『バルカン超特急 The Lady Vanishes』1938年
ヒッチコックが英国時代に手掛けた作品ということなのだが、「オリエント急行殺人事件」+「ミス・マープル」という感じ。
アガサ・クリスティーっぽいミステリーから、ヒッチコックは次第に独自のサスペンス映画を構築していったのだろうか。
(日本の寅さんが、英国だとミス・マープルになるのか、と思った。)
フロイという名の老女スパイがいて、
彼女が、欧州二国間の協定規約(二国以外に漏れるとヤバいもの)を曲化したものを入手(覚え)、英国に戻ろうとしていた。
しかしこのフロイが消されそうになる。
彼女に出会った若いアメリカ人女性と、スナフキンみたいなクラリネット奏者↓↓が、協力して消されたフロイを救う、という話。
汽車で同室になった、フロイと女性。女性が「フロイト?」と数回聞き返すと、フロイは窓にスペルを書く。
(フロイと、彼女を救った男女)
(両端の英国人2人は、始めからロンドンに早く帰りたく、早くポロの結果を知りたいということにしか興味がない。女性が「絶対フロイがこの汽車の中にいる」と緊急停止レバーを倒すと、最初は「どうかしてるお嬢さんだ、帰国が遅くなるぞ」。しかし外との銃撃戦となると、応戦)
フロイがスパイであると気付いた敵は、フロイを見たという人の記憶を妄想として、フロイの存在を消し、フロイを拉致しようとしていた(その欧州二国当事者ならフロイを即殺せば済むこと、即殺していないということは、それ以外の国が、彼女から曲を聞き出して利用しようとしていたのでは、と思った。しかし彼女が汽車から逃げると射殺しようとしてきた、ということは、射殺した人は少なくとも二国当事者、と見た。)。
冒頭。
雪崩で汽車が止まり、その汽車を使うはずだった乗客が、現地観光客と共に、バンドリカ国という小さな国(環境的にはスイス、規模的にはバチカン市国がモデルかと思った)の小さなホテルに泊まった。
そこで、いくつもの国の客が交流することになる。
フロイとの交流のあったアメリカ人女性は、今度の木曜日に結婚することになっている。
この女性が、最初失礼だと思っていたクラリネット奏者と助け合ってフロイを救助しようとし、フロイを逃がし、彼女は敵に撃たれて死去したかに見えた。
しかし2人がロンドンの外務省に行って、クラリネット奏者があの曲を思い出そうとすると出来ない。するとあの曲が、部屋の中から聞こえる。
ドアを開けると、フロイがその曲をピアノで弾いていて、「フロイ!」と2人は喜ぶ。(観客は、フロイは絶対死んだと思っていた)
アメリカ人女性は、婚約者ではなくこのクラリネット奏者と結婚することになりそう、でジエンド。
始めアメリカのお気楽金持ち学生のバカンスという三人組の一人の女性は、結婚するのでロンドンに帰るとなり、一人行動。そこから事件に巻き込まれる。
女性は男性との本気のやり取りを通し、何枚もガードが剥がれ、主体的になってゆく。これには、「自分だけが知っている、自分しか知らない」事実を証明せねばというシチュエーションが必要だった。フロイのことを知っているのは自分だけ、自分が証明しないとフロイの存在が抹殺されてしまう、という責任感。
あれは夢でも妄想でもない、やっぱり消されたんだ、どこへ?誰が?何のために?とその謎を女性は一人で究明してゆく。彼女の言う事を信じたクラリネット奏者は、知恵と体力を使い、薬で眠らされたふりなどして、彼女とともにサバイバル。
フロイは、客が来過ぎた小さなホテルで食事の足りない英国人2人に自分のチーズをあげたり、窓の下のギター弾きにチップを投げたりと、基本優しい女性。そういうことを感受した女性は、自分のおばあちゃんを救うかのように、フロイを救う。
乗客のそれぞれの思惑、性格、背景が、この事件で浮き彫りになるのが面白い。『オリエント急行殺人事件』同様、列車ものというのは、日常から切り離され、知らない者同士が期間限定で共同体の住人同士のようになるのが面白い(前段のホテル内も同様)』
スケキヨinバルカン超特急。
(確かにいたはずのフロイが消えた。アメリカ人女性がそう訴えると、敵に買収されている乗客たちは一様に、「そんな人はいなかった、あなたの妄想だ」と言う。確かに見た、ほら、窓にもフロイが指で書いたスペルが、と言うと、ホテルでは喧嘩別れとなった「嫌な男」クラリネット奏者が信じてくれ、一緒に謎を解明しようとしてくれる。この写真の顔包帯巻き患者は、途中から乗車。付き添いの尼さんがハイヒールであることを不審に感じた2人は、この顔の包帯を取る。するとそれは、フロイだったのだ。汽車の中には、フロイの服装の、フロイではない老女がいる。この老女は、顔を包帯で巻いて担架で途中駅から汽車に入ってきたのだった。この尼さん役の女性は、医者役の男から寝返り、2人の味方になった。ゆえにこのことを医者役の男に通報しない。2人はフロイを途中で汽車から放つが、観客にだけは、フロイが射殺されたかに見えた。しかし彼女が死んでいなかった、というラスト。あの、撃たれてジャンプ、転倒、というのは、スパイの、見せかけ偽装死だったのだろうと思った。)
((偽)尼さんも、相棒男に(邪魔と判断され、)口封じとして猿轡を嚙まされていた)
原題は『The Lady Vanishes』、直訳は『消えた女性』だろうか。
ヒッチコックと主演女優のオフショットか。
主演のマイケル・レッドグレイヴはダニーケイの雰囲気もあり、身のこなしが粋で、非常にかっこいいと思った。マイケル・レッドグレイヴ - Wikipedia
ダニー・ケイ
★『バルカン超特急』(バルカンちょうとっきゅう、The Lady Vanishes)は、1938年のイギリス・アメリカのサスペンス映画。原作はエセル・リナ・ホワイトの小説『The Wheel Spins』。
ストーリー
各国が戦争に突入しそうな不穏な時代、ヨーロッパの架空の国バンドリカの山奥で列車が雪崩で動けなくなっており、駅の待合所では、出発は明日になる旨が乗客に告げられる。乗客にはクリケット狂のカルディコットとチャータース、トッドハンター弁護士と実は妻ではなく愛人で不倫の仲である仮のトッドハンター夫人、家庭教師のミス・フロイなどがいて、仕方なく駅の近くの狭いホテルに泊まることになる。カルディコットとチャータースは、ホテルで客室が足りないためにメイド部屋も当てがわれ、レストランでは食べるものが足りず、情報も入ってこないので不満ばかり。同じホテルには、結婚前の最後の旅行で、友人2人と楽しんでいる、アイリス・ヘンダーソンというイギリス人女性がいるが、友人から結婚を心配されている。ミス・フロイがホテルの部屋で、窓下のギターの調べを聞いていると、上階からクラリネットと民族舞踊の踊りが始まり、また下の階で寝ようとしていたアイリスは煩くて眠れない為に、支配人に頼んで静かにするように頼む。しかし上の階のギルバートは、クラリネットで民族舞踊を記録するのは大事な作業だと譲らなかった為、支配人に部屋を追い出され、何とアイリスの部屋に転がり込んでくる。この時、ギター弾きは何者かに殺される。後々、このギター弾きが何かの暗号を送っていたことが分かる。結局、アイリスは支配人に頼んで、ギルバートを元の部屋に戻してもらう。
翌日、列車運行は再開され、皆乗り始めるのだが、アイリスは出発時に、ミス・フロイを狙ったと思われる落ちて来た植木鉢が頭に当たり、列車に乗ってからも朦朧となる。列車で同室となったミス・フロイと食堂車に行ってお茶を飲んで過ごし、客車に戻って、一眠りしたアイリスが起きた時には、ミス・フロイは消えていた。同室の乗客が、ミス・フロイなど知らないと言った為に、心配になったアイリスは列車内を探し回るのだが、他の乗客も乗務員も初めからそんな老女は見なかったと口を揃える。さらに、同乗していた高名な医師のエゴン・ハーツは、ミス・フロイは実在せず、アイリスが頭を打った後遺症で記憶障害を起こしているのだと断定する。ミス・フロイの実在を信じるアイリスは乗客のギルバートと共に列車内でミス・フロイを探し始める。お忍びの不倫旅行中のトッドハンター弁護士は、アイリスとは関わりたくないことから嘘を吐き、カルディコットとチャータースはクリケットのことを馬鹿にしたアイリスの質問には答えないでいる。
列車は次の駅で停まり全身包帯の病人が運び込まれるのをエゴン・ハーツ医師から聞いたアイリスとギルバートは、ミス・フロイが下ろされるのではないかと見張るのだが何も起きない。本当に幻覚だったのではと考え直し、ギルバートと食堂に行ったアイリスは、しかしそこでフロイが窓に書いた「フロイ」の文字を見て確信し、列車を急停車させるが、アイリスも意識を失い、倒れてしまう。動き出した列車で捜索するアイリスとギルバートは、魔術師ドッポが人を消す手品を行うことを知り、道具からミス・フロイの眼鏡を発見し、ミス・フロイの存在を確信する。魔術師ドッポが現れ、アイリスとギルバートは戦うが、ドッポには手品の箱で逃げられてしまう。2人は、全身を包帯で巻かれた患者に付き添っているシスターがハイヒールを履いているのを不審に思い、ハーツ医師に相談する為に一緒に食堂へ行くのだが、そこで2人の酒に毒を混ぜた後、ミス・フロイは陰謀に巻き込まれたことをハーツ医師は明かす。医師はバンドリカ国のスパイであり、給仕と魔術師ドッポの一座や乗客などを買収して、ミス・フロイを拉致しようとしているのを告げるのであった。しかし実はシスターは罪悪感から給仕に毒を渡しておらず、重病患者として拘束されていたミス・フロイを2人は助け出し、気を失わせた身代わりの女性を包帯で包む。駅で患者と下りたハーツ医師は、入れ替わりに気付き、ロンドンへ走る列車は切り離され、本線から外れて山の中へ向かう支線に入ってしまう。列車が止まった所で、ギルバートは乗客に事実を話し、半信半疑だったカルディコットとチャータースも銃撃され事の重大さを知り、バンドリカの軍隊と激しい銃撃戦となる。トッドハンター弁護士が降参の意思を表明したのにも拘わらず銃殺されるのを見て、ミス・フロイは自分がイギリスの諜報員であることを告白、謎の暗号としてのメロディをギルバートに教え、それをイギリス外務省に伝えることを依頼して、列車を下りて走り去るのだが、バンドリカの軍隊に撃たれたようにも見える。犠牲者を出しながらも、ギルバートは運転士を脅して列車を逆に走らせることに成功し、アイリスと共にロンドンに到着。外務省へ急ぐギルバートだが、メロディを忘れてしまう。しかし、ミス・フロイは生きていて再会。アイリスは結婚する予定だったフィアンセを振って、列車で冒険をしたギルバートに惹かれ、2人は結ばれる。
キャスト
※括弧内はPDDVDに収録されている日本語吹替。
- アイリス・ヘンダーソン: マーガレット・ロックウッド(松谷彼哉) - 結婚を間近に控えた女性。
- ギルバート: マイケル・レッドグレイヴ(大川透) - クラリネット奏者。
- エゴン・ハーツ医師: ポール・ルーカス(金尾哲夫)
- ミス・フロイ: メイ・ウィッティ(田中結子) - 家庭教師。
- トッドハンター氏: セシル・パーカー(英語版)(原田晃) - ダブル不倫中の弁護士。
- トッドハンター“夫人”: リンデン・トラヴァース(英語版)(雨谷和砂) - トッドハンター氏の不倫相手。既婚者。
- カルディコット: ノウントン・ウェイン(英語版)(千々和竜策) - クリケット狂のイングランド人。
- チャータース: ベイジル・ラドフォード(英語版)(楠見尚己) - クリケット狂のイングランド人。
- アトーナ男爵夫人: メアリー・クレア(英語版)
- ホテル支配人: エミール・ボレオ(ドイツ語版)(鈴木貴征)
- ドッポ氏: フィリップ・リーヴァー(ドイツ語版)(田坂浩樹) - イタリア人奇術師。
- ドッポ夫人: セルマ・ヴァズ・ディアス(英語版)
- 尼僧: キャサリン・レイシー(英語版)(深森らえる)
- マダム・クマー: ジョセフィン・ウィルソン(英語版)(橘凛) - ミス・フロイになりすました女性。
- アルフレッド・ヒッチコック
評価
Rotten Tomatoesによれば、44件の評論のうち、98%にあたる43件が高く評価しており、平均して10点満点中8.31点を得ている[2]。
英国映画協会が1999年に英国の映画やテレビ業界の1,000人に対して行ったアンケートによる20世紀の英国映画トップ100(英語版)で35位に選ばれている[3]。
雑誌「タイムアウト」が150人を超える俳優、監督、脚本家、プロデューサー、評論家や映画界の有力者に対して行ったアンケートによる英国映画ベスト100で31位に選ばれている[4]。
メモ
- 消えた乗客について主人公以外の人間が「そんな人間はいなかった」と口を揃えるというプロットは『フライトプラン』にも応用されている(『フライトプラン』には『バニー・レークは行方不明』との関連も指摘されている)。
- この作品のマクガフィン(観客の興味を引っ張るストーリー上の「謎」)に関して、ヒッチコックは「ばかばかしいものだ」と言いつつ大いに気に入っていた旨の発言をしている(ヒッチコック=トリュフォー『映画術』)。
- 1979年にシビル・シェパード主演でリメイク(『レディ・バニッシュ/暗号を歌う女』)されている。
- ノウントン・ウェイン(英語版)とベイジル・ラドフォード(英語版)が演じたイギリス人の乗客2人は、1940年のキャロル・リード監督の『ミュンヘンへの夜行列車(英語版)』(プロデューサーが本作と同じエドワード・ブラック(英語版))にほぼ同じ役で再登場している。また役名は異なるが、1945年の『夢の中の恐怖(英語版)』や1948年の『四重奏(英語版)』にも出演している他、日本では公開・発売されていない8作の映画にコンビで出演している。さらにBBCラジオでは2人が出演するラジオドラマシリーズにもなった(チャータースとカルディコット(英語版)参照)。なお、『ミュンヘンへの夜行列車』にはマーガレット・ロックウッドも、別人物の役で出演している。
ヒッチコックの登場シーン
![](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/42/Cam%C3%A9o_-_Une_femme_dispara%C3%AEt.jpg/220px-Cam%C3%A9o_-_Une_femme_dispara%C3%AEt.jpg)
エンディング近くのヴィクトリア駅で、黒のコートをまとってタバコをふかしながら通り過ぎるシーン[5]。★