『アガサ・クリスティーの奧さまは名探偵 Mon petit doigt m'a dit...』2005年
(名探偵)奥さまの夫の叔母が入居していた陽光ホームで、叔母に絵をくれた女性ローズが、昔自分の子を堕ろしていて、その娘に「友達を送る」ために周囲の子供たちを殺していた話。
怪し気な人しか出て来ない。
出て来る人は皆、事件に関係がありそうな人ばかり。
それを不自然と思うも、この映画はこの映画の主人公の視点なのであり、この主人公が怪し気なことにばかり嗅覚が働くのだから、そのフィルターを通して見ている自然な映像なのだ。
元になったアガサ・クリスティーの小説『親指のうずき』の意味は、主人公女性の第六感が働いたときの感覚を「親指がうずく」と表現していると理解した。
この妻プリュダンスは、何か異変を嗅ぎ付け、そこへ首を突っ込むのだが、事件の核となっていたローズが、真相を知ったプリュダンスを毒殺しようとしていたその白い飲料を自ら飲み、自殺すると、取りついていた悪霊が払われたようにケロッとする。
ここが肝心だと思った。
主人公の、異変体験者プリュダンスは、その事件を引きずらず、またいつもの日常に戻るのだ。
その為に、事件が起こる集落は、プリュダンスの生活圏内であってはならないのだろう。
この集落にプリュダンスがなぜ来たかというと、施設に入居していた夫の叔母が死去し、その遺品整理をしている中で見つけた絵の光景に見覚えがあり、それは、娘を寄宿学校に迎えにいった帰りの列車の車窓かた見たもので、そこに一番近い駅で降りてタクシーで絵の現場に駆け付けたからだった。
最初、そこにローズはいない。
ローズは、プリュダンスの夫の叔母の死のすぐ後で、家族に引き取られて以後施設の人には行方不明になったというのだ。
絵に描かれた屋敷の後ろ半分には不気味なムードの夫婦が住んでいて、前の半分には人が住んでいないとのことだったが、そこに住んでいたのが、ローズとその夫だったのだ。
この夫の双子の弟が弁護士で、途中で事件に触れて、小窓から投身自殺する。
この双子は1人二役なのだろうと思ったが、そっくりの双子が別現場にいるというだけで、怪しい雰囲気の演出になる。
プリュダンスが事件に首を突っ込んで、殺害された子供たちの墓場を見ていると、教会の牧師の代わりにこの辺り一帯の世話人のようになっている女性が、プリュダンスの後頭部を殴って意識を失わせる。
この女性は、ローズの夫を愛していたらしく、ローズの夫が警察に連行されるとなると、泣きじゃくって縋る。
この女性は、ローズが施設に入っている間、ローズの夫と恋人関係にあったのかもしれない。
このような、閉じられた共同体の人間関係の絡まり具合には『犬神家の一族』を想起。犬神家の一族 (1976年の映画) - Wikipedia
このフランスの映画は、とても日本ぽいと思った。
というか、ミステリーやコメディーというのは人間の本質を絞り出すジャンルで、人間社会を抽出した数式のようなもので、ゆえに世界共通になるということなのかもしれない。
犬神家における金田一もそうであるように、プリュダンスはストレンジャーでなければ地縁血縁情欲で目が曇って「事実」が見えなくなるのだろう。
殺人事件がエンターテインメントになる為には、観察者・問題提起&解決者の探偵主人公はふらっとやって来て、また戻れなければならないのだろう。
★小学校高学年の頃に世界的な探偵小説(ミステリー)ブームが起き、フランスの小説家、モーリス・ルブランの『古城の秘密』[注 15]を手始めに探偵小説を読むようになる[8][注 16] 。神戸二中に進学後は、同じくミステリー好きな同級生・西田徳重と海外のミステリー雑誌を読むため神戸市内の古書店をあちこち巡った。卒業から間もなく徳重が急逝するが、探偵小説を翻訳していた彼の兄・西田政治と親しくなる。★
★同年代の子供がパブリックスクールで教育を受けている間も、アガサは学校に入学することを許されなかった。同年代の友人のいないアガサは使用人やメイドと遊んだり、家の庭園で空想上の友人との一人遊びをしたりして過ごし、内気な少女に育っていった。一方で、父の書斎で様々な書籍を読みふけって過ごし、様々な事象に対する幅広い知識を得て、教養を深めることが出来た。★
英国の、シェイクスピアの後のアガサ・クリスティーは、日本の、近松門左衛門の後の夏目漱石的位置なのかもしれないと思った。「アガサ作品への出演は、英国俳優の通過儀礼」。ポアロの死は架空の人物として初めてニューズウィークの記事になった。ポアロが死ぬ『カーテン』出版の一年後にアガサが死去。
デヴィッド・スーシェは本当にポワロが嵌り役だったと思う。デヴィッド・スーシェ - Wikipedia
★Wikipediaより★
『アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵』(アガサ・クリスティーのおくさまはめいたんてい、Mon petit doigt m'a dit...)は、2005年のフランスのミステリーコメディ映画。
監督はパスカル・トマ、
出演はカトリーヌ・フロと
アンドレ・デュソリエなど。
『トミーとタペンス』シリーズ
『親指のうずき』を、
好評を受けて『パディントン発4時50分』を原作とした続編『奥さまは名探偵 〜パディントン発4時50分〜』が製作された。また、本作の監督パスカル・トマは別に『ゼロ時間へ』を翻案した『ゼロ時間の謎』を製作している。
ストーリー
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フランスの片田舎で悠々自適な生活をしているベレスフォルド夫妻。 好奇心旺盛な妻プリュダンスを夫ベリゼールは少々もてあまし気味だが、夫婦仲はすこぶる良い。
ある日、夫妻は高級老人ホームにいるベリゼールの叔母アダの見舞いに行く。 そこでプリュダンスは不思議な老婦人ローズ・エバンジェリスタと出会う。 数週間後、叔母が亡くなり、夫妻が遺品の整理をしていたところ、プリュダンスは見覚えのある館を描いた絵を見つける。 その絵はローズが叔母に譲ったものであり、しかもローズが、これまで面会に来ることのなかった親戚に突然引き取られて老人ホームを後にしていたことを知ったプリュダンスは、 事件の予感「親指のうずき」を感じ、絵に描かれた館とローズを探そうと決心する。 館についての記憶を頼りにたどり着いた村で、プリュダンスは怪しげな人物たちに出会う。
キャスト
※括弧内は日本語吹替
- プリュダンス・ベレスフォルド: カトリーヌ・フロ(高島雅羅)
- ベリゼール・ベレスフォルド: アンドレ・デュソリエ(小林修)
- ローズ・エバンジェリスタ: ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド(火野カチコ)
- アネット弁護士: ローラン・テルジェフ(フランス語版)
- ブレイ: ヴァレリー・カプリスキー(フランス語版)(竹村叔子)
- 将軍: ベルナール・ヴェルレー(フランス語版)
- ボスコヴァン夫人: アレクサンドラ・スチュワルト
作品の評価
アロシネによれば、フランスの19のメディアによる評価の平均点は5点満点中4点である[3]。★