『二重生活 A Double Life』1947年
嫉妬で妻のデズデモーナを絞殺して自刃するオセロを二年演じていた役者が、脳内がオセロになり、妻と知り合いの関係に嫉妬して狂い、脳外の、デズデモーナに見立てたウェイトレスをキスで窒息死させ、舞台の自刃シーンで本物のナイフで自刃する話。
離婚したが友人同士として愛し合っている男女、トニーとブリタ。二人は共に役者で、『オセロ』で夫婦のオセロとデズデモーナを演じることになった。
トニーはブリタと再婚したいが、ブリタはそれにはやんわり反対(ブリタは、トニーが役に入ると役そのものになってしまうところに付いていけない。緊張が解けない生活が嫌。公私の区別のなさが嫌。)。
トニーは、オセロの役作りを始める。(二人は同居しているらしい。)
そんな中、トニーはオセロの舞台であるヴェニスの名の付くカフェ(イタリア人街)に引き付けられるように初めて入り、人脈の欲しい若いウェイトレスに接近され、
個人情報を渡される。
二人は付き合い始める。
一方、劇場広報のビルは、意中のブリタに接近。
脳内がすっかりオセロに出来上がっているトニーは、
ブリタとビルの仲を疑い始め、上演中にブリタを本気で絞殺しそうになったり、
ビルの家へ行ってビルを絞殺しそうになる。
ブリタに再婚を求婚して断られたトニーは、ブリタとビルの関係に嫉妬して暴れてブリタの家から追い出され、ウェイトレスのパットの所へ行く。
しかしそこで、またもやオセロが乗り移ったかのようにパットを絞殺しそうになりながら情熱的なキスをし、パットはキスが原因で窒息死する(『オセロ』では、口づけしながら絞殺という両極愛憎表現。)。
我に返ったトニーは明け方にブリタの家に戻る(トニーとブリタは友人同士という形で同じ広い家に住んでいるらしい)。
パット死亡現場で鑑識から独自取材をした知り合いの新聞記者から、「死のキッス」の見出しでオセロと関連させて一面で宣伝になるようにするから金をくれないかと提案されてピンと来た広報のビルは、
囮としてパットそっくりに仕立てた女優志望の女性を、
トニーの前にウェイトレスとして登場させる。
するとトニーは取り乱す。現場に呼んでいた刑事もトニーが怪しいと思う(既にパットの向かいの家の男が誤認逮捕されていて、この事件は解決したかに見えていた。しかしビルは、求婚した際のブリトのふとした発言から、トニーにアリバイがない(ブリトが「トニーと喧嘩をして、彼は家を出て朝になって帰ってきた」と言った)と知ると、トニーが犯人であると確信、独自調査を進めることに。)
刑事もいる衆人環視の舞台で、セリフを忘れたりとちったりするトニー。
自刃シーンを終えても立ち上がらないトニーに舞台裏は騒然。トニーが運ばれたあとでブリタが見ると、本物の血がガウンにべったり。
幕が下り、客席から拍手がやまない中、ブリタは舞台袖の瀕死のトニーを置いてカーテンコールへ。
トニーはビルに今までのことを謝り、「新聞に俺を悪い役者だったと書かせないでくれよ」と言う。
ブリタが戻ってくると、トニーは目を開いたまま死去。ビルがその目を閉じてやり、ジエンド。
ロナルド・コールマンの役者魂を感じた。
シェイクスピアものの舞台裏ものということで、三谷幸喜 作の「幕を降ろすな」を想起。
同様に二重設定の『Wの悲劇』も想起。
この映画『二重生活 A Double Life』は、自分のパラレルワールドへの行き来話、とも言える。
オーソン・ウェルズの『オセロ』。
![undefined](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/3c/Othello_%281955_film_US_poster%29.jpg/800px-Othello_%281955_film_US_poster%29.jpg)
★『オセロー』(Othello)は、
(1602年)の悲劇で5幕の作品。シェイクスピアの四大悲劇の一つ。副題は「ヴェニスのムーア人」(The Moor of Venice)。
ヴェニスの軍人であるオセローが、旗手イアーゴーの奸計にかかり、妻デズデモーナの貞操を疑い殺すが、のち真実を知ったオセローは自殺する、という話。最も古い上演の記録は1604年11月1日にロンドンのホワイトホール宮殿で行われたものである。登場人物の心理が非常に明快であり、シェイクスピアの四大悲劇中、最も平明な構造をもつ。ボードゲームのオセロの名前の由来である。
あらすじ
ヴェニスの軍人でムーア人であるオセローは、デズデモーナと愛し合い、デズデモーナの父ブラバンショーの反対を押し切って駆け落ちする。オセローを嫌っている旗手イアーゴーは、自分をさしおいて昇進した同輩キャシオーがデズデモーナと密通していると、オセローに讒言する。嘘の真実味を増すために、イアーゴーは、オセローがデズデモーナに贈ったハンカチを盗み、キャシオーの部屋に置く。
イアーゴーの作り話を信じてしまったオセローは嫉妬に苦しみ怒り、イアーゴーにキャシオーを殺すように命じ、自らはデズデモーナを殺してしまう。だが、イアーゴーの妻のエミリアは、ハンカチを盗んだのは夫であることを告白し、イアーゴーはエミリアを刺し殺して逃げる。イアーゴーは捕らえられるが、オセローはデズデモーナに口づけをしながら自殺をする。★
★Wikipediaより★
『二重生活』(にじゅうせいかつ、A Double Life)は、1947年のアメリカ映画である。ジョージ・キューカー監督
によるフィルム・ノワールである。
キャスト
- トニー・ジョン:ロナルド・コールマン
- ブリタ・カウリン:シグニ・ハッソ
- パット・クロル:シェリー・ウィンタース
- ビル・フレンド:エドモンド・オブライエン
- ビクター・ドンラン:レイ・コリンズ
- アル・クーリー:ミラード・ミッチェル
受賞とノミネート
賞 | 部門 | 候補者 | 結果 |
---|---|---|---|
アカデミー賞[1] | 主演男優賞 | ロナルド・コールマン | 受賞 |
監督賞 | ジョージ・キューカー | ノミネート | |
脚本賞 | ルース・ゴードン、ガーソン・ケニン | ノミネート | |
劇・喜劇映画音楽賞 | ミクロス・ローザ | 受賞 | |
ゴールデングローブ賞[2] | 男優賞 | ロナルド・コールマン受賞★
|
★二重生活(1947) : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
解説
「心の旅路」「ボストン物語」のロナルド・コールマンが主演する映画で、ルース・ゴードンとガーソン・カニンの夫婦チームが共作したオリジナル脚本から「フィラデルフィア物語」「ガス燈」のジョージ・キューカーが監督した1948年作品である。コールマンの相手はスウェーデン生まれのシグネ・ハッソが勧めるが、彼女は1937年映画に入り欧州で15本の映画に出演し、ハリウッドではこれが12本目の映画である。彼女と共に「ノートルダムのせむし男(1939)」のエドモンド・オブライエンを始め、新人シェリー・ウィンタース、「我等の生涯の最良の年」のレイ・コリンズ、フィリップ・ローブ、ミラード・ミッチェル等が出演している。撮影は「ミネソタの娘」「暗い鏡」のミルトン・クラスナーが指揮し、音楽は「失われた週末」「赤い家」のミクロス・ローザが作曲した。
1947年製作/104分/アメリカ
原題:A Double Life
劇場公開日:1949年3月
ストーリー
舞台の名優トニー・ジョンは、ブロードウェイで長期興行中の喜劇「紳士の紳士」を打ちあげ、次回にはシェークスピア劇「オセロ」上演と決定した。トニーの相手女優ブリタ・カウリンは彼の別れた妻であるが、2人ともいまだに愛し合っている。離婚したのはトニーが舞台で演じる役に打ち込みすぎて舞台から退場してもその役を離れ得ず、家庭でも彼自身が舞台の彼の延長である故であった。この様な心境で「オセロ」を上演するのは考えものだと、演出者のドンランは反対したし、トニー自身も惧危しないでもなかったのである。果たせるかな舞台稽古で、早くもトニーはオセロ役に心を奪われてしまった。彼はニュー・ヨークのイタリア人街に迷い込み、そこでパット・クロールという女給と知り合い、深い関係が出来た。「オセロ」はヒットであった。そしてトニーは日毎にオセロになり切って行き、ついにブリタが扮するデスデモナをキッスして殺すシーンで熱演しすぎて、彼女を傷つけたのであった。そればかりか、宣伝係のビル・フレンドを狂気じみて嫉妬するようになった。ビルがブリタを恋しているというのである。その口論のあげ句トニーは市街をうろつき歩いて、パットのアパートにやって来る。彼はもはやつかれ者で、オセロのせりふをしゃべり出し、パットをデスデモナと信じてキッスした。そして熱演したためにパットは彼のキッスで窒息死してしまう。その事件を知ると宣伝ビル・フレンドは好材料とばかり、「オセロ」劇に結びつけて宣伝し新聞の大特ダネとなる。トニーは大憤慨で、下等な宣伝だとビルを怒鳴りつけ危うくのどをしめ殺す程であった。余りにも恐ろしい権幕なので、ビルはトニーが女給の死と何か関係があるのではないかと疑い、警察と連絡して1人の女にパットの扮装をさせ、トニーを酒場に呼んで、その女にサービスをやらせる。トニーが彼女を見ると、その振舞は唯事でなく、ビルはパットの死にトニーが一役演じたことを確信する。パットが働いていた料理店の主人は、トニーの写真を見せられると、この男が来たと申し立てる。ビルは彼を伴って劇場に来ると、舞台からオセロは見つけて、犯罪が発見されたことを覚る。そしてオセロがデスデモナ殺害の罪を問われるシーンになると、トニーは脚本に書かれてある通りに、短剣で自分の心臓を本当に刺したのである。★