『レディ・イヴ The Lady Eve』1941年
女詐欺師が、一人二役を演じ、二回とも同じ男をメロメロにし、一人の女の方が彼と結婚、一人の女は彼の最高の女になったという、運命の、力が互角でどうしても釣り合ってしまう一組の男女の話。
豪華客船の上で出会った男女。男は有名エール(ビール)会社の御曹司、女はイカサマ賭博師親子の娘。
家業の醸造業に興味がなくヘビの専門家になってアマゾンに一年いた御曹司チャールズ・パイク。
南米発アメリカ着の豪華客船の女性客があの手この手で御曹司の気を引こうとするなか、美しきジーン・ハリントンは、世間知らずのお坊ちゃまチャールズの足を引っかけ、転ばせ、自分に謝らせるという新規ルートで顧客獲得。バーバラ・スタインウィックがハマり役。その前の前くらいは、ただ待っている以外に女は男にアプローチできなかったのだろう。その待ちゲーに業を煮やした女陣営(笑)が、様々なアプローチの技を開発(笑)。しかし、この映画の時代には、それらが「見え透いた古い釣り方法」になり、魚(男)も食いつきたくもなくなっていたのだろう(例えば、媚びの後にツンデレが開発されたような、アプローチ市場の話)。御曹司チャールズ・パイクは超有名人、セレブ。女たちは、目をパチパチ瞬きしたり、わざと目の前を通りわざとハンカチを落としたり、大きな胸を更に強調するようなドレスで目の前を歩いたり、そっぽを向き煙草を吸って(あなたになんか興味ないわよ)と悪女ぶったり、思わせぶりに品を作ったりする。そんな女陣営のトラップには耐性ができ過ぎ、男には退屈という時代だったのだろう。そんな中、逆に手荒に扱うことにより、相手に新鮮感を与えるという戦法(笑)。
世間知らずのおぼっちゃまのチャールズは、ただ単にヘビに関する本を読むことに夢中でそのような誘惑に気づかず、ショック療法のごときジーンの足引っ掻けの罠の餌食に。
雷ビームを与える戦法のラムちゃんを想起。
チャールズの部屋に行くと蛇がいて、キャー!とジーンは自分の部屋へ。追いかけてくるチャールズ。そして自分が引っかかった際に脱げた靴の代わりを履かせる。
一年間アマゾンにいたチャールズは、モダンな雰囲気のジーンの術中にまんまとハマり、即陥落、ジーンの虜になる。
石油王の大佐と名乗るイカサマ賭博師と、その娘のジーン、チャールズ。
父親はチャールズから金を巻き上げたいが、本気で恋をしたジーンはチャールズを守る。そんな娘を見て、父はその小切手を破り握り潰す(しかしこの小切手には細工がしてあり、破られてはいず、後で父が復活させる)。
チャールズの従者マグシーが父娘の正体を掴み、船長から手に入れたジーンたちの手配写真をチャールズに見せたところ、チャールズはジーンから去る。
侮辱されたことに激怒したジーンは、
コネティカット州の富裕層を詐欺にかけてきた別の詐欺師、アルフレッド・マグレナン・キースの姪である上品なレディ・イブ・シドウィッチになりすまし、チャールズに再度接近する。
「同一人物だ」と言う従者のマグシーに、「同一人物にしては似過ぎている」とチャールズ。ここが面白かった。チャールズ曰く、「同一人物ならば、髪を染めるとか髪型を思いっきり変えるとか、もっと別人を装うだろう。それに彼女、初対面ということを強調しなかった。」この理屈・論理に、チャールズの、御曹司ゆえに帝王学を自然に内蔵してしまっているような育ちの良さ、風格を感じた(しかしそれを軽く上回ってくる、ジーンのインチキ賭博師の血筋のしたたかさということなのだが(堂々と一人二役のイカサマをやってのけるのだから))。帝王学 - Wikipedia
このレディ・イヴは、イギリスから来たことになっているのだが、「船が営業できない(戦争が始まった為かと思った)のにどうやって?」と客の一人が言うと、「潜水艦で来たらしいわよ」。ここは笑うところなのだろう(笑)。イギリス英語を喋るイヴは、船上のジーンにはなかった気品が溢れている。
★(Wikipediaより引用)
ジーンはイギリス英語を操りつつ、チャールズを容赦なく苦しめることにする。彼女の言葉を借りれば、「私には彼に関してやり残した仕事がある。斧が七面鳥を必要とするように、私には彼が必要なのだ」ということである。★
男女の仲とはこのように、恐ろしい刃傷沙汰の食うか食われるかの命懸けのサバイバル(つまり同期シンクロ愛)なのだ。
一緒に来たアルフレッド「卿」が、「レディ・イヴはジーンの生き別れた妹である」と口を挟ませずに強引な作り話をすると、チャールズは納得する。
そしてまた術中にハマり、虜になるチャールズ。
(自分の運命の女に毒林檎をかじらされた男)
そして二人は結婚(偽名でなぜ結婚できるのかという観客の疑問には、「女性は姓が変わったりするから大丈夫(=甘い)なのさ」というセリフが牽制球として言われる)。
新婚旅行の列車の車中。幸福の絶頂のイヴは、酒に酔ったかのように饒舌に。そして過去のボーイフレンドの名を次々と口にする。嫉妬で嫌気がさしたチャールズは、列車から飛び降りる。
★(Wikipediaより引用)
ジーンの詐欺チームは巨額の和解金を要求して離婚を成立させるよう彼女に促すが、ジーンはチャールズの父親に対して、自分は和解金は要らないが、チャールズから直接、結婚生活が終わったということを聞きたい、と電話で言う。チャールズはそれを拒否する。その後、ジーンはチャールズの父親から、チャールズがまた客船での旅に出ることを知らされる。彼女は自分と父親のために乗船券を手配し、以前と同じ様に、前を通り過ぎるチャールズをつまずかせてチャールズに再会する。チャールズはジーンに再会して大喜びである。彼は彼女にキスして手を取り、彼女の船室に行き、そこでお互いへの愛を確認する。船室の扉が閉まると、チャールズは自分が結婚していることを告白する。ジーンは「私もなのよ、ダーリン」と答える。★
イヴに失望したチャールズは、船上でジーンに再会して「やっぱりきみが一番」となる。
男は女が一人二役と気づかぬまま、ジエンド。女一人で、引き立て役と引き立てられ役をやってのけたという話。
ユニコーンの、離れられない「おかしな2人」を想起
又はミポリンの、「50/50」
媚びも言い訳も負け惜しみも泣き落としも思わせぶりも有言不実行もなく強かに、自他への愛を貫きサバイバルするジーン(=レディ・イヴ)が潔く現代的だった。
父親役がチャールズ・コバーンであるということで、この二人は愛のある親子、と思える。
(アダムと)イヴ、林檎、蛇、というイメージが、性と神聖の象徴(失楽園のメタファー(暗喩))として機能。
★Wikipediaより ★
『レディ・イヴ』(原題:The Lady Eve)は、1941年制作のアメリカ映画、スクリューボール・コメディ映画。脚本・監督はプレストン・スタージェス。主演はバーバラ・スタンウィック、ヘンリー・フォンダ。日本でのテレビ放送、およびビデオタイトルは『淑女になったイブ』。
1941年のニューヨーク・タイムズの年間映画ベスト10では、『市民ケーン』を押さえて第1位に選ばれた。1994年、アメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
あらすじ
ジーン・ハリントンは美しい詐欺師である。彼女は同じく詐欺師である父親、ハリントン「大佐」とその仲間のジェラルドとともに、パイクス・ペイル社(「イェール大学のために勝ったエール」がキャッチフレーズ)の資産の後継者である、金持ちで世間知らずのチャールズ・パイクを騙すために客船に乗っている。チャールズは女性に晩生のヘビの専門家で、1年間にわたるアマゾン川上流域での調査から同じ船で帰って来るところだ。船上の若い女性たちはチャールズの注意を引こうと競い合うが、チャールズはヘビに関する本を読むことに夢中だ。
ジーンは自分の前を通ったチャールズをつまずかせて転ばせると、彼はすぐに彼女に夢中になる。チャールズが船室に持ち込んで籠から逃げ出した本物のヘビに怯えてジーンが逃げ出した後、2人は彼女の船室で「お熱い」間柄になる。チャールズの世話係であるマグシーは、ジーンがチャールズから物を盗もうとしている詐欺師ではないかと疑うが、チャールズは彼の言うことに耳を貸さない。その後、チャールズを詐欺にかけようと目論んでいたにも拘わらず、ジーンはチャールズと恋に落ち、カードゲームでチャールズを嵌めようとする彼女の父親からチャールズを守る。マグシーは父娘の正体を掴み、船長から手に入れたジーンたちの手配写真をチャールズに見せたところ、チャールズはジーンから去る。
侮辱されたことに激怒したジーンは、コネティカット州の富裕層を詐欺にかけてきた別の詐欺師、アルフレッド・マグレナン・キースの姪である上品なレディ・イブ・シドウィッチになりすまし、チャールズに再度接近する。ジーンはイギリス英語を操りつつ、チャールズを容赦なく苦しめることにする。彼女の言葉を借りれば、「私には彼に関してやり残した仕事がある。斧が七面鳥を必要とするように、私には彼が必要なのだ」ということである。
チャールズは「レディ・イブ」に出会ったとき、彼女がジーンに似ていることに非常に驚き、何度もつまずいて転んでしまう。マグシーは「彼女はあの時の女性だ」と言い聞かせるが、チャールズはジーンがチャールズに近付いて来るなら、もっと徹底的に変装して来る筈ではないか考える。そして、アルフレッド卿が、レディ・イヴはジーンの生き別れた妹であると話すと、チャールズは納得する。チャールズによる求愛の後、2人はジーンの予定通りに結婚する。そして彼女の計画通り、新婚旅行先に向かう列車の中で、「イブ」は自分の過去を告白し始め、多くの昔のボーイフレンドや恋人の名前を次々と口にする。嫌気が差したチャールズは列車から飛び降りる。
ジーンの詐欺チームは巨額の和解金を要求して離婚を成立させるよう彼女に促すが、ジーンはチャールズの父親に対して、自分は和解金は要らないが、チャールズから直接、結婚生活が終わったということを聞きたい、と電話で言う。チャールズはそれを拒否する。その後、ジーンはチャールズの父親から、チャールズがまた客船での旅に出ることを知らされる。彼女は自分と父親のために乗船券を手配し、以前と同じ様に、前を通り過ぎるチャールズをつまずかせてチャールズに再会する。チャールズはジーンに再会して大喜びである。彼は彼女にキスして手を取り、彼女の船室に行き、そこでお互いへの愛を確認する。船室の扉が閉まると、チャールズは自分が結婚していることを告白する。ジーンは「私もなのよ、ダーリン」と答える。
キャスト
- ジーン・ハリントン/レディ・イヴ:バーバラ・スタンウィック
- チャーリー・パイク:ヘンリー・フォンダ
- マグジー:ウィリアム・デマレスト
- ハリントン“大佐”:チャールズ・コバーン
- ユージン・ポーレット
- ジャネット・ビーチャー
- エリック・ブロア
- ロバート・ワーウィック★