『偽りの花園 The Little Foxes』1941年
「風と共に去りぬ」のような舞台(20世紀初頭のアメリカ南部の富豪の屋敷)での、ベティ・デイヴィス演じるレジーナとその兄弟の欲の駆け引き。
レジーナは、欲しい物が得られないため孤独だった。これはレジーナの述懐。孤独の理由が、物欲の報われなさ。
実家で、兄と弟は親の遺産を貰えたのに、自分は貰えなかった。そこがレジーナの人生ゲームのスタート。
ゆえに、レジーナはとにかく金に執着。夫に対しても、「ただの、町の一銀行員で終わってしまった人」という評価。その夫が今、余命いくばくもない。
レジーナは兄弟と綿花関係の事業提携・拡大をしようとしている。レジーナは兄弟とつるみ、夫は疎外。
(左から、夫、レジーナ、レジーナの兄弟二人)
夫は妻レジーナに見切りをつけている。娘はまだ世間知らず。父にも母にも優しい。
(左から、夫、娘、レジーナ)
レジーナの兄弟そしてその息子の銀行員は、レジーナと事業提携をして大金持ちになろうとしている。しかし初期資金が足りない。銀行員の男はレジーナの夫の鉄道の債権を勝手に金庫から出し、7万5千ドル分を使った。
この事業のことで入院中の病院から呼ばれて屋敷に戻ってきたレジーナの夫は、遺書を書き変えようと銀行に行き金庫を出し、自分の鉄道の債権が盗まれていることに気付く。
レジーナの夫は欲深なレジーナを詰る。するとレジーナは、発作の起こった夫が持ってきてくれと言う鎮痛剤を、二階から持ってこない。階段を這いずって二階に行こうとする夫。その夫が気絶したところで、レジーナはやっと「大変!」と騒ぐ。
夫は意識を失い、娘の手を握ったあとで死去。
夫の死から五分も経たないうちに兄弟と金の話で言い合う母親(レジーナは、夫の鉄道債券の代わりに新会社の株の75%を貰うと言う。それに反対する兄弟。レジーナは、あなたたちは犯罪者なのよ?と、債券盗みを公にしないことを盾に、兄弟と取引。)を見た娘は、やっと母の正体に気づく。
夫の死体のある部屋で寝たくないから「一緒に寝ましょう」と言うレジーナに、「わたし、お母さんから離れる」。
娘だけは自分の味方と思っていたレジーは愕然。
二階の窓から外を見ると、娘が、レジーナが交際を反対していた仕立て屋の息子と手に手を取り、雨の夜のなかどこかへ走っていくのだった、でジエンド。
レジーナも兄弟も、兄弟の息子とレジーナの娘を結婚させたかった。するとファミリー企業として安泰なため。
しかしレジーナの娘は、かねてから、へんてこで愛のある、仕立て屋の息子のことが好きだった。
仕立て屋の息子は、ジャーナリスト気質。「僕には全部見えてるけど、言っちゃったらきみの心の成長にはならない」と、彼女の母親とその兄弟と息子の金の亡者ぶりを言わない。娘はその青年に見守られながら、父の死を見つめ、母親の正体に気づいていくのだった、という話。
レジーナから見ると、頂点寸前で破滅した話。レジーナの娘から見ると、母からの卒業話。
原題の直訳は、「子狐たち」。
レジーナとその兄弟・息子を、聖書に出てくる「葡萄を食い荒らす狐たち」に例えたもの。
映画では、「低賃金労働が南部の商品」という話も出て来るし、娘が「自然を食い荒らす人、それを傍観する人」と母親を非難もするから、この葡萄とは、人権及び共有財産のことを指しているのでは、と思った。
「偽りの花園」という邦題は、主役のレジーナ一人に焦点を当てた表現なのでは、と思った。
「風と共に去りぬ」でも思ったが、南部の屋敷内での白人と黒人の関係は、うっとりするほど親密で、優しくアットホーム。
しかしそれも、恵まれた職場(黒人使用人を家族のように扱う屋敷)ゆえのことなのだろう。
実際は違うから、こんな理想を映画作品に密封したのかもしれない。
着飾れば着飾るほど、エゴと冷血さが剥き出しになる、レジーナ。
娘役のテレサ・ライトの、子供から女性への遷移表現が上手かった。
★Wikipediaより ★
『偽りの花園』(いつわりのはなぞの、原題:The Little Foxes)は、1941年に製作・公開されたウィリアム・ワイラー監督作
のアメリカ映画である。
1939年初演のリリアン・ヘルマン作
の戯曲『子狐たち』の映画化であるが、
初演ではタルラー・バンクヘッドが主演した。
概要
20世紀初頭のアメリカ南部を舞台に、富豪夫人レジーナ・ギデンズ(ベティ・デイヴィス)と病弱な夫ホレース(ハーバート・マーシャル)の葛藤を通して、人間の欲望と真実を描く。
キャスト
- レジーナ・ギデンズ:ベティ・デイヴィス
- ホレース・ギデンズ:ハーバート・マーシャル
- アレクサンドラ・ギデンズ:テレサ・ライト- ギデンズ夫妻の娘。
- デヴィッド・ヒューイット:リチャード・カールソン - アレクサンドラに好意を寄せる。
- レオ・ハバード:ダン・デュリエ - レジーナの甥。
- バーディ・ハバード:パトリシア・コリンジ - レオの母。
- ベン・ハバード:チャールズ・ディングル - レジーナの兄。
- オスカー・ハバード:カール・ベントン・リード - レジーナの兄・レオの父。
スタッフ
- 監督:ウィリアム・ワイラー
- 製作:サミュエル・ゴールドウィン
- 脚本:リリアン・ヘルマン
- 音楽:メレディス・ウィルソン
- 撮影:グレッグ・トーランド
- 編集:ダニエル・マンデル
- 美術:スティーブン・グーソン
- 衣装:オリー=ケリー
アカデミー賞ノミネーション
- アカデミー作品賞
- アカデミー監督賞:ウィリアム・ワイラー
- アカデミー主演女優賞:ベティ・デイヴィス
- アカデミー助演女優賞:テレサ・ライト、パトリシア・コリンジ
- アカデミー脚色賞:リリアン・ヘルマン
- アカデミー劇・喜劇映画音楽賞:メレディス・ウィルソン
- アカデミー編集賞:ダニエル・マンデル
- アカデミー美術監督賞 (白黒部門):スティーブン・グーソン、ハワード・ブリストル★