『少佐と少女 The Major and the Minor』1942年
ポスターのコピー「Is she a kid……or is she kidding?」の直訳は、「彼女は子ども?それとも彼女はふざけてる?」。
三日間の仮面舞踏会。大人アリス in 現実社会。
主人公スーザン・アップルゲイトは田舎からニューヨークに出て来て色々あり一年、現職は出張頭皮マッサージ師。
しかし訪ねた客にセクハラされ、堪忍袋の緒が切れた、もう限界、実家に帰る、となった。
しかし、実家に帰る時用に使わずにいたジャストの交通費では、切符が買えない。駅員に訊けば値上がりしたのだという。
実家に帰る一択しか人生の選択肢のないスーザン、後ろの子ども連れの女性を見て、そうだと気付き、子どもに見えるよう変装し、
公衆電話の返金口に指を入れ小銭を集めている男に金をやり、パパ役を頼み、12歳のふりをする。子ども料金でチケットは買え(パパ役が、子ども一人分を買う。スーザンは、近くの子どもの風船を拝借、それで顔を隠して切り抜ける)、
列車には乗れたが、今度は乗車券確認の車掌に「本当に12歳か」と疑われる。自分の家系はスウェーデン人で、この年にしては背が高い、うちはみんな背が高くて、などとその場凌ぎの嘘をつき関門突破するが、今度はデッキで喫煙しているところを見つかり、火のついた煙草を口の中に入れる(笑)。
車掌に問い詰められると、飲み込むことはできないため、今度はガーゼに包み、外に投げて関門突破。
追いかけられると、今度は客室に入り込む。
その部屋の少佐が、スーザンを12歳だと信じて疑わず、即席の保護者として色々面倒を見てくれ、
スーザンは少佐を好きになる。
少佐もスーザンの個性を愛し、二人は保護者・被保護者という仮面の下で愛し合う。
しかし少佐からしたら相手は12歳、自分には婚約者がいる。
しかしこの婚約者が、自分のために都合のいい相手を探しているという女性。この女性パメラは、少佐の上官である父の兵学校を継ぐ人を夫にしたく、少佐の希望である、転勤して国のために戦いたい、を阻止しようとする。
(左から、少佐、パメラ、(12歳の)スーザン)
(兵学校の子供たちにモテモテの(笑)(12歳の)スーザン)
(少佐はその様子に、保護者としてではなく一人の男性としてやきもき)
スーザンは、泊まることになったパメラ家の妹の力を借りて、
(パメラの妹は会って即スーザンが自分と同じ12歳ではないと見抜き、しかし味方となり、女友達になる(この妹は、姉のパメラのやり方が嫌い。スーザンを姉のように慕う))
二人は共謀してパメラの手紙の内容を逆に変えたりスーザンが電話交換手になって逆内容電報をワシントンの有力者に伝えたりして少佐の希望を通し、
少佐はこのゴタゴタで見えたパメラの正体に幻滅。
実家に帰ったスーザン。
少佐は、パメラの妹からの預かり物(オタマジャクシ(パメラの妹は、キュリー夫人のような化学者になりたい子で、自室に実験道具がある))を渡そうと訪ねる。
すると、会うとマズイと思ったスーザンは、母親に扮し(笑)、少佐に応対。
またもや少佐は全く気付かず(笑)、いい人として振る舞う。
少佐が、スーザンに会えず寂し気に彼女の実家を去ると、次のシーンで、駅で出発しようとする少佐の視界に、スーザンに似た大人の女性が立っている。
「あなたのお名前は?」と訊く少佐に、「スーザン・アップルゲイト。この辺りでよくある名前よ」と別人のふりをしたスーザンだが、少しして少佐にキスをすると、「スース―!」と列車の中で呼んでいた少女の名を少佐が呼び、抱き合ってジエンド。
テーマは「本当のわたし」かと思った。仮面を付けると、油断して本当の自分が出るのだろう。
作家が三人称で書いた方が一人称で書くより自分全開になるのも、この油断ゆえなのだろうと思った。
占いや人生相談で「友人の話」と断って自分の未来を占ってもらったり悩みを相談するのも、この流れのことなのだろうと思った。
セクハラしてきた男性客が、12歳と偽っているスーザンがいる兵学校のダンスパーティーに、生徒の父親としてやってきて、「あれ?どこかで会いましたね?」となりヤバい、となる。
この男性は、パメラに「彼女、ニューヨークの頭皮マッサージ師ですよね」と訊き、パメラに正体がバレ、スーザンは退去するのだ。
『The Major and the Minor 少佐と少女』。原題も邦題も頭韻を踏めているのが面白い。
とにかく、スーザン役のジンジャー・ロジャースの声も動きも含めた三変化ぶり(本人スーザン・12歳のスース―・スースーの母)が凄い。ジンジャー・ロジャース - Wikipedia
『王様と私』や『サウンド・オブ・ミュージック』っぽい健全な音楽とダンスシーンが心地よかった。
兵学校のダンスパーティーに来た女の子たちが、揃いも揃って『奥様は魔女』でブレイクしたヴェロニカ・レイクの鬼太郎的半顔隠しへアだったのが興味深かった(登場人物が「ヴェロニカ・レイクを気取っているのさ」と発言)。聖子ちゃんヘアのようなノリかと思った。
映画冒頭に、「1626年にオランダ人が先住民からニューヨークを買い、1941年5月現在、先住民の誰もそれが間違いだったとは思っていない」という内容のテロップが出てどういうことだと思ったが、Wikipediaの注釈のこのこと↓かと思った。
★^ 撮影当時は第二次世界大戦中であり、当作は移民であるワイルダーのアメリカ初作品であることから、🔶政府の政策を支持していることを態度表明している🔶(NHKカルチャーラジオ『芸術とその魅力』「娯楽映画の巨匠 ビリー・ワイルダーの魅力」瀬川裕司、2014,10,8放送)★
★Wikipediaより★
『少佐と少女』(しょうさとしょうじょ、The Major and the Minor)は、1942年のアメリカ合衆国のコメディ映画。ビリー・ワイルダーのアメリカでの初監督作品で、出演はジンジャー・ロジャースとレイ・ミランドなど。エドワード・チャイルズ・カーペンター(英語版)の1923年の戯曲『Connie Goes Home』を原作としている。日本では劇場未公開。
ストーリー
スーザンはニューヨークで頭皮マッサージ師として生活をしていたのだが客からセクハラを受けて都会生活に失望し、仕事を辞めて故郷へ帰ることにする。しかし、わずかな貯金を使って帰りの列車の切符を買おうとするも料金が値上がりしていた。そこで彼女は12歳の少女・スースーに変装し[注 1]、料金を半額で済まそうとする。しかし、列車に乗り込んだまではよかったものの、あえなく車掌に正体を見破られてしまう。スーザンはとっさに列車の個室に逃げ込むのだが、そこで一人の陸軍少佐と出会う。少佐はスーザンが少女であると信じて匿うが、途中で少佐の婚約者パメラに見つかる。
可哀想な身の上の少女だと信じたパメラはスーザンを自宅に泊めるが、パメラの妹ルーシーはスーザンが大人であることを見破り、秘密を共有することでルーシーとスーザンは仲良くなる。周囲の男子学生の注目を集めるスーザンを見て少佐もスーザンが気になりはじめ、スーザンも少佐に心ときめかす。ルーシーから、少佐は戦地に行きたがっているが、パメラの反対で士官学校に留まっていることを知ったスーザンは、パメラになりすまして上官に電話をし、従軍を希望していることを伝える[注 2]。
スーザンは自宅に戻り、母と暮らしはじめる。ある日、少佐から、従軍の途中に妹からのプレゼントを届けたいから立ち寄っていいか、という電話を受け、スーザンは母親に化けてそれを受け取るが、少佐がパメラと別れたことを知り、本当の自分に戻って少佐のもとに駆け付ける。大人であることを知った少佐はスーザンと口付けを交わす。
キャスト
- スーザン・アップルゲイト: ジンジャー・ロジャース
- フィリップ・カービー陸軍少佐: レイ・ミランド
- パメラ・ヒル: リタ・ジョンソン(英語版) - フィリップの婚約者。
- ルーシー・ヒル: ダイアナ・リン(英語版) - パメラの妹。
- オリヴァー・スレイター・ヒル大佐: エドワード・フィールディング(英語版)
- アルバート・オズボーン: ロバート・ベンチリー(英語版)
脚注
注釈
- ^ スーザン役のジンジャー・ロジャースは撮影当時31歳である。
- ^ 撮影当時は第二次世界大戦中であり、当作は移民であるワイルダーのアメリカ初作品であることから、政府の政策を支持していることを態度表明している(NHKカルチャーラジオ『芸術とその魅力』「娯楽映画の巨匠 ビリー・ワイルダーの魅力」瀬川裕司、2014,10,8放送)★