『リディアと四人の恋人 Rydia』1941年
ボストンの深窓令嬢の、ある意味イタイ話。言い換えると、人生勉強長かった......話。
社会福祉活動で国から表彰された独身のリディアの元に、40年前の三人の元恋人がお祝いに集結。過去を回想。懐かしい、となっていると、四人目の、最も激しく愛し合ったはずの船乗りの男が、三人の元恋人の招待でやって来る。彼は行方不明になり、手紙で「他の女性を好きになった」と送ってよこしたのを最後に姿を見せず、リディアは彼を思い、他の男性の求婚には応じなかったのだった。
しかし現れた船乗りは、リディアが誰か分からない。記憶喪失ではない。彼にとってリディアは、数多いる港の女の一人に過ぎなかったのだ。救いは、三人の内、結婚式寸前までいっていた医師のマイケルが、失意のリディアに再求婚すること。このマイケルは、富豪のリディアの一家の誠実な使用人の息子。この使用人であるマイケルの父が、一番人間らしく、信用でき、虚飾がなく、素敵。この人がいなければ、造花しかない植物園のようで、誰も酸素を生み出さない感じだった。
マイケルとリディア。マイケルはリディアが90歳でも求婚し続けると言っていたから、リディアの本質を愛していたのだろう。
常に賞賛されモテモテの、若い頃のリディア。
贅を貪る一家に生まれた美貌で浮ついたリディアが、唯一出来た地に足のついた活動が、目の見えない子たちの施設を作ったことだった。恋人の船出を見送った際に知り合ったこの男の子が、心の情景を口にするのに感動したリディアがこの子の貧しい家に行くと、邪魔者扱いされる。リディアは、「自己満足よ」と言いつつ、施設を作って目の不自由な子たちに恋人の盲目のピアニストの演奏を聞かせ、「頭の中に絵本を描く」のだ。この施設でのリディアが、一番美しかった。
この福祉活動がリディアの人生の柱となり、ずっと自分を思ってくれていた医師のマイケルと、一緒になる、という話。
リディアの祖母は、この家にずっと仕えているマイケルの父を信用している。
一番近くの大事なものに気づくのに、地球を一周してしまいました、という話。
時間とお金がたっぷりある状況だから、リディアはこんな大冒険が出来たのだろう。
（彼女の生涯に唯いちど愛したそのひとは？名匠デュヴィヴィエの描く女ごころの秘密！）
（虚しき恋に青春を捧げた女性の悲劇）
リディアを演じたマール・オベロンが、蘭の花のようで美しかった。
(「嵐が丘」ローレンス・オリヴィエと)
『リディアと四人の恋人 Rydia』の舞台、ボストン。ボストン - Wikipedia
ボストン美術館。
