『かりそめの幸福 LE BOONHEUR』1934年
非常に面白かった。
法廷で、原告と被告の恋炎上、という話。
フランスの国民的女優、クララ・スチュアート。
マネージャーとクララ。
アナーキストの挿絵画家フィリップ・ラッチャーは、自分に好意を寄せて待ち伏せをしていた美容師に、仕事でもらったクララのチケット二枚を見せ、クララの大ファンである彼女に誘われ一緒に劇場に行こうとなる。
貧乏で両親もいず、挿絵のギャラも安いフィリップは、最初何もかも恵まれたクララに敵対心しか持っていなかったが、クララの『幸福』という曲を聞き、本気で感動してしまう。
しかし、彼は劇場から出て来たクララを、わざと急所は外して、テロとして、自分の主義主張の宣伝として撃った。
クララは病院に運ばれ、国民は大騒ぎとなり、クララ原告、フィリップ被告の裁判が開かれることになる。
法廷でのクララ。最初はフィリップに見られることも見ることも嫌だったが、フィリップの本気の真っ直ぐな、身を捨てての大演説に心を奪われ、好きになってしまい、フィリップの無罪放免を求める。
法廷でのフィリップ。彼は「そんな同情は御免だ、何も持っていない俺だ。殺してくれ」。
フィリップは18か月の服役を終え、獄中に手紙をくれたクララと会う。
2人は忽ち相思相愛に。クララには、実質ヒモである公爵の夫がいたが、フィリップが服役中に離婚していた。
愛し合い、クララの豪邸で同居する2人。
しかし、クララはフィリップに内緒で、フィリップの事件そのものの映画(国民的女優を狙撃するアナーキストという内容)を撮っていた。マネージャーが承諾してしまった話で断れなかったためクララはフィリップに内緒に撮影を進めていたのだが、ある日フィリップがクララの撮影現場に行き、気付いて気持ちが急に冷める。フィリップが一人で家に帰ると、別れたはずの公爵が来ていて、フィリップに、「お前もクララの金が目当てなんだろう?俺も最初はそうだった。でも、夫婦愛に目覚めたんだ。彼女は気移りが激しい。どうせお前もすぐに捨てられるさ、俺のようにな」と言い、撮影を見てクララの誠実さに疑問が生じていたフィリップは、「俺はこの家を去るよ」と言う。少し前から2人の話を聞いていたクララ、「何でここにいるの?」と公爵を追い出し、「どうして?」とフィリップに抱きつく。すると「2人の住む世界は違う。俺は自分の生活をしないと」と言う。「いつかこうなるような気がしていたの」と泣き出すクララ。
「何か、私だと思って、この家から物を持っていって。何でもいいわ」とクララが言うと、「100フランくれないか」とフィリップ。「もっと貸せるわ」と言うクララに「返せないから」。「じゃあもっとあげる」「とりあえずの資金だけでいいんだ」。
「私のこと、忘れてしまうのね?」「忘れないよ。いつかどこかの田舎の映画館できみの映画を観る僕に向かって、その大きな目で見つめてくれ」。
シーン変わって、クララのアップ。次にフィリップのアップ。
2人は、田舎の映画館のスクリーンの中と客席にいるのだった、でジエンド。
階層の問題。持たざる者貧困層負け犬代表のフィリップと、持っている成功者のクララ。
両極だが、しかし2人のエネルギー(情熱)は釣り合い、その向き(ひたむきな姿勢)が同じ。だからこその恋愛。
『天国と地獄』にも構造が似ていると思ったし、エディット・ピアフっぽいとも思った。また、獄中結婚したという加藤登紀子さんも想起。
「貧しい絵描きが女優に恋をした」
★Wikipediaより★
『幸福』は、マルセル・エルビエ監督
による1934年のフランスのコメディドラマ映画です。アンリ・バーンスタイン
の戯曲『ル・ボヌール』を原作とし、バーンスタインは1933年3月にパリでシャルル・ボワイエと
ミシェル・シモンを
主役に起用した。ボワイエとサイモンは映画で同じ役を演じた。
背景
1934年、マルセル・ルビエはシャルル・ボワイエと俳優エドマンド・キーンを題材にした映画製作について話し合いたが、当時フランスとハリウッドを行き来していたボワイエは、パリで舞台に立ったばかりのバーンスタインの戯曲『ル・ボヌール』を撮りたいと主張した。この戯曲の権利はパテ・ナタン社が保有しており、パテ・ナタン社はボワイエとエルビエの主演女優として好んだギャビー・モーレイとも契約を結んでいた。(注2)
プロット
アナーキストのフィリップ・ラッチャーは、有名な舞台女優で映画女優のクララ・スチュアートに発砲するが、彼女を負傷させるだけだった。スターは、彼の動機を知りたいという感情と好奇心を通じて、彼の裁判で彼に有利に嘆願しますが、彼は彼女の同情を拒絶します。彼が刑務所で18ヶ月服役した後、彼らは出会い、恋に落ちます。しかし、フィリップはクララの誠実さを疑い、彼らの人生の出来事が彼女の最新作の一部になっているのを見て、彼は彼女を去ります。彼は、暗闇に座って映画館のスクリーンで彼女を見ている間、彼らの愛が続くことを誓います。
キャスト
- ギャビー・モーレイ:クララ・スチュアート
- シャルル・ボワイエ - フィリップ・ラッチャー
- ポーレット・デュボスト(ルイーズ役
- ミシェル・シモン - ノエル・マルピアズ
- ジャック・カテラン - ジョフロワ・ド・シャブレ
- ジャン・トゥールー(Maître Balbant役
- ジョルジュ・モーロワ(Assises社長)
- レオン・アルヴェル(Léon Arvel)が州検事総長に就任
生産
エルビエ自身がバーンスタインの戯曲を脚本に翻案し、ミシェル・デュランと共同で台詞を手がけ、原作にほぼ忠実でありながら、言葉の代わりに視覚的な表現手段を使う機会を生み出しました。しかし、彼はいくつかの重要な変更を導入しました。女優クララ・スチュアートの人生における映画の背景がより強調され、冒頭のシーンでアナーキストのフィリップが登場することで、彼は女優の観客としての役割を確立し、映画の最後のシーンでは新しい意味で関係が更新されます。映画は、ル・ボヌールと同じく、ハリー・ストラドリングをカメラマンとしてジョインヴィル・スタジオで撮影されたことが示されている映画の中の映画のシーンで、さらなる自己反射性の要素を与えられている。(注3)
撮影は1934年9月と10月にパリのジョアンヴィル・スタジオで行われた。[4] L'Herbierの助監督はÈve FrancisおよびJean Drévilleだった。
撮影の終盤、L'Herbierは不安定なトラックからカメラが落ちてきて事故に見舞われました。彼は手首を骨折し、片目に永久的な損傷を負いました。彼はパテ社に対して長期にわたる法的措置を取り、その中で監督は、同社に雇用されている単なる技術者ではなく、映画の「作者」としての地位を主張しました。彼は最終的に勝訴し、フランスの映画監督が自分の作品に著作者の権利を持つことが法的に認められたのは初めてのことでした。(注5)
レセプション
『ル・ボヌール』は公開と同時に大衆に人気を博し、フランスの批評家からも好評を博した。ヘンリー・バーンスタインもまた、自分の戯曲が映画化されることに賛成の意を表明した。[6] しかし、配給から3年後、この映画は40年近く視界からほとんど姿を消した。1970年代になってようやくこの作品が復活し、エルビエのサウンド映画の中で最も重要な作品の一つとして認識されるようになった。(注5)
1935年2月、この映画は第1回モスクワ映画祭で上映され(本コンペティションには遅すぎたが)、ソビエトの審査員から特別な「名誉の言及」を受けた。(注7)★