『ジャン・ルノワールのト二 Toni』1935年
フランス人マリーと、イタリア人ト二。
ト二は、南仏の採石場に職を求めてやって来た。そこで泊まったのが、マリーの家だった。
2人は恋人同士になるのだが、ト二は、隣りの家にやって来た、その家の主人の姪であるスペイン人のジョゼファに恋をした。それに気付いたマリー、「もう私に飽きたのね」と嘆くが、しかしどうしてもト二を諦めきれない。あの手この手でト二の関心を引こうとするが、ト二の気持ちは戻らない。
左から、マリー、ジョゼファ、ト二
ある日。ジョゼファと一緒にいたいト二は、ジョゼファの洗濯を手伝おうと仕事を遅刻することを決める。
ジョゼファ
一緒に歩いていると、ジョゼファは「喉が渇いた」と言い、おじの農園から葡萄をもいでくる。
するとその葡萄に蜂がついている。蜂はまもなくジョゼファの首の後ろからワンピースの中に入った。
「取って」と大騒ぎするジョゼファのワンピースを開き蜂を逃がすト二。刺さっていた蜂の針を指先で取ると、唇をあてて毒を吸って吐き捨てる。
そんな中、ト二の上司アルベルトがジョゼファに「手を付けた」。
アルベルトとジョゼファ
アルベルトはジョゼファを「所有」すべく結婚を急ぐ。
マリーはト二を所有すべく、二組の合同結婚式を提案する。
結婚式では、ト二とジョゼファは終始浮かぬ顔。
アルベルトとジョゼファ
結婚後も気持ちがジョゼファにあるト二に失望したマリーは、「入水自殺する」とト二に言う。しかしそれを狂言と思ったト二は放っておいた。しかし、マリーに片想いし続けている男に連れられて浜辺に行くと、入水自殺を図ったマリーが船で助けられたところだった。
「死に損なった」と言うマリーに、「そんなことを言わないでくれ」と片想いの男。
左から、ト二、マリー、マリーに片想いし続けている男
ジョゼファは女児を出産。しかしアルベルトは、新しくやって来た外国人女性に浮気。アルベルトは、共同経営である農園の売り上げを自分の所有にして隠す。
そんなアルベルトを気に入らないジョゼファのおじは、好きなト二に、ジョゼファが産んだ子の洗礼を頼み、トニを女児の代父に決める。
それに怒ったアルベルトは、ジョゼファに暴力をふるうようになる。
ジョゼファのおじが死去。
負債を相続することになった一家。この家に同居するジョゼファのいとこはジョゼファと恋仲になっていて、近いうちにこの家から逃げようと話し合っていた。
逃げる資金のために、寝ているアルベルトが紐を通して首にかけている札束を盗ろうとしたジョゼファ。それに気付いたアルベルトは、ベルトでジョゼファを鞭打ち。堪忍袋の緒が切れたジョゼファはアルベルトを射殺。
そこへやって来た、同居のいとことト二。
いとこは「このことは口外しない」と約束し、ジョゼファとの約束を反故にし、新地でやり直すためにアルベルトの札束を貰って消える。
残されたのは、ト二とジョゼファとアルベルトの死体。
ト二は、台車の洗濯物に隠して山に運び、死体の上にこの銃を置いておけば、アルベルトがこの家の借金に悩んで自殺したと思われるだろうと言い、ジョゼファを家に残して山へ行く。
すると死体に銃を置いているシーンを一人の巡回警察官に見つかる。ト二はジョゼファをかばってとっさに自首。
警察官は、通りかかった猟師3人に、死体を見ていてくれと言い残してトニを連行。
トニは連行される途中、その警察官を突き飛ばして傾斜の下に落とし、ジョゼファが待っている場所へ向かって走ってゆく。
一方、ト二逮捕の噂を聞いたジョゼファは、こどもを抱いて自首、別の警察官に連行されてゆく。
約束の場へ行くために鉄橋を走ってゆくト二を、待機していた猟師が射殺。
そこへ駆けつけた、マリーに片想いの男。「トニがここに来た3年前、こんなことになるとは思わなかった」と悲しむ。
少し先では、採石場の仕事のために汽車で新たにやって来た外国人たちが、希望の歌をあの日のトニのように歌いながら楽し気に行進しているのだった、でジエンド。
情が深く、ゆえにしつこいフランス人マリーがエモかった。
思い詰めるとそれしか見えないイタリア人トニと、ふしだらなほど開放的なスペイン人ジョゼファの組み合わせがエロかった。
特にこのシーンがエロい。
トニとジョゼファは、始めから気が合っていて相性が良かった。こういうのは、もうどうしようもないことなのだろう。マリーがごねればごねるほど、この2人の絆が強まってしまうという力学。
Wikipediaによれば、「監督ジャン・ルノワールを熱烈に賛美した若き日のルキノ・ヴィスコンティが、演出見習いとして初めから終わりまで関与しており、リアリスティックな演出方法は、イタリア映画のネオレアリスモに影響を与えたというのが定説となっている」という。ジャン・ルノワールは、日本で言うと黒澤明や小津安二郎的監督なのかなと思った。
リアリズムということで、奥泉光先生のこの動画の12:24~の『ボヴァリー夫人』誕生話を想起。
★Wikipediaより★
トニ(Toni)は、1935年のフランス映画。監督は ジャン・ルノワール。
主演シャルル・ブラベット、セリア・モンタルバン、エドゥアール・デルモント。
クレジットには、ストーリーライターのジャック・ルヴェール以外の作家はクレジットされていませんでしたが、後にルノワールとカール・アインシュタインによって書かれていたことが分かりました。 [1]。
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キャスト
- トニ - イタリア人の出稼ぎ労働者:シャルル・ブラヴェット
- マリー - 下宿の娘:ジェニ・エリア
- セバスチァン - 小さなぶどう園を経営:アンドレ・コヴァケヴィチ
- ジョゼファ - セバスチァンの娘:セリア・モンタルヴァン
- アルベール - 採石現場の監督:マクス・ダルバン
- フェルナン - トニの友人:エドゥアール・デルモン
- ガビ - ジョゼファの従兄弟:アンドレクス
制作
監督のジャン・ルノワールは商業的制約の多いパリで映画を作ることに嫌気がさし、当時マルセーユを根城に自由な映画製作を続けていた劇作家マルセル・パニョルのもとに行き、 念願の企画として実現した。 1920年代の初めころに、新聞紙上をにぎわせた犯罪実話をもとにして、マルティーグの町の警官の警部ジャック・モルティエが、ジャック・ルヴェールという筆名で発表した犯罪リポートを原作としている。
影響
ルノワールを熱烈に賛美した若き日のルキーノ・ヴィスコンティが演出見習いとして初めから終わりまで関与しており、リアリスティックな演出方法は、イタリア映画のネオレアリスモに影響を与えたというのが定説となっている。 [2]★
★トニは、ジャン・ルノワール監督、シャルル・ブラヴェット、セリア・モンタルヴァン、エドゥアール・デルモン主演の1935年のフランスのドラマ映画です。クレジットには、物語の脚本家ジャック・ルヴェール以外の作家は記載されていませんが、後に脚本はルノワールとカール・アインシュタインによって書かれたことが確認されました。[1] これは、プロではない俳優のキャスティングとロケ撮影の初期の例であり、どちらもフレンチヌーベルウェーブ運動の左岸に影響を与えました。プロヴァンスの採石場や農場の周りで働く移民のグループ(海外とフランスの他の地域の両方)の間のロマンチックな相互作用を調べると、それはまた、労働者階級への懸念、プロの俳優の使用、およびロケ撮影のために、イタリアのネオレアリズモ運動の主要な先駆者と見なされています。
トニはルノワールの最も有名な作品ではありませんが、批評家から肯定的な評価を受け続けています。
プロット
仕事を探して、トニはイタリアから南フランスに行きます。マリーという地元の女性が彼を借家人として引き取り、彼の恋人になります。しかし、スペイン人の客員ジョセファが町にやってくると、トニは彼女に恋をする。彼の失望に、ジョゼファは北フランス出身の教育を受けた裕福な男、アルベールに恋をします。アルバート/ジョセファとトニ/マリーは二重の結婚式を挙げるが、トニはヨセファが今でも彼の大いなる愛であることを隠せない。マリーが彼を家から追い出した後、彼のジョセファへの執着はさらに顕著になります。トニは山の小屋からジョセファの家を観察する。アルバートはますます虐待的になり、ジョセファと彼女の相棒であるガビはお金を盗んで逃げることにしました。アルバートはその行為で彼女を捕まえ、残酷に彼女を殴り、彼女は復讐のために彼の銃で彼を殺します。一方、トニはガビから計画を聞き出し、ガビにジョセファの様子を見に行くよう強要する。ジョセファが困っているのを見て、ガビは金を奪って逃げ出し、トニはジョセファに預けられる。トニは彼女をかばうために自分を犠牲にする。彼は約束の場所でジョセファと会うために走ったが、そこにたどり着く前に射殺されてしまう。
キャスト
- チャールズ・ブラヴェット(アントニオ・'トニ'・カノーヴァ役
- セリア・モンタルバン(Josefa
- エドゥアール・デルモン(フェルナン役
- マックス・ダルバン(アルバート役
- ジェニー・ヘリア(マリー役
- ミシェル・コヴァチェヴィッチ(セバスチャン役
- アンドレックス(ガビ役
- ポール・ボッツィ(ギタリスト)
生産
撮影はマルセイユにあるマルセル・パニョルのスタジオを拠点とし、全編南フランスでロケを敢行。(注2)
ネオリアリズム映画運動の創始者の一人であるルキノ・ヴィスコンティが助監督を務めたとされる文献もあるが、これには異論がある。[3][4] 最近の研究では、ヴィスコンティがルノワールと初めて共演したのは1936年の『田舎の日』である。(注5)
レセプション
トニはリリース以来、批評家から肯定的な評価を受けています。レビューアグリゲーターのRotten Tomatoesは、6人の批評家の間で100%の支持率を報告しています。高い評価を得ている映画監督のウェス・アンダーソンは、トニをお気に入りの映画として挙げています。[6] 2019年4月、この映画の修復版が2019年カンヌ国際映画祭のカンヌクラシック部門に選出された。(注7)★