 |
マルコ |
ラフ・ヴァローネ | 田中信夫 |
- NHK総合版:初回放送1969年9月7日 15:55-17:30『劇映画』
- 東京12ch版:初回放送1977年6月17日『想い出の名作洋画劇場』
- 制作:ザック・プロモーション
ストーリー
警察の手から逃れようと、2人のケチな泥棒、フランチェスカとウォルターは、ポー渓谷のピエモンテの上流にあるヴェルチェリ県の水田地帯に向かう女性労働者の群れの中に紛れ込む。水田地帯へ向かう列車に乗ろうとした2人は、稲作労働者のシルヴァーナに出会う。フランチェスカはシルヴァーナと一緒に列車に乗り、シルヴァーナは彼女に農業労働者の生活について説明する。フランチェスカは労働許可証を持っていないため、他の「不法労働者」たちと同様、働ける水田を見つけるのに苦労する。許可証を持っている労働者や監督者からは嫌がられるが、結局、不法労働者も働くことを許される。シルヴァーナとフランチェスカは作業中に、除隊間近の兵士マルコに出会う。マルコはシルヴァーナの興味を引こうとするが上手くいかない。
労働シーズンが終わりに近づいた頃、ウォルターが米農場に到着し、大量の米を盗む計画に参画する。彼の犯罪者的な生き方に刺激されたシルヴァーナはウォルターに惹かれるようになる。彼女はウォルターの犯行を助けするために、水田の畔を切り崩して皆の関心をそちらに向けさせるが、フランチェスカとマルコは何とかウォルターとその共犯者による犯罪を阻止しようとする。フランチェスカとシルヴァーナは拳銃を持って対峙する。フランチェスカはシルヴァーナに、自分はウォルターに操られていたのだと説明する。それを聞いたシルヴァーナはウォルターに銃を向け、彼を殺す。その直後、彼女は罪悪感から自殺する。労働シーズンが終わり、労働者たちが去る時、シルヴァーナの遺体に米を振りかけて彼女の死を悼む。
エピソード
- 1956年、『水田地帯』(La Risaia) の題名でリメイクされた。★
★ビターライス(イタリア語:Riso amaro [ˈriːso aˈmaːro、ˈriːzo -])は、1949年のイタリアのネオレアリズモ犯罪ドラマ映画で、ジュゼッペ・デ・サンティスが監督・共同執筆し、ディノ・デ・ラウレンティスがプロデュースし、ヴィットリオ・ガスマン、ドリス・ダウリング、シルヴァーナ・マンガーノ、ラフ・ヴァローネが主演しています.物語は、北イタリアの田んぼに隠れている2人の逃亡者を描いています。この映画のイタリア語のタイトルは、ダジャレに基づいています。イタリア語の「riso」は「米」または「笑い」を意味するため、riso amaroは「苦い笑い」または「苦い米」を意味すると解釈できます。
Lux Filmがリリースした『Bitter Rice』は、ヨーロッパとアメリカで商業的に成功を収めました。1949年のカンヌ国際映画祭でパルムドールにノミネートされ、1950年のアカデミー賞で最優秀作品賞にノミネートされました。
2008年、この映画はイタリア文化遺産省の「1942年から1978年の間に国の集合的記憶を変えた」100本の映画のリストである「保存すべきイタリア映画100本」に選ばれた。(注1)
プロット
法を逃れるため、フランチェスカとウォルターという2人の小泥棒は、ポー渓谷のピエモンテ州上流にあるヴェルチェッリ県の水田に向かう女性労働者の群れの中に隠れます。田畑へ向かう列車に乗ろうとした二人は、農民の米職人シルヴァーナと出会う。フランチェスカはシルヴァーナと一緒に列車に乗り込み、シルヴァーナは彼女に農園主の生活様式を紹介する。フランチェスカは労働許可証を持っておらず、他の「不法滞在者」と田んぼで場所を探すのに苦労しています。文書化された労働者や上司からの最初の抵抗の後、不法滞在者は畑に居場所を与えることが許されます。畑で働いていたシルヴァーナとフランチェスカは、まもなく除隊する兵士のマルコと出会うが、マルコはシルヴァーナの興味を引こうとするが失敗に終わる。
仕事シーズンの終わり頃、ウォルターは米農場に到着し、大量の米を盗む陰謀に巻き込まれます。彼の犯罪者としてのライフスタイルに興奮したシルヴァーナは、ウォルターに惹かれていく。彼女は彼が強盗を実行するのを助けるために陽動を引き起こしますが、フランチェスカとマルコはウォルターと彼の共犯者を止めることに成功します。フランチェスカとシルヴァーナは拳銃で武装し、対峙する。フランチェスカはシルヴァーナと対峙し、ウォルターに無情に操られたと説明する。これに対し、シルヴァーナはウォルターに銃を向けて殺害する。その後すぐに、彼女の罪悪感は彼女を自殺に導きます。他の米職人が去るとき、彼らは彼女の体に米を振りかけて彼女に敬意を表します。
キャスト
- ヴィットリオ・ガスマン - ウォルター・グラナタ
- ドリス・ダウリング(フランチェスカ役
- シルヴァーナ・マンガーノ(シルヴァーナ役
- ラフ・ヴァローネ(マルコ役
- チェッコ・リッソーネ(アリスティド役
- ニコ・ペペ(ベッペ役
- アドリアーナ・シヴィエーリ(セレステ役
- リア・コレリ(アメリア役
- マリア・グラツィア・フランシア(ガブリエラ役
- デディ・リストリ(アンナ役
- アンナ・マエストリ(アイリーン役
- マリエンマ・バルディ(ジャンナ役
- マリア・カプッツォ(ジュリア役
- イザベラ・ゼンナーロ(ローザ役
- カルロ・マッツァレッラ(ジャネット役
テーマ
この映画では、シルヴァーナというキャラクターは、チューインガムやブギウギダンスなど、アメリカ映画をモデルにした行動の魅力を表しています。彼女の失脚は、映画監督のジュゼッペ・デ・サンティスが、アメリカ資本主義のこれらの産物を非難したことを物語っている。[2]さらに、シルヴァーナは多くの聴衆によって過度に性的であると見なされていました。この性描写と、死と自殺のメロドラマ的な存在感が、典型的なイタリアのネオレアリズモから逸脱させている。(注3)
生産
『ビター・ライス』は、女優シルヴァーナ・マンガーノが初めてクレジットされた役である。それ以前は、クレジットされていない役にほんの一握りしか出演していなかった。監督のジュゼッペ・デ・サンティスは、この役に「イタリア人のリタ・ヘイワース」を求めており、
彼の最初の選択肢はルチア・ボゼでした。
また、当時『L'Unità』のライターだったラフ・ヴァローネのデビュー作でもありました。マンガーノの声はリディア・シモネスキが吹き替えたが、彼女は今でも自分の歌声を使用している。
この映画はヴェルチェレーゼの田舎でロケが行われました。主な場所は、サラスコのカッシーナ・セルヴェとリニャーナのテヌータ・ヴェネリアです。映画のセットは、アートディレクターのカルロ・エジディによってデザインされました。
マリオ・モニチェッリは、クレジットされていないスクリプトドクターとしてこの映画に取り組んだ。(注4)
リリース
![](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/da/El_Paseo_Theatre_ad_-_9_February_1951%2C_Palm_Springs%2C_CA.jpg/200px-El_Paseo_Theatre_ad_-_9_February_1951%2C_Palm_Springs%2C_CA.jpg)
この映画は1949年のカンヌ国際映画祭でプレミア上映され、パルムドールの最終選考に残りました。[5] 1949年9月30日にイタリアで劇場公開されました。
受賞歴
この映画は、1950年のアカデミー賞で最優秀作品賞にノミネートされました。
この映画は、「1942年から1978年の間に国の集合的な記憶を変えた」映画集である100本のイタリア映画の1つにも選ばれました。[6]コレクションは、ヴェネツィア映画祭がチネチッタと共同で設立し、ファビオ・フェルゼッティがキュレーションし、ジャンニ・アメリオや他のイタリアの映画評論家からの意見を取り入れました。選ばれた作品の多くは、ネオレアリズモ運動に現れたイタリア映画の「黄金時代」を象徴しています。(注7)★