『揺れる大地 La terra trema: episodio del mare』1948年
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釈放されたあと、ウントーニは独立しようと家を抵当に入れて借金をする。
仲買人は「お前はいい漁師だ」とウントーニを漁師の仕事に再び誘うが、隷属が嫌なウントーニは無職を通し、ウントーニが大黒柱である一家は家の物を売ったりしてなんとか食いつなぐ。
「こんな生活、嫌だ」となった弟は、煙草をくれた密輸商人のアメリカ人の舟で、家族に内緒でこの島を出る。
食い詰めた一家の所に、また仲買人がやって来て、「塩漬けの鰯を買ってやる」と言う。
「冬に高値で売りたい」と言うと、「お前の一家はこのままでは飢え死にするだろう?」。
根負けしたウントーニは、仲買人の言い値で売ることに。
鰯の塩漬けは仲買人に安値で買い叩かれ、家は銀行に差し押さえられ、恋人には捨てられ、弟は密輸商人になり、祖父は入院し、一家はあばら家に住むことになる。ウントーニは不良たちと付き合い酒に溺れるようになった。
仲買人の新しい船の進水式の日に、かつて自分のものだった修理中の舟を見に行ったウントーニは、そこで出会った少女から「あなた嫌われ者でしょう?でも応援してあげる」と励まされ、帰宅するとあまりに哀れな弟たちが急に不憫になり、その弟2人とともに、「お前たちの所で働くくらいなら死ぬ」とまで言い放ったその仲買人の舟に乗せてもらうように、頼みに行くのだ。
仲買人からさんざん馬鹿にされるこのシーンで、(ウントーニ、今怒ると一家全員飢え死にするから今だけ我慢して。独立はまたいつかすればいいから)と心でウントーニに言ってしまった。
ラストは、ウントーニが仲買人の舟の漕ぎ手として、ただ一心に労働している姿、で終わる。
「閉じられた共同体」の話でもある。「閉じられた共同体」とはつまり、長年に渡ってシステム化された便利な場所とも言える。「ここ」でずっと生きていくのが幸福であるならば、半目にして見、耳を片方塞ぎ、「気づかないようにする」のがライフハック、生き方上手なのかもしれない。しかし気付いて比較が生じてどうしても我慢ならないとなったら、根気よく周囲に同意を求めて一緒に変え続ける努力をするか、虐げられている側の人たちを説得して上にのさばる現勢力を転覆する革命を起こすか、「ここ」を一人で出るしかない。
その選択が悩み所なのだろう。他人を巻き込んでやってしまって失敗したら味方全員村八分に遭う。その可能性がゼロではないなかで、やるんですか、やらないんですか、という話である。
ストライキや労働争議の話でもある。
よく聞く「仕事を干される」話でもある。
生活の安定はもちろん大事だが、それで心が死んだら生きていて何なの、というパンと薔薇の話(≒金と夢の話)は、古今東西消えない問題なのだろう。
つまりその間で悩むということが、人の営みということなのかもしれないと思った。
![La Terra Trema (1948)](https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BN2E2NjMwZjMtZGJhZi00YTllLWFlZWItNGY0ODNjYTZmM2QyXkEyXkFqcGdeQXVyODY2Njk4ODk@._V1_.jpg)
ウントーニの下の妹(左の女性)は、言い寄る警察官との密会の噂が立ち、それは一家の恥。しかし彼女は、国からの給料で生活が安定している警察官から絹のスカーフやキラキラのネックレスをプレゼントされる快楽に、抗うことができないのだ。
右が彼女の姉。
この姉(ウントーニの妹)は、本土からやって来た瓦職人と気持ちが通じ合っている。姉の一家が借金して一瞬金持ちになったときは、この男性は自分とは身分違いの「高嶺の花」だと姉を敬遠した。しかし一家が困窮すると、姉の方から男性を訪ね、「今なら私と結婚してくれる?」と訊くのだ。しかし一回諦めているこの男性には、もう姉を激しく求める情熱の炎はない。男性は、今の仕事が終わったら別の島に行くことを告げ、2人の間にはお終いのムードが漂う。
【「海の挿話」という副題がついているのは、本作が当初はイタリア共産党の製作によるシチリアの労働者についてのドキュメンタリー3部作の第一弾となる予定だったから】ということに納得。
奴隷に漕がせるガレー船を想起したし、蟹工船も想起。
ガレー船
(実際の蟹工船。「北洋の監獄部屋[1]」、「監獄船[2]」、「地獄船[3]」、「海のタコ部屋[3]」などと呼ばれていた。)
「ここが故郷で、ここで生まれ、死んでいくんだ」ということに、魯迅の『故郷』を想起。
★Wikipediaより★
『揺れる大地』(イタリア語: La terra trema: episodio del mare, 「揺れる大地 海の挿話」の意)は、1948年公開のイタリア映画である。監督はルキノ・ヴィスコンティ。モノクロ、スタンダード、160分。
シチリア島の漁村を舞台に、漁民一家のたどる辛苦の日々をドキュメンタリータッチで描いた、ネオ・レアリズモの代表的作品。全篇がシチリアの漁村アーチ・トレッツァ(イタリア語版)で撮影され、出演者は全員シチリア島に住む素人で、台詞も全てシチリア方言が使われた(原作でもシチリア方言が使われている)。ヴェネツィア国際映画祭では国際賞を受賞した。また、1952年に英国映画協会が発表した「映画史上最高の作品ベストテン・映画批評家が選ぶベストテン」で第9位にランキングされた。
の小説『マラヴォリア家の人々(イタリア語版)』を元にしているが、ヴィスコンティは主人公のウントーニ以外のエピソードをカットし、他の登場人物の名前はヴェルガの別作品から拝借するなど、大きく手を加えている。
「海の挿話」という副題がついているのは、本作が当初はイタリア共産党の製作によるシチリアの労働者についてのドキュメンタリー3部作の第一弾となる予定だったからである。他の2作は製作されなかった。
なお、本作にはフランチェスコ・ロージとフランコ・ゼフィレッリが助監督として参加している。
ストーリー
シチリアの漁村アーチ・トレッツァで、ヴァラストロ一家は代々漁業を営んできた。漁に出たまま帰らない父に代わって一家を支える長男のウントーニは、仲買人に搾取される構造に疑問を抱き、自ら競りに出すことを思いつくが、仲買人と喧嘩を起こして逮捕されてしまう。
釈放されたあと、家を抵当に入れて借金をし、鰯の加工をはじめるが、嵐の日に漁に出て船と漁具を失ってしまう。鰯は安値で仲買人に買い叩かれ、家は銀行に差し押さえられ、恋人には捨てられ、弟は密輸商人になり、祖父は入院し、一家はあばら家に住むことになる。ウントーニは酒に溺れるようになった。
仲買人の新しい船の進水式の日に、かつて自分のものだった船を見に行ったウントーニはそこで出会った少女ローザに励まされて、弟たちとともに仲買人の船に乗せてもらうように頼みに行った。
キャスト
- ウントーニ:アントニオ・アルチディアコノ
- コーラ:ジュゼッペ・アルチディアコノ
- ヴァンニ:アントニオ・ミカーレ
- アルフィオ:サルヴァトーレ・ヴィカーリ
- 祖父:ジョヴァンニ・グレコ
- ドン・サルヴァトーレ:ロザリオ・ガルヴァーニョ
関連項目
- 本作が映画館で上映されているシーンがある。同作の舞台は、同作の監督ジュゼッペ・トルナトーレ
- の出身地で本作と同じくシチリア島。
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