『愉快な家族 Sitting Pretty』1948年
メリー・ポピンズの男性版だと思った。
ハミングバードヒルという、名前は可愛いがその実態は閉鎖的な場にボスが威張りそのボスにコバンザメが太鼓持ちをし、母と2人暮らしの詮索好きでアヤメの交配が趣味で人の庭に入ってはその家への手紙を郵便配達夫から受け取り知った噂を流すという男のいる町にやって来た、メリーポピンズ的男性が、その町のことを本に書きベストセラー。町の、皆が言いたいけれど言うと怖い(寄らば大樹の陰の大樹の陰を失う)ため言えなかったことが明るみになり、結果はびこっていた悪が一掃され、メリーポピンズ的男性はベビーシッターとして住み込んでいた家に、第二部、第三部を書くため住み続け、その家の主人は威圧的だった雇い主の弁護士事務所を辞め、独立することになり、その夫婦には第四子が産まれる予定だ、という話。
(アヤメの交配の為に他人の庭に入り、他家の詮索をして町の人たちに噂を流す、母と2人暮らしの男)
(この植物オタクの詮索好きというキャラは、非常に現代的だと思った(面白かった))
(ベビーシッターとしてやって来たリンが書き、ベストセラーになった本)
とにかく、そのメリーポピンズ的男性、リンが面白い。
とにかく、やったことがない仕事はないというような人。
何でも知っていて、何でもできる、という感じ。
達観していて、仕事には忠実。
このベビーシッターの仕事も、仕事だからやる、でも「子供は大嫌い」(笑)。
しかし躾けられ自分を律してコントロールすることの素晴らしさに直感で気づき始めた子供たちは、リンに懐く。
(ベビーシッターの広告を出し、リンが来た家の夫婦。)
始め、夫婦は、住み込みのベビーシッターに応募してきた人を、その名前(リン・ベルヴェデーレ)からてっきり女性だと思い込んでいた。
まずここが面白い。
面白いとはつまり、既成概念という壁のぶち壊しのことなのだろう(ベビーシッター=女性という思い込みの崩壊)。
夫は、妻とリンの恋愛関係を疑う。
(夫が外出中に、彫刻家の卵であった妻はリンの胸像を作る。その制作過程の様子を愛撫と勘違いする、突如帰宅してきた夫)
しかしそのことにより悪い熱が出切ったという感じ。夫は、ずっとへこへこしてきた上司の元を、嫌だったが経済的不安により出ることができなかった。それは同僚とその妻も同じ。しかしリンの、この町を、町の名はそのままで登場人物は全員偽名(しかし誰が誰かはバレバレ)で暴露する本が出たため町の膿が出て、新生。町、つまり町民が生まれ変わった。誰もが言いたくても言えなかったことを、リンが本で全部言ってくれたのだった。しかし、情報提供したのは「被害者」たち。「彼女たち」は、新参者で変わり者(町の権力に媚びない人)であるリンに密かに告発。いわばリンは、そういう人たちの長年の鬱憤晴らしの旗振り役となったのだった。
(メモ魔で、リンに情報提供した電話交換手の女性。リンはそれらを元に本を書く。)
この話は、リンの本が大ベストセラーになることが大事。でないと、リンは権力者たち利権者たちから「魔女狩り」され、町を追い出されて蜥蜴の尻尾切りで元の木阿弥、どころか、告発に関わった、しかしこの町から経済的な理由で出られない人たちが権力者によって「首切り」されるという、より悪い大樹の陰町になって生活が続く、になってしまう。
大ベストセラーになったから、リンは金持ちになり、従来の権力者であった弁護士事務所から解雇されたこの家の夫を、事務所のボスから名誉棄損で訴えられた自分(リン)を弁護するために雇えたのだ。
それでこの家の夫は、同僚と共に「明日事務所を立ち上げます」と昨日までのボスに言えたのだ。
ここが特に、もやもやが晴れて良かった。
本を買ったのは、書かれている人達。ここが面白い。
つまりこのような形で課金できる場が求められていたのだろう。
この本に課金することで、町民は町の悪を一掃できるというシステム。
その大変化の発端に、「変人」リンの登場が必要だった。
「変人」とは、つまり旧体制にとって都合の悪い人のこと。
物語によく「変人」が出て来るのは、物語は変人(ストレンジャー)が作るから。
「あの人変わってるんだよ」という話を人が嬉々として話し出すのは、変わってほしい方に変わるかもしれない、変化の兆しを感じるから。
この映画の植物オタクも変人だが、お母さんと2人暮らしで子供キャラ。こういう場合、旧社会を嗅ぎ回るしかなく、変質者に堕し、変革者にはなれないのだろう。
(鳥の羽根で花粉の人工交配をして、アヤメの新品種開発をしようとしている男)
よくあるベビーシッターもの同様、冒頭は「こんな子供たちの面倒は、もう見られません!」と前任者の堪忍袋の緒が切れて去っていくところから始まる。
リンは自室で逆立ちをしたりなど、ヨガで瞑想する人。哲学者っぽい雰囲気で、物事にあたふたしない。この決して自分を変えない威厳、しかしこの家の妻とダンスするときは少し恍惚、が『王様と私』の王様ユル・ブリンナーっぽいと思った。
『愉快な家族 Sitting Pretty』の変奏曲が、『ミセスダウト』なのでは、と思った。
邦題は『愉快な家族』だが、反応する側ではなく、むしろやって来たメリーポピンズ的男性の方が主役だと思った。
『 Sitting Pretty』という原題の直訳は、『ちゃんと座りなさい』(Prettyは可愛いではなく、基本綺麗・美しい)という躾言葉、からの、『ちゃんと座るということ』つまり躾、そして生活、礼儀、的、人としての全部のことなのでは、と思った。
リン・ベルヴェデーレを演じたクリフトン・ウェッブが、冷静なダニー・ケイという感じの芸達者で非常に素敵だった。
(クリフトン・ウェッブ)
(ダニー・ケイ)
★Wikipediaより★
シッティング・プリティは、グウェン・ダヴェンポートの小説「ベルヴェデーレ」を原作に、
F・ヒュー・ハーバートの脚本を
が監督した1948年のアメリカのコメディ映画です。[3]この映画は、
が主演し、騒々しい子供たちのベビーシッターをするために謎めいたリン・ベルヴェデーレを雇う家族についてです。
1948年4月に20世紀フォックスが公開すると、『シッティング・プリティ』は興行的に成功を収めた。ウェッブは『ベルヴェデーレ』の演技で批評家から絶賛され、2つの続編を生み出した。
プロット
郊外のハミングバードヒルでは、弁護士のハリー・キングと妻のテイシーが、3人の若くてやんちゃな男の子、ラリーとトニーの乳母を雇うのに苦労しています。そして赤ん坊のロディ。使用人(全員女性)の最新の使用人が辞めると、Taceyは後任を募集し、目に見えないリン・ベルヴェデーレを雇います。しかし、彼女はリン・ベルヴェデーレが到着時に実は多くのスキルと実績を持つ謎の男であり、子供を嫌っていると宣言していることを発見します。それにもかかわらず、王たちはしぶしぶ裁判期間に同意し、その間にベルヴェデーレはすぐに少年たちを勝ち取ります。しかし、彼のミステリアスな性格は両親の興味をそそり、ハリーは彼の見下した態度に苛立ちを覚えます。
ハリーが出張に行く前に、タシーはロディを連れて、毎晩、友人である弁護士仲間のビル・フィルビーと妻のエドナの家で寝泊まりすることに同意し、ベルヴェデーレと一緒に家に残ることをめぐって町のスキャンダルの可能性を潰す。その夜遅く、少年の一人が具合が悪くなると、ベルヴェデーレはタシーに腹痛の訴えを呼んでくる。おせっかいな隣人クラレンス・アップルトンは明かりに気づいて調査し、やがてベルヴェデーレとタシーをロマンチックに結びつけるスキャンダラスな噂を広める。噂話はハリーの上司ホレイショ・J・ハモンドに届く。ハリーが旅行から意気揚々と戻ってくると、ハモンドはテイシーが法律事務所の評判を危険にさらしていると不満を漏らします。ハリーはその話を信じていないが、ベルヴェデールが他の仕事を見つけた方がいいと考えているが、妻と子供たちに説得され、考えを変える。
その後、テイシーとエドナは夜の講義に出席する。その後、おしゃれなレストランで軽食を食べに行き、そこで休日のベルヴェデーレに出会います。ベルヴェデーレはタシーをダンスに誘う。彼らはアップルトンと彼の同様に好奇心旺盛な母親によって頬を寄せ合って踊っているところを目撃され、悪意のある噂が再び始まります。今回、ハリーはあまり理解していません。侮辱されたテイシーは彼と喧嘩し、末っ子を連れてテキサス州フォートワースにある彼女の両親の家に飛ぶ。
そうこうしているうちに、ベルヴェデーレがここ数週間、密かに調査し、ハミングバードヒルの住人たちの間で起きている卑劣な話を書いていたことを知る。実際、この本の宣伝文句には「郊外のマナーやモラルに対する叫び風刺」と書かれています。出版された本は全米ベストセラーとなり、コミュニティの誰もが動揺しました。タシーは急いで家に帰り、夫と和解する。ハモンドはハリーとビルを解雇し、ベルヴェデーレを訴える決意を表明するが、ベルヴェデーレは、すでに人気のある本の売り上げが伸びることを期待して喜ぶ。彼はハリーとビルを雇って彼を弁護し、彼の情報の多くの情報源を明かします:他ならぬクラレンス・アップルトン。密告者は逃走し、ハモンドらは猛追する。彼の新しい名声にもかかわらず、ベルヴェデーレは彼の成功した本が三部作になるものの最初の巻にすぎないので、彼の仕事を続けることに同意します。
キャスト
- ロバート・ヤング - ハリー・キング
- モーリーン・オハラ:テイシー・キング(旧姓アシュクロフト)
- クリフトン・ウェッブ - リン・ベルヴェデーレ
- リヒャルト・ハイドン - クラレンス・アップルトン
- ルイーズ・オールブリットン - エドナ・フィルビー
- ランディ・スチュアート(ペギー役
- エド・ベグリー - ホレイショ・J・ハモンド
- ラリー・オルセン - ラリー・キング
- ジョン・ラッセル:ビル・フィルビー
- ベティ・アン・リン(ジンジャー役
- ウィラード・ロバートソン(アシュクロフト氏役
- ノンクレジット
- アンソニー・サイデス - トニー・キング
- ロディ・マッカスキル - ロディ・キング
- チャールズ・アーント(ミスター・テイラー役
- ケン・クリスティ(マクファーソン氏役
- メアリー・フィールド(デラ役
- グレイス・ハンプトン(ミセス・アップルトン役
- 秘書としてのマリオン・マーシャル
- ミラ・マッキニー(フィリップス夫人役
- デイヴ・モリス(郵便配達員)
- ジェーン・ナイ - メイベル・フィリップス
- イザベル・ランドルフ(フリスビー夫人役
- タクシー運転手としてのシド・セイラー
- アン・シューメイカー(アシュクロフト夫人役
- チャールズ・タネン(ニュース映画監督)
- ミネルバ・ウレカル(メイポール夫人役
- ジョセフィン・ウィッテル(ハモンド夫人役
- カーラ・ウィリアムズ(秘書役)
生産
この映画は当初、小説と同じようにベルヴェデーレというタイトルでしたが、Sitting Prettyに変更されました。ジョン・ペインは夫の役を演じる予定だった。[4] セレステ・ホルムもこの映画に出演したが、『スネーク・ピット』の撮影のために降板した。撮影は1947年10月23日から12月16日まで行われた[5]。[1][5]
スタジオの責任者であるダリル・F・ザナックは、この映画の制作に非常に興奮しており、フォックスによって洗練され、優れた上流階級のキャラクターとして主にキャスティングされていたウェッブは、以前のジャンルから逸脱してキャスティングされました。[1]ウェッブはまた、映画の中で踊り、彼はダンス、歌、そして1944年にフォックスとの契約の前にブロードウェイで彼を人気にしたコメディーの才能を披露することができたまれなチャンスの1つ。[6]ウェッブは後にこの映画を「劇場でもスクリーンでも、私が今まで経験した中で最も楽しい仕事」と回想している。(注1)
フォトグラファーのルーミス・ディーンは『ライフ』の撮影現場を訪れ、当時無名だった女優のローレット・ルエズとマリリン・モンロー(映画には登場しない)と一緒にウェッブを撮影した。(注7)
レセプション
ボズレー・クラウザーはニューヨーク・タイムズ紙に「中身は軽いが、ユーモアはしっかりしているが、この映画の素材は、この映画に近づくすべての人、特にウェッブ氏によって器用に扱われている」と書いている。[8]彼はまた、モーリーン・オハラとロバート・ヤングを「愉快に賢い」と感じた。(注8)
受賞歴
- クリフトン・ウェッブは、1948年のアカデミー賞でアカデミー主演男優賞にノミネートされました。
- F・ヒュー・ハーバートは、1949年に全米脚本家組合のベスト・ライティング・アメリカン・コメディ賞を受賞しました。
- この映画は1948年のフォトプレイ賞で金賞を受賞しました。
続編と翻案
詳細は「Lynn Aloysius Belvedere」を参照
映画は成功したが、ベルヴェデーレ役のウェッブの特別な成功は、フォックスがベルヴェデーレのキャラクターを中心とした一連の映画を制作するきっかけとなった。フォックスは6本の脚本を依頼したが、製作されたのは『ベルヴェデーレ大学へ行く』(1949年)と『ベルヴェデーレの鐘』(1951年)のみであった。スタジオは、後者の映画が成功しなかったときにシリーズをキャンセルしました。(注5)
この映画のラジオとテレビの映画化が制作された。ラジオ版は1949年2月14日にラックス・ラジオ・シアターで上演された。1956年、この映画は20世紀フォックス・アワーのために『ミスター・ベルヴェデーレ』というタイトルでリメイクされた。テレビ版ではレジナルド・ガーディナーがタイトルロールを演じた。この作品は、ガーディナー主演のシリーズの裏口パイロットとしても機能したが、これは決して発展しなかった。★