『一ダースなら安くなる Cheaper by the Dozen』1950年
視点人物は、第一子である長女アン。
父親は「変わり者」で、自分のルールに従って行動、効率化の専門家で、そのアイデアを売って生計を立てているらしい。
こういう「発明家」的職業というのは映画でよくあるが、これは事実ベースで、一家のお父さんは本当にそれで家族を養って広いいい家に住んでいたらしい。
当時そういう「効率化」の需要が激しくあった時代だったのだろう。
時間短縮、という旗印のあった時代。
そのための、電化、情報化、という戦後の「右肩上がり」の時代。
それは多分に、ファンタジーでもあったのだろう。
その後ワープ(瞬間移動)という言葉が流行語になる時代。
「効率化による時間短縮による、いまだかつてない幸福なハッピーライフ」という幻想があり、その半分くらいは当時叶えられ、今に至っては、その時代の想像も軽く超えた時間短縮がなされているのでは、と思った。
とにかく笑うのは、そのお父さんがしていることの内容。
それがまるで、昭和の小学生のようなのだ。
お父さんは、ベストのボタンを、上からかけるのと下からかけるのと、どっちが時間短縮か、ということを、ストップウォッチを使って計測、妻にも計測させ、「やっぱり〇〇からの方が速い」と真面目に言っているのだ。
しかし、こういうことを、実際にお父さんはしていたらしい。
それで「そういう変な人」という芸人として成り立っていたのかというとそうではなく、プラハやロンドンから講演に呼ばれるというのだから、時代がそんな風だったのか、実はお父さんは世界の秘密に迫っていたのか(笑)、とにかくそれらが事実ベースだったことが面白い。
原作は自伝的小説「一ダースなら安くなる あるマネジメントパイオニアの生涯」。
自伝的というのだから、多少デフォルメはあるのかもしれない。
「あるマネジメントパイオニア」というのだから、自己管理、企業管理のパイオニアということだろうか。
企業研修などで講師をしたのかもしれないし、企業の生産効率を上げるために、箱根駅伝の青学の原監督のように、0.1秒を削り出すということをして、全体に利潤をもたらしたのかもしれない。
昭和時代に人口に膾炙したマニュアルというのは手順ということだが、例えば工場では、ちょっとしたことをシェアし全員の行動化にするだけで、生産効率が上がり、生産性が上がるのだろう。
原作は、一家のお父さん↓の息子さんが書いたらしい。
映画のお父さんは、子どもに対して校長先生のような、工場長のような、軍隊の隊長のようなノリ。そうしないとカオス過ぎ、結果全員が困るのだろう。
このお父さん役のクリフトン・ウェッブは、『愉快な家族 Sitting Pretty』でメリー・ポピンズ的ベビーシッターをしていた人。その時同様、「▲▲でちゅね~」というような幼児への媚び・同調・同期は一切しない。そこが可笑しい。威厳があり過ぎる父とその12人の元気過ぎる子たちのコントラストがもう絵的音楽的に可笑しいのだ。
★赤信号で止まっていると、歩行者から「なぜそんなに子供を連れているの?」と聞かれることが度々あり、父フランクはわざとじっくり考える振りをして信号が青になると「一ダースなら安くなるからね」と言ってすぐに発車していたことからこの題名がついた。★
「一ダースなら安くなる」というビジネス本的タイトルが、子どもが丁度12人であることと相まって、まず可笑しいのだと思う。
これは、お父さんが時間動作研究、及び効率向上技師だから出た言葉だと思うが、言われた人は一瞬考える。そしてハテナ、と思う。分かるようで分からないような。
一ダースでセット買いすれば、単品で別々に12個買うより単価が安くなるだろう。
それは売る側が、商品が一度に多く捌けて都合がいいからなのだが、この映画の場合、子どもが12人で、例えば遊園地の入場料が団体とみなされ一人一人別に入るより一人分が安くなるのか、というようなことだ。(ここでは【20名以上】から団体受付らしい→)一般団体でご利用の方 | 西武園ゆうえんち (seibu-leisure.co.jp)
でも、路上ではそれでウイットの効いた返事っぽくはなりそう、というところが面白い。
視点人物のアンは高校二年生。
思春期で、次女と共にある男性をカッコいい、と密かに思っている。そして御多分に漏れず、彼が氷運びのバイトをしているその足元にハンカチを落としたりするのだが、彼は気づかず残念、というような、昭和の少女漫画的ノリ。
このアンが、自分と妹たちのために革命を起こす、と、父に逆らいお化粧をしたり流行ファッションにしたり髪をショートヘアにしたり、男の子とデートしたりする。この絶対的父性の壁の切り裂きが、大家族の第一子の重責、と共感した。父はアンが逆らう度に、「修道会へ送る」と本気で言う。
アンは、その勇気と行動力により、意中の青年のハートを射止め、保護者としてダンスホールに来てしまったお父さんは、アンの同級生と御機嫌に踊る。アンとも軽快に踊り、お父さんは一躍生徒たちの人気者に。
(左から、アンの意中の青年、アン、アンのお父さんをかっこいいと思っている同級生、アンのお父さん)
そのダンスホールの父へ、子どもの一人が手紙を届ける。
その手紙は、父が心待ちにしていた、プラハとロンドンの講演出演のオファー。
お父さんは、その講演へ向かうため車に乗り家族に送り出され↓、駅で倒れ、妻に電話している最中に事切れた。
シーン変わって、お父さんのいなくなった一家の家族会議が開かれる。
子どもたちは皆、「自分に任せて」という頼もしさ。
心理学の素養もあるお母さんがお父さんの代わりに講演に行くことになり、これをお父さんも喜んでくれると思います、というムードでジエンド。
お父さんは仕事から帰ってくると子どもを全員立たせ、一人一人に別の質問をする。この子↓には、「手を洗った方がいいな」。男の子は「どうせ汚れるよ」などと返す。この家は、病気厳禁。すぐ感染してしまうから。しかし百日咳に子供たちが罹って隔離されると、お父さんは寂しいからと子供たちのベッドルームに来て一緒に咳をする。手術も家でさせ、その様子を助手と撮影。しかし助手は気持ちが悪くなり、結局「フィルムを入れていませんでした」と帰る。お父さんはそのフィルムを解析して手術の時間短縮の策を提案して稼ぐつもりだった。
向田邦子脚本の、『寺内貫太郎一家』を想起。寺内貫太郎一家 - Wikipedia
懐かしい、昭和の強く愛ある、実は寂しいお父さん。
向田邦子は、父を男として深く愛せてしまった長女なのだと思う。その向田さんの懐の広さ深さが、読者をずっと感動させているのだろう。父を男として本気で愛したら、それ以外の男はもう愛せないだろう、と思ったりもした。
★『一ダースなら安くなる あるマネジメントパイオニアの生涯』 (Cheaper by the Dozen ) はアメリカ合衆国のフランク・バンカー・ギルブレス・ジュニアとアーネスト・ギルブレス・ケアリーによる書籍。時間動作研究および能率向上技師のフランク・バンカー・ギルブレス・シニア、リリアン・モラー・ギルブレス夫妻とその12人の子供達について描かれている。一家が長年住んだニュージャージー州モントクレアでの生活に焦点を当てている。1950年、20世紀フォックスにより映画化され、『一ダースなら安くなる』として公開された。
一家総出で車で出掛けて赤信号で止まっていると、歩行者から「なぜそんなに子供を連れているの?」と聞かれることが度々あり、父フランクはわざとじっくり考える振りをして信号が青になると「一ダースなら安くなるからね」と言ってすぐに発車していたことからこの題名がついた。
実生活では第二子で次女のメアリーはジフテリアのため5歳で亡くなっている。本の中ではメアリーが亡くなったことにははっきりと言及していなかったが、『続 一ダースなら安くなる』では彼女の死について脚注で述べられている。
1950年発刊の『続 一ダースなら安くなる』では1924年の父フランクの死後の家族の様子を描いている。
映画化
詳細は「一ダースなら安くなる (映画)」を参照
1950年、クリフトン・ウェッブがフランク役、マーナ・ロイがリリアン役で『一ダースなら安くなる』が公開。家族計画団体からの訪問者役でミルドレッド・ナトウィックが出演しており、家族からからかわれる役となっている。1952年、続編もまた映画化され『続 一ダースなら安くなる』としてジーン・クレイン、マーナ・ロイが主演した。この映画は母リリアンと子供達に焦点を当てている。
コメディ俳優スティーヴ・マーティンとボニー・ハント主演で2003年『12人のパパ』、2005年『12人のパパ2』が公開されたが、12人子供がいるということ以外は原作や1950年の映画とは全く違う作品となっており、母の旧姓がギルブレスとなっている。★
★Wikipediaより★
『一ダースなら安くなる』(Cheaper by the Dozen)はアメリカ合衆国の1950年のテクニカラー映画。ウォルター・ラング監督。1948年発刊のフランク・バンカー・ギルブレス・ジュニア(en)とアーネスト・ギルブレス・ケアリー(en)による自伝的小説『一ダースなら安くなる あるマネジメントパイオニアの生涯』をベースにしている。この小説および映画はニュージャージー州モントクレアの12人子供のいる一家の様子を描いている。
あらすじ
両親は時間動作研究(en)および能率向上技師のフランク・バンカー・ギルブレス・シニア(en)と心理学者のリリアン・モラー・ギルブレス(en)。一家総出で車で出掛けて赤信号で止まっていると、歩行者から「なぜそんなに子供を連れているの?」と聞かれることが度々あり、父フランクはわざとじっくり考える振りをして信号が青になると「一ダースなら安くなるからね」と言ってすぐに発車していたことからこの題名がついた。
1920年代の能率向上技師の両親と12人の子供達の日常の生活から始まる。父フランクによる珍しい教育方針や、派手な服装や化粧など子供達の成長による欲求などが織り交ぜられている。父フランクは常に時間動作研究や能率向上を念頭に生活している。
父フランクの死後、母リリアンが父の仕事を継承していくことに家族は同意し、子供達は祖母のいるカリフォルニア州に引っ越すことも検討されたが結局母親のもとに残ることとなった。未亡人となった母親が働きに出て、収入も1人分となったことで子供達もそれぞれの責任を負うこととなる。
フランクの死後の彼らの生活は続編の『続 一ダースなら安くなる』で描かれる。
配役
- フランク・バンカー・ギルブレス (父親: クリフトン・ウェッブ)
- アン・ギルブレス (ジーン・クレイン)
- リリアン・ギルブレス (母親: マーナ・ロイ)
- デボラ・ランキャスター (ベティ・リン)
- ドクター・バートン (エドガー・ブキャナン)
- アーテスティン・ギルブレス (バーバラ・ベイツ)
- ミセス・メベイン (ミルドレッド・ナトウィック)
- ミセス・モナハン (サラ・オールグッド)
- ウィリアム・ギルブレス (ジミー・ハント)
- リリー・ギルブレス (キャロル・ニュージェント)
- フランク・ギルブレス・ジュニア (ノーマン・オールスタッド)
- 校長先生 (イヴリン・ヴァーデン)
- トム (クレイグ・ヒル)
続編
『一ダースなら安くなる』の成功により、フランク・バンカー・ギルブレス・ジュニアとアーネスト・ギルブレス・ケアリーは続編である『続 一ダースなら安くなる』を発刊し、1952年、20世紀フォックスにより『続 一ダースなら安くなる』が製作された。また、2003年には、リメイクとして『12人のパパ』、その続編の『12人のパパ2』が制作された。
実生活との相違
何人かは実際の誕生年とは違っている。実際はロバートが1920年生まれでジェーンが1922年生まれの末っ子であるが、映画ではロバートがジェーンの後の1922年生まれの末っ子ということになっている。実生活では第二子のメアリーは1912年に5歳で亡くなっている。映画ではアーネスティンの次の第三子ということになっており、あまり登場しない[1]。
実生活では両親共に重要な役割を担っている。映画の終盤、ナレーターが母親のリリアンは能率向上技師として世界的に有名となり、1948年、『タイム』誌が選ぶウーマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたと語っている。補足であるが、リリアンは1984年には切手の図案にもなっている。
余談
ラジオドラマ「お父さんはお人好し」や
はこの映画から着想を得たとされている。★