『スワンプ・ウォーター Swanp Water』1941年
タイトルにあるSwanpとは沼という意味。
無実の罪を着せられ、逃亡潜伏した男の娘に恋することになった青年が、その娘の父の無実を証明し、社会復帰させ、娘と(多分)結婚、その父と家族になる話。
行ったら生きては帰れないと言われ恐れられている沼地(スワンプ・ウォーター)。
毒蛇やワニや豹がいる。
保安官と住民は、行方をくらまし指名手配されている殺人容疑者を捜索(ワナをかけにいった人が、潜伏している容疑者に殺された、となって総出)。(手前が主人公青年とその父)
主人公の飼い犬トラブルが逃げ、トラブルを捜しているうちに、主人公青年ベンは、潜伏している容疑者に会う(潜伏している容疑者が、獲物のためのワナをかけに行った人を殺したということになっていた。事実は、その人は毒蛇に噛まれ、死亡(この辺りの人はキツネ狩りをしたりしている))。
殺人容疑者、トム・キーファーとベン。
ベンは、自分を捕まえに来たと思ったトムに捕まるが、トムが毒蛇に噛まれ、死んだと思って埋葬しようとするとトムは死んでいず(笑)、二人は互いを信用し、友人同士に。トムは自分には娘がいて、その娘のことだけが気がかりだ、とベンに言う。この二人は相棒となり、トムが狩ったカワウソの毛皮をベンが店で売ると、大金が得られた。ベンは独り立ちするために貯金。
トムの娘ジュリーは、名字を変え、町でほとんど一つしかないなんでも屋のような店の奧に保護されるような形で住んでいた。
ベンは父とよくある親子喧嘩をし(母は他界、若い義母がいる)、家を出て、この店の納屋で一人暮らしを始め、ここに、トムの娘ジュリーが来るようになる。この娘は対人恐怖症のような感じ。裸足で歩き、言葉少な。この娘ジュリーは、捨てられそうになっている仔猫を守ろうとし、それを助けてくれたベンに心を開く。ベンは、トムに言われた通りにお小遣いをジュリーにあげようとするが、ジュリーは「お金を持ったことがない」と拒否。ベンが代わりに貯金する。
ベンには、美人だが、この辺りで独身の若い女性が自分しかいず、ゆえにモテモテであるため高慢なガールフレンドがいた。このメイベルは店の奧に保護されていたジュリーの出現をよく思わず、ゆえにベンに聞いた、トムが湿地に潜伏しているという秘密をバラしてしまうことになる。
ダンスパーティーの日。
ベンがしばしば湿地のトムを訪ねるため待ちきれずに他の男とダンスを踊る約束をしたメイベル。ベンはジュリーに店で買ったドレスを着せ、ダンスを踊る。するとメイベルが激しく対抗心を燃やし、店でウエイトレスの仕事を始め、トムが湿地にいるという秘密を客の前でバラす。この辺りからメイベルのあくどさあざとさが全開、ベンのメイベルへの気持ちは冷め、無垢なジュリーを愛するようになる。
この町にはヤバい二人兄弟がいて、実は二人が殺人の真犯人。もう一人の弱気男のグルと三人でトムの殺人を目撃したと保安官に偽証、トムが殺人犯に仕立てられた。ベンがこのことに気づいたのは、この三人目の、兄弟ではない一人が、若い義母に言い寄り、ギターを置き忘れていってそれをベンが届け(義母に近寄るなという案件で行った)、部屋にあったトムの懸賞金のポスターを見てピンと来て色々繋がったからだった。
義母は、この人物の名を夫に言わない。なぜかと言うと、言うとヤバい兄弟が夫に近づきヤバいことになりそうだから。とにかくこの兄弟は、表向きは町のためというふうに装っているため、面倒でヤバい。
ベンが真相を知ったと分かった兄弟は、ベンを密かに尾行。ベンが湿地に舟で入り、トムと一緒に出ようとしたところを、
銃で撃ってきた。トムは、ベンが本当に仲間なのか、自分を連れ出して懸賞金をもらおうとしているのではと測りかねている。ゆえに「立ち上がってみろ、それで向こうが撃ってきたら、お前は向こうとグルじゃない」。
ベンが立ち上がると撃たれ(命懸けの、味方証明・笑。しかし無傷)、トムは「疑って悪かった」となって信用。そこからは、勝手知ったるトムの案内で、敵二人を撒き、一人を底なし沼に埋め(死去)、もう一人↓は湿地に解放(この一人は、湿地で潜伏するか他の土地に行く以外ない。三人目が、保安官に兄弟の差し金で偽証したことを告白しているため、町には戻れない)。
良かったここでバンザイかと思うとそうではなく、長年自室で引きこもった人が外の世界を怖がるように、トムも「俺はやっぱりここが合っている。ここが俺の世界だ。あの男(解放した兄弟の一人)を監視しながらここで死ぬまで生きていく」と留まろうとするのだ。
ここで、「トムはここに留まり、それからベンとも娘とも会う事はありませんでした、終わり」だったらどうしようと思うも、娘を乗せた迎えの舟が来ていて、
トムは娘を見て、ここから出る決心がついたのだった。
ベンの父とその妻の間の誤解も解け、ベンと父も仲直り、ベンとジュリーはダンス、トムはベンの飼い犬トラブルを撫でて楽し気、でハッピーエンド。込み入っていたものが快刀乱麻を断つとなる、非常に好きな映画だった。
★スワンプ・ウォーター : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
解説
1993年で生誕100年を迎えたジャン・ルノワールが第二次大戦中にパリを逃れ、アメリカに渡って撮った第一作目で、南部の沼地にある一つの村で起こった一つの事件をもとに村の人々の間で生じる出来事を描いた群像劇。監督のジャン・ルノワールは、無声映画時代から映画を撮り始め、戦前は、フランスで『牝犬』「大いなる幻影」「ゲームの規則」など多くの傑作を残し、戦後再びフランスに帰還するまで、ハリウッドで映画を撮り続け、「南部の人」「浜辺の女」など、様々な作風の作品を残した。製作は、アーヴィング・ピチェル。脚本は、「駅馬車(1939)」のダドリー・ニコルズがヴェリーン・ペルの短編小説をもとにして書き上げた。撮影は、ペヴァレル・マーレーとルシアン・バラード、編集は、ウォルター・トンプソン、音楽は、デイヴィッド・ルドルフが担当している。主演は、「西部の男」で映画デビューし、「ローラ殺人事件」などに出演していて演技に定評があるダナ・アンドリュース、
「イヴの総て」のアン・バクスター。
その他、「西部の男」「死刑執行人もまた死す」「リオ・ブラボー」など硬軟問わずあらゆる役柄をこなす個性派男優ウォルター・ブレナン、
「孔雀夫人(1936)」「黄金(1948)」「マルタの鷹(1941)」のウォルター・ヒューストン、
「果てなき航路」のワード・ボンド
など名優が揃っている。
1941年製作/アメリカ
原題:Swanp Water
配給:ウィズダム
劇場公開日:1994年10月26日
ストーリー
ジョージア州の広大な沼地はしばしば冒険家や狩猟家をおびき寄せ、その多くの人々を二度と帰さないような場所であった。ベン・ウィック(ダナ・アンドリューズ)は、父のサーズデイ(ウォルター・ヒューストン)の警告と婚約者のメイベル(ヴァージニア・ギルモア)の懇願をふりきって自分の愛犬トラブルが迷い込んでしまったその恐ろしい沼地に入って行き、そこで殺人容疑をかけられ、長いこと行方不明になっていたトム・キーファー(ウォルター・ブレナン)に出会う。ベンは、トムの話を聞いているうちに彼が無罪であることを信じるようになり、ベンと同じ村に残されたトムのひとり娘ジュリー(アン・バクスター)の面倒を見ることを約束する。村に帰り、父と口論になったベンは、ひとり暮らしを始め、しばしば沼地に出かけていき、沼地を熟知しているトムのガイドのもとたくさんの獲物を捕らえお金を蓄えていった。そんなある日、長いこと村を離れているベンに焼き餅を焼かせようとメイベルは舞踏会に他の相手を誘うが、ベンはジュリーを誘うことにする。ベンはジュリーの美しさを初めて知り、愛の言葉を告白する。メイベルは、腹を立て、ベンが沼地に誰かを匿っているようだと村人たちに告白してしまい、ベンはみんなのリンチにかかり、通りかかった父に助けられる。ベンは、村人たちがトムを見つけ、死刑にしてはならないと、真犯人を探し出す。真犯人は、村の暴れ者ドーソン兄弟であった。ベンは村の人々にそのことを告げ、トムを迎えに沼地に再び入っていくが、先回りしていたドーソン兄弟に追跡され、トムの知恵で2人を永久に沼地に残し、ベンとトムは、ジュリーの待つ村の方に帰っていった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジャン・ルノワール
- 脚本
- ダドリー・ニコルズ
- 製作
- アービング・ピシェル
- 撮影
- J・ペバレル・マーレイ
- 美術
- リチャード・デイ
- ジョセフ・C・ライト
- 音楽
- デイヴィッド・ルドルフ
- 編集
- ウォルター・トンプソン
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