星お月様星空『黄昏 Carrie』1952年星空お月様星

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この予告編を見ると、都会シカゴに出稼ぎに出て来て偶然出会ったステータスある男の運を全部吸って立ち位置を逆転させた下剋上田舎女の話、とも言える映画。

 

(実家のある駅での、家族とのお別れ)

Carrie (1952) - Trailers From Hell

Carrie (1952)

 

後に共に逃避行することになるジョージが支配人である、シカゴ1のレストランで、列車で出会ったやたら親切過ぎる、下心のある独身のチャールズ↓(実はジョージと旧友)

Carrie (1952)

と待ち合わせのため入店しようとすると、

Carrie (1952) – FilmFanatic.org

バーで見下され、門前払いされそうになる。そこでキャリーの新鮮な美しさに心を奪われ助けた支配人ジョージ。

(「『このお金、受取れません』とチャールズ〇〇さんに返していただけませんか?」とジョージとやり取りしているうちに、チャールズ到着)

Carrie (movie, 1952)

Eddie Albert and Jennifer Jones, Carrie, 1952 | Jennifer jones, Classic ...

ジョージと高圧的な妻との間には利害関係はあるが愛がない。ジョージには子が二人。その子らも、恋愛し、もうすぐ結婚するか、というところ。この妻に任せれば、金銭的には上手くいく。逆に言うと、この妻を敵に回すと破滅、という人生ゲーム。ジョージは旧友から奪いたいほどキャリーを愛してしまった。

Carrie (1952)

キャリーは、「親切な人に頼るしか持ち駒がない」という人生ゲーム初心者。つまり自分の意志で選んでいない。情報整理できない混沌のため、選ぶということができないのだ。

 

キャリーは田舎の実家から、出稼ぎのためにシカゴ行きの列車に乗った。この車中でやたら話しかけてきたのがチャールズ。

キャリーはシカゴの姉一家の家に住み、靴工場で働き縫製作業をするが、その仕事中にミシンの針で指を刺し、解雇される(代わりの一人が既にスタンバっている)。

Carrie (1952)

A PERSON IN THE DARK: Underseen and Underrated: Carrie (1952): Laurence ...

Carrie (1952) – FilmFanatic.org

この辺りは『あゝ野麦峠』っぽい、女工哀史。

住まわせてもらっている姉の家では、姉の夫が「生活費を〇〇入れてくれ」と言ってくる。女三界に家無し、という様相。

困ったキャリーは、列車でもらった名刺の住所にチャールズを訪ねる。すると「ここできみができる仕事はない」(看板会社らしく、板にペンキで塗っている人がいる)。

Carrie (1952)

チャールズは、キャリーに「これで服を買いなさい、そうすれば仕事も見つかる」と言ってお金をくれる。それで姉に生活費を払おうとすると、「会社から電話があったわ。解雇されたのに、このお金はどうしたの?」「もらったの」「男の人から?」「そう」「そんなお金、夫は受け取らないわ」。

 

シーン変わって、キャリーはチャールズと同居している。

「いつ結婚してくれるの?」「もうすぐだよ愛するキャリー」。

特にこの時代、そうするしかないよな、と思うも少し失望。

 

しばらくして、ジョージがキャリーに愛を告白すると、キャリーはその濃密さに愛を感じ、受け容れる。するとチャールズのキスを避けるようになるキャリー。

Carrie (1952) – FilmFanatic.org

キャリーはチャールズから、ジョージが妻子持ちと聞くととたんに傷付きレストランの席を立つ。

ジョージの見た目と支配人というステータスからしてその可能性は大なのに、田舎から出て来たばかりの若いキャリーは、何の免疫もなく、次々体当たりしては自爆してゆく。

この辺りは、まだキャリーのシンデレラストーリーっぽい。

 

キャリーと会っていることが妻にバレたジョージ。「財産は全部私名義なのよ。だからあなたは私なしでは生きていけない」と妻。

Carrie (1952)

황혼 [ Carrie 1952 ] 한글자막 1080p

 

キャリーがジョージが妻子持ちを隠していたことに傷付いたのだと知ったジョージは、「言ったら避けられると思って」。

旧友チャールズにも密会がバレると、ジョージは友人もなくす負の勢い。

Laurence Olivier, Jennifer Jones and Eddie Albert

(この辺りは、女一人に親友同士男二人の『あ・うん』っぽい)

あ・うん(1989年) | 内容・スタッフ・キャスト・作品情報 - 映画ナタリー

 

 

妻はジョージのレストランの社長に女と会っていることを告げ口する、と脅してくる。

そんな窮地のジョージは、ふとしたはずみで、社長が賭博で儲けた金10万ドルを手にし(金庫に入れる前に金庫がロックされた(タイマー付きの金庫で、ダイヤルで予約した際にしか開かない。開けば非常ベル))、とりあえずポケットに入れて社長に渡そうとしたが家に社長が来て妻と「女と別れないと解雇する」と脅してきたためその金を持って家出、そしてキャリーを「チャールズが事故にあった」と騙して列車に乗せるのだ。

 

あの人があそこでああしなければ、だらけなのだが、登場人物がしでかすことが天秤で釣り合ってしまうため、誰か一人を悪者にできないことが観客のジレンマ。

誰か一人本物の悪者がいれば「あの人が鬼」でゲーム終了なのだが、悪が分散し過ぎ、回収不能(笑)。それがつまり、人生そのものなのだが。

こんなはずじゃなかっただらけを登場人物全員が味わう。

情報時代ではないから、物事に対する事前リサーチが不可能。

実際に現地へ行き、体温ある相手の胸に飛び込んで、相手を師匠にして、自分と相手を同様に深く傷付けつつ人生の辛酸をなめながら進むしかないのだ。

 

そのことに、感動する。

 

列車を降りようとするキャリー。それを阻止しようとして抱きしめるジョージ。

しかし次の駅で停車すると、ジョージは手を離し、「僕を愛していないなら、ここで降りてくれ」。しばし考えたキャリーは、降りないのだ。

Carrie (1952)

これが人生の岐路における選択というもの。人生は「何も選ばなかった」という消極的選択でも、結局自己責任の積み重ねなのだ。

 

シーン変わって、二人はニューヨークの高級ホテルに泊まっている。この経費はジョージが店から盗んだ金なのだが、キャリーはそれを知らず、ドレスに羽根飾りのある帽子をかぶり、「わたしって何て幸福なのかしら」。

Carrie (1952)

Carrie (1952)

ここへ追っ手が来て、ジョージに金を返せと言ってくる。

 

ジョージが「破産した」と言うと、キャリーは「もっと恐ろしいことを言うのかと思ったわ。このホテルを出て家を見つけて、一緒に働きましょう」(盗みの事実をキャリーは知らないまま。ただ贅沢したからジョージの貯金がなくなったのだと認識している)。

Carrie 1952 crisis - YouTube

ジョージは下町のみすぼらしいレストランで働くが、下っ端で見下され、しまいには金を盗んだことが通報され、解雇。

 

家を売却してもっと小さな場所に転居するため弁護士とやって来た妻は、「署名して。そうすれば財産は全部私の物になる」。ここで、妻が離婚に同意していないため重婚していることが発覚。キャリー混乱。

「離婚してくれれば署名する」とジョージが言うと、それが得だと考えた妻と弁護士は、離婚同意、金は何もやらない、という条件で引き下がった。

Imagini rezolutie mare Carrie (1952) - Imagine 6 din 23 - CineMagia.ro

 

 

キャリーは、仕事の見つからないジョージを、生活力のない老いた人、というふうに感じてくる(実は盗人だということが通報されていて、正規では雇われない)。

キャリーは流産もして失意。

Carrie (1952)

しかし自分はまだ若い、とキャリーは心機一転、思い切って劇場のオーディションを受け、合格、一気にスターになる。この辺りは、キャリーが自分の足で人生を歩み始めている自信が漲っていて、『コーラスライン』のよう。

コーラスライン : ポスター画像 - 映画.com

 

そんなある日、ジョージは新聞で、自分の息子の結婚の記事を読む。相手の家は、金持ち。

それを話すと、「行ってきなさい」と、母のような視線のキャリー。

行くと、相手の家のステータスに比して自分が惨めで出ていけないジョージ。

家に帰るとキャリーはいない。

キャリーは、自分が女優として自活して離れてあげることでジョージを元の生活に戻してあげたつもりだったのだ。

 

成功したキャリーの所に、チャールズがやって来て、そこで初めてキャリーは、ジョージが自分のために一万ドルを盗み、それゆえ仕事も見つからなかったのだ、と知る事になる。

Imagini rezolutie mare Carrie (1952) - Imagine 2 din 23 - CineMagia.ro

一人残されたジョージは家賃も払えず家を追い出され、日雇いの仕事も若い人に取られ、体を壊し入院。退院すると安宿も追い出され、

Carrie (1952)

ホームレスで物乞い生活。

Laurence Olivier in Carrie directed by William Wyller, 1952 Carry On ...

(キャリーの髪留めをお守りのように紙に包んで体から離さないジョージに涙)

Carrie (1952) :: Flickers in TimeFlickers in Time

「餓死する」と呟き街をさ迷っていると、成功しているスター、キャリーのポスターが目に入る(キャリーは姓だけ芸名)。

恥を忍び、ジョージはキャリーの楽屋に行き、「頼む、恵んでくれ」とか細い声で話しかける。

キャリーは、「ジョージ!ちょっと待っていて。今食事を持ってこさせるから」と使いの人を出してから控室に案内。

二人になると、キャリーはお茶のためにガスコンロの火をつける。

「恵んでくれ」としか言わないジョージが惨めで可哀そうで、観客は涙が止まらない。

「ちょっと待っていて、今」と言うキャリーに、「札(さつ)じゃないほうがいい、小銭を恵んでくれ」。

「今、料理を店から持ってくるから」と控室を出るキャリー。

しかしジョージは待たず、キャリーからもらったお札をキャリーの財布に入れ、小銭のうち一番額が小さいらしき一つを取って、立ち上がる。

鏡には自分の惨めな姿。

ふとジョージは、ガス自殺をしようとコンロのスイッチを止めたりまたつけたりする。

しかしジョージはガスコンロをそのままにし、控室を出るのだった、でジエンド。

Carrie, 1952 | Produced and directed by William Wyler | Leonardo Garcia ...

 

 

 

Carrie (Carrie, 1952) - Film

Carrie (1952)

 

 

 

原題『Carrie』が邦題『黄昏』となったのは、主役のはずのキャリー役のジェニファー・ジョーンズよりローレンス・オリヴィエの演技力が勝り、ジョージの映画になってしまったからでは、と思った。

当初その当時の現代的女性が描かれるはずが、次第に『レ・ミゼラブル』のような引きずるほどの悲しい映画になってしまったのではないだろうか。

ローレンス・オリヴィエはシェイクスピア俳優。ゆえにシェイクスピア的生きるべきか死ぬべきかの原罪的重々しいオーラがどうしても入ってしまうのだろう。

ローレンス・オリヴィエの役への入り込みが凄くて、これが演技だとはとても思えない。正にこの役の人生を生きてしまっている。

キャリー役は、代替可能。しかしジョージはローレンス・オリヴィエでなければならない。

シェイクスピア劇だとセリフが主役だが、このジョージは違う。ジョージという、人間そのものの化身が主役。

 

原作は小説『シスター・キャリー』。Wikipediaであらすじを読むと、この題は『キャリー』でいい。しかし、映画の題は『キャリー』ではなく、正にジョージの、又は二人の関係の、又は夢や恋や愛といった実は幻想の、『黄昏』。原作ではガス自殺したジョージを、映画では死なせなかった。ローレンス・オリヴィエの演技力が、ジョージに生命力を与え過ぎ、死なせられなかったのだろう。

あそこで死なせてはならないのだ。ジョージには、どうにかなんとか復活してほしい。たとえ、彼女と生きるために社長の金1万ドルを盗って逃げたために人生が詰み、指名手配されていたがために就職口がなく、それを生活力のない年寄り、とキャリーが見下してきたと思い込んでプライドが傷付き心も転落、光を失ってそれでも死ねずに当のキャリーに物乞いするところまで落ちたのだとしても。

これを観た観客は、ジョージを内蔵し、ジョージのその後を生きることになる。

それは、キラキラの幻想や虚飾を全部はぎ取ってからのスタート。

実はジョージがキリスト的代替犠牲者。

その後は、ゼロからの、本当の大人のスタートだ。

 

ウィリアム・ワイラー監督作品は、人生が滴り落ちると思った。ウィリアム・ワイラー - Wikipedia

William Wyler | About William Wyler | American Masters | PBS

Depth of Vision: The Grounded Cinema of William Wyler | The Current ...

ウィリアム・ワイラー

carrie-poster | Cine-Retro Film Society

 

★『シスター・キャリー』(Sister Carrie)は、1900年に発表されたセオドア・ドライサー

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のデビュー作である。当時の大都会シカゴニューヨークと、そうした大都会と共振する若い女性の姿をあざやかに描いた[1]

あらすじ

アメリカ中西部の田舎で育った「洗練されていない、自然のまま」の少女キャリー・ミーバーは、都会にあこがれ、姉夫婦をたよってシカゴへやって来る[2][3]。美しく、「快楽への渇望」が生来強いキャリーは、次第に華やかな都会生活の魅力にとりつかれていく[2]。セールスマンのチャールズ・ドルーエの愛人となり、同棲していたが、妻子持ちの一流バーの支配人G・W・ハーストウッドと親しくなって、ニューヨークへ駆落ちする[4]。キャリーはニューヨークで花形女優として成功する。一方、ハーストウッドは、事業に失敗して没落してゆき、キャリーとの溝は深まり、労働争議に巻き込まれ、キャリーにも捨てられ、ガス自殺する[4]

評価

発表当時は内容が不道徳だとみなされ、ドライサーは出版社を見つけるのに苦労し、約1000部発行されたが、500部も売れなかった[4]

初期アメリカ自然主義文学の傑作であると評価されており、都市小説の先駆となった[2][4]。アメリカ文学者の平石貴樹は、「単なる自然主義小説ではなく、『気分』と『感覚』にしたがって生きる現代人を描いた点で、二〇世紀小説の起源の一つと考えられる。」と述べている[5]。★

 

 

 

★Wikipediaより★

黄昏』(たそがれ、Carrie)は、1952年アメリカ合衆国ドラマ映画。監督はウィリアム・ワイラー、出演はローレンス・オリヴィエ

ローレンス・オリヴィエ

ジェニファー・ジョーンズなど。

ジェニファー・ジョーンズ

セオドア・ドライサー1900年の小説『シスター・キャリー』を原作とし、オペラ椿姫」をモチーフにしている。

日本では「1951年の映画」として紹介されることもある[1]が、一般公開されたのは1952年である(製作期間は1950年8月から同年11月[2])。

ストーリー

田舎娘キャリー・ミーバーは姉夫婦をたよってシカゴにやって来るが、働いていた工場で怪我をしたためにクビになってしまう。路頭に迷ったキャリーはシカゴに来る際の汽車で知り合った調子のいい男チャーリー・ドルーエを頼って会いに行く。再会を喜ぶチャーリーはキャリーに金を渡し、一流レストラン「フィッツジェラルド」での食事を強引に約束させる。その夜、キャリーは渡された金をチャーリーに返すつもりでフィッツジェラルドに行くが、支配人ハーストウッドの計らいもあり、結局、チャーリーと食事を共にすることになる。チャーリーは言葉巧みにキャリーを自分の部屋に連れ込み、結局そのまま同棲に持ち込んでしまう。

同棲生活を仕方なく続けていたキャリーは近所の目が気になり、チャーリーにいつになったら結婚してくれるのかと問いつめるが、チャーリーはのらりくらりとかわすだけで、キャリーは苛立ちを募らせる。そんなある日、チャーリーはハーストウッドを友人として家に招き、仕事で家を留守にする間キャリーの相手をしてやって欲しいとハーストウッドに頼む。

金持ちの妻とハーストウッドの夫婦関係は冷え切っており、ハーストウッドは素朴なキャリーに次第に惹かれて行く。キャリーもまたハーストウッドに強く惹かれて行く。ハーストウッドは2人の関係が妻に知られると、発作的に店の金を盗んでキャリーと駆け落ちし、ニューヨークに向かう。

ハーストウッドとキャリーはニューヨークで2人だけの新生活を始めるが、盗んだ金を返さざるを得なくなったことから一文無しになる。また金を持ち逃げしたことが知られたハーストウッドはまともな仕事に就けなくなり、2人の生活は困窮を極める。

そんな中、キャリーは舞台女優になる。そしてハーストウッドを元の家族に返してやろうと、ハーストウッドに結婚した息子に会いに行くように言い、彼の留守中に姿を消す。ハーストウッドは息子に会いに行くが、嫁の上流の両親の姿に気後れし、声をかけずにニューヨークに戻る。しかし、そこにキャリーの姿はなかった。

数年後、キャリーは女優として大成功を収めていた。キャリーは、スターとなった彼女を訪ねてやって来たチャーリーの言葉で、ハーストウッドが店の金を持ち逃げしたために、もとの上流の世界には戻れないことを初めて知る。彼女はハーストウッドの行方を探すが、浮浪者にまで落ちぶれたとの目撃情報しか得ることは出来なかった。

ある夜、公演後の楽屋口でキャリーに物乞いをする浮浪者が現れる。それはまぎれもなくハーストウッドであった。身体を壊し、餓死寸前のハーストウッドは、最後の手段として、キャリーに小銭をねだりに来たのだ。

迷惑はかけないと言うハーストウッドに、「明日は服を新調しましょう!」と、事務室に前借りを頼みに行くキャリー。その間にハーストウッドはキャリーの財布からコインを1つだけ取り、立ち去った。楽屋を出る際に、ガスコンロからガスを一瞬、出してみた指先は、すでに死を決意している風だった。

キャスト

※カッコ内は日本語吹替。

出典

  1. ^ 黄昏(1951)”. KINENOTE. 2013年8月8日閲覧。
  2. ^ Carrie” (英語). CatalogAFI. 2021年12月16日閲覧。★