『キリマンジャロの雪 The Snows of Kilimanjaro』1952年
キリマンジャロは、別名「神の家(ンガジェガ)」。
タイトルのイメージ喚起力が凄い。
「キリマンジャロの雪」というのは、主人公の、新聞記者から作家になったハリー・ストリートの叔父の遺言の一節。
アフリカ最高峰のキリマンジャロの頂上近くには、頂きを目指して死んだ豹の亡骸があるという。餌のない頂上をなぜ豹は目指したのか、というなぞなぞ。
答えはハリーの生き方にある。
ハリーの生き方は、関わった女性から言わせれば騎士が聖杯を探すようなもの。
ハリーは、あそこに行けばいいものが書けるかもしれない、と定住せず旅を続ける。
ハリーもキリマンジャロの豹。その頂上に生活の安定はないのに、芸術の高みを目指す。
理想のものが書けたら、そこで死んでいいというのが、書きながら現役で死にたいというのが、ハリーの美学なのだろう。
そんなハリー(グレゴリー・ペック)に抱擁された女性シンシア(エヴァ・ガードナー)は、「あなたに抱かれるとクラクラするわ」と言う。
ハリーは、前時代の、絶対的自信のある男。
そんな絶対に抱かれれば、女の悩み(相対的な様々。というか、相対的であるということが、悩みのコンディションなのだろう。絶対的であるならば、迷いはないはず。悩みとは、選択肢が二つ以上あることからくる迷いなのだろう。)は吹っ飛ぶ。クラクラ恍惚うっとりだろう。
この映画の日本公開は1953年(昭和28年)。絶対的自信を持って猛進する男がマッチョと揶揄される遥か前の時代。
男が自己陶酔してウイスキーを飲んで酔えた時代。
それに寄り添うと利益が出る女性も加担して、昭和の日本の夜のクラブは男女のデュエットで盛り上がっていたことだろう。
ハリーはアフリカで妻と狩猟旅行中、足の壊疽で瀕死となる。自分はまだ理想のものを書けていないんだと妻にいい、夢で魘(うな)されるなかで、ハリーは自分の過去を思い出す。
ハリーの過去は、付き合った女のつなぎ合わせ。
女が切れないので、過去を思い出すには女を思い出せばいい。
まず、ハリーは初恋を思い出す。
それは若さゆえ、儚く破綻。
そして作家志望の新聞記者となったハリーは、パリのカフェでシンシアという魅力的な女性に一目惚れ。
シンシアもハリーを良く思い、二人は付き合うことに。
作家として人気の出始めたハリーはシンシアとアフリカに狩猟に行くが、そこでシンシアの妊娠が分かる。しかしシンシアはハリーにそれを内緒にしている。
一所に留まらないハリーへの抗議なのか、シンシアは故意に階段を落ちて流産する。
しばらくしてハリーはリヴィエラでリズという伯爵令嬢と恋仲に。
そこへシンシアから手紙が。しかしリズは嫉妬からそれをハリーの前で破り捨てる。
そんなリズと、ハリーは別れる。
スペイン内戦の義勇兵に志願したハリーは、そこで看護師をしていて負傷したシンシアに再会。
シンシアは、自分が故意に流産したことをハリーに詫びる(この告白と謝罪が、手紙の内容だったのだろう)。ハリーは赦す。
「救護隊!」と渾身の力を振り絞って叫ぶハリーに涙が出た(演者のグレゴリー・ペックは、常に六割でさらっとこなしているように見えるので)。
しかし間もなくシンシアはハリーの腕の中で死去。
失意のハリーは、シンシアと初めて会ったパリのカフェに行って思い出に耽る。
店を出ると、昔シンシアと見間違った、シンシアの面影のある女性に再会。
ハリーは彼女と結婚して安らぎを得る。
そしてその妻とアフリカに狩猟旅行している、というのが今ここで、
そこから過去を回想するというスタイル。
寝ては夢を見て魘(うな)され起きるため、過去と今を生きつ戻りつ。
ハリーは自分の死が近いと思い込んでいる。
そんなハリーに気づくのか、近くの木にはハゲタカがとまり、ハイエナも匂いを嗅ぎ付けてくる。
現地の祈祷師が来るが、妻は追い返し、医学書を見ながら自分で壊疽を切開手術。
そしてハリーがぐっすり眠って目覚めると、まるで世界が浄化されたかのように、木からはハゲタカが消えている。
そこへ友人の乗った救助機が着陸し、ハリーに光が見えたところで、ジエンド。
懐かしい、昔の男の夢とロマン。
音楽担当のバーナード・ハーマンは、「サイコ」の音楽も担当。
「めまい」も。
バーナード・ハーマン。
ヒッチコックとバーナード・ハーマン。
★Wikipediaより★
『キリマンジャロの雪』(キリマンジャロのゆき、The Snows of Kilimanjaro)は、1936年にアーネスト・ヘミングウェイ
が発表した短編小説である。1952年に映画化された。
あらすじ
アフリカのキリマンジャロ山は、別名「神の家(ンガジェガ)」ともよばれている。その頂近くに、不毛の頂上を目指し登り、力尽きて死んだ豹の亡骸があるという。豹が何を求めて頂上を目指したのか、知る者はない。
アフリカで狩猟をしていた小説家ハリー・ストリートは、脚の壊疽で瀕死の状態にあった。救援を呼んだが間に合いそうもない。死を悟ったハリーは、看護する妻ヘレンの制止を振り切り自棄酒を始めた。ハリーは酔い、ヨーロッパ大陸の各所で過ごした日々を回想する。そして、多くの体験をしておきながら、著作家としてほとんど何も書き残していなかったことを後悔し、慰めるヘレンに八つ当たりをした。ハリーは眠りにつき、その夢の中で救援の飛行機に乗って光あふれる大空へと飛立った。そして、飛行機はキリマンジャロを、「神の家」をめざす。
一方、ヘレンが目覚めたとき、そこには闇と、「ハリーだった」ただの物体と、あざ笑うようなハイエナの鳴き声が残るのみだった。
映画
キリマンジャロの雪 | |
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The Snows of Kilimanjaro | |
ハリー役のグレゴリー・ペックとヘレン役のスーザン・ヘイワード |
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監督 | ヘンリー・キング |
脚本 | ケイシー・ロビンソン |
原作 | アーネスト・ヘミングウェイ |
製作 | ダリル・F・ザナック |
出演者 | グレゴリー・ペック スーザン・ヘイワード エヴァ・ガードナー |
音楽 | バーナード・ハーマン
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撮影 | レオン・シャムロイ |
編集 | バーバラ・マクリーン |
配給 | 20世紀フォックス |
公開 | 1952年8月18日 1953年1月22日 |
上映時間 | 114分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語(一部仏語および西語) |
『キリマンジャロの雪』は1952年に映画化された。現在、アメリカでは著作権は消失し、パブリックドメインとなっている。
あらすじ
キリマンジャロ山のふもとで狩猟をしていた小説家ハリー・ストリートは、脚の壊疽で瀕死の状態にあった。ハリーは自身の人生を振り返り、4人の女性とのロマンスを思い出す。
最初の恋人コニーとの辛い別れを忘れようと、ハリーはヨーロッパに旅立つ。そして、パリのモンパルナスでシンシアと出会い、この恋をきっかけに小説家としての第一歩を踏み出した。ハリーはシンシアとアフリカに狩猟に出かけるが、そこでシンシアを流産させてしまう。ほどなくシンシアはハリーの元を去った。しばらくして、ハリーはリヴィエラで伯爵夫人リズと出会い、情熱的な恋に落ちるも長続きはしなかった。スペイン内戦の義勇兵に志願したハリーは、そこで看護婦をしていたシンシアと再会した。二人は再び愛し合うも、シンシアはハリーが見守るなか命を落とす。ハリーはシンシアの面影を持つヘレンと結婚し、ようやく安らぎを得た。
徐々にハリーは衰弱していく。ヘレンは夫を救おうと手術を試みる。そのときようやく救援機が到着した。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
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NETテレビ版 | テレビ朝日版 | ||
ハリー・ストリート | グレゴリー・ペック | 城達也 | |
ヘレン | スーザン・ヘイワード | 三条美紀 | 藤田弓子 |
シンシア・グリーン | エヴァ・ガードナー | 翠準子 | |
リズ伯爵夫人 | ヒルデガード・ネフ |
★スペイン内戦(スペインないせん、スペイン語:Guerra Civil Española、英語:Spanish Civil War)は、1936年から1939年まで第二共和政期のスペインで発生した内戦。マヌエル・アサーニャ率いる左派の共和国人民戦線政府(ロイヤリスト派)と、フランシスコ・フランコを中心とした右派の反乱軍(ナショナリスト派)とが争った。反ファシズム陣営である人民戦線をソビエト連邦、メキシコが支援し、欧米市民文化人・知識人らも数多く義勇兵(国際旅団)として参戦、フランコをファシズム陣営のドイツ、イタリア、ポルトガルが支持・直接参戦した。★