『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
ロイヤル・テネンバウムが一家の父の名前。ゆえにザ・ロイヤル・テネンバウムズとは、その人が父としている一家。サザエさん一家、サザエさんち、のようなノリだと思った。サザエさんちは、サザエさんが最もキャラが濃い。ロイヤル・テネンバウムさんちも、ロイヤルさんが一番キャラが濃い。そして妻はそのキャラを愛し、こどもたちは半分の遺伝子がロイヤル・テネンバウム。
(ロイヤル・テネンバウムと孫息子二人。妻を失い神経衰弱な長男に代わり、孫息子たちに世間というものの活気を体験させてあげている(笑)。長男は、飛行機事故で妻を失ったため、事故や災害に過敏になってこどもたちから決して目を離さない。愛なのだが、周囲から見ると大分異様。そこを、豪放磊落なグランパとして、ロイヤル・テネンバウムが「教育」。ガチガチの保守とは逆の解放、無謀さを教えている。)
(一度ゴミ清掃車に乗ってみたいというこの星の全こどもたちの夢を一緒に叶えるグランパ、ロイヤル・テネンバウム)
(点滴棒を連れ回しながら、庭から(笑)仕事中の妻エセルに、孫息子二人の教育について話す、ロイヤル・テネンバウム。)
(妻を失い、二人の息子に対する責任を一身に請け負い神経衰弱気味のパパ、チャス・テネンバウムと、見た目や動作が双子のようにシンクロする、可愛すぎる二人の息子)
(パパは二人の息子に経理も教え込み、助手に)
個性的過ぎる人しかいない一家の話。
つまり天才一家。
天才ゆえに完璧主義。相手にも完璧を求める。
よって、息子の父に対する「許せない」は続く。
所々に稲中卓球部感あり。
ウェス・アンダーソン監督作品は、少し昔のオタク貴族集団の話。日本で言うと昭和のバブル直前の香り。満たされ過ぎた余暇の持て余しのオタク感。
天才たちの、長いその後。天才子役のその後。というか、子供とは天才の異名だから、大人一般の話。
天才三人きょうだいのうち、女の子だけが養子。彼女は実の親を14歳のときに訪ね、実の父の薪割りを手伝って指を一本切断。
一家の父が、ジーン・ハックマン演ずる法律家ロイヤル・テネンバウム。その妻、こどもたちの母がアンジェリカ・ヒューストン演ずるエセル。ロイヤル・テネンバウムは35歳で家を建てたが妻から離婚を言い渡され、一人でホテル暮らしをしていた。ロイヤルは経済専門の息子と金のことで言い争いとなり、以後息子は父を遮断。その息子は飛行機事故で妻を亡くし、以後、家族を守れなかったという後悔と不安から、息子二人を災害訓練漬けにしている。よって常に三人は真っ赤なジャージ姿。毎日毎分が非常時。
ロイヤルとエセルは別居しているが離婚はしていない。エセルは仕事仲間の黒人の会計士からプロポーズを受け、嬉しい。
しかしそんな矢先にロイヤルが宿泊代未納のためホテルを追い出された。
家に帰りたいロイヤル。道端で妻エセルを待ち伏せすると、妻はその突然感に怒り出す。するとロイヤルは「俺はあと六週間で死ぬ」と言う。するとエセルは泣き出す。「実は嘘だ」とロイヤルが言うと怒るエセル。「いや本当だ、俺はあと6週間で死ぬんだ、最後くらいは家族と一緒にいたい・・・。」、となり、ロイヤルは自分が建てた家に帰ってくる。
婚家でバスルームに閉じこもってばかりいる養子の娘も実家に戻ってきて、元テニスプレーヤーの息子も呼び出され、家族再集結。
かくして、22年ぶりに一つ屋根の下に暮らすことになったテネンバウム家。ロイヤルの余命6週間・・・家族再生となるだろうか?というお話。
天才とは、つまり忖度しない、自分流、ということだろう。全員天才である血が芸術家一家。一筋縄ではいかない同居生活。
アンジェリカ・ヒューストンがいることもあり、明るく乾いた『アダムス・ファミリー』とも思った。天才とはつまり、素なのだから、誰かや昔の基準を実装させられないのだから、裸自分、裸自意識。
承認欲求が満たされているとスターなのだが、その時期が過ぎ去った一家は、家族同士で向き合い、自意識焚火となる。
チャスとリッチーはロイヤルの実子だが、マーゴは養子。そのマーゴのことを、弟にあたるリッチーはずっと恋愛対象として好きだった。
ロイヤルは家族に戻ろうとして、ガンである、あと六週間の命だと嘘をついたのだが、次男リッチーは、自殺未遂をして法律上の姉のマーゴに求愛。
その、命懸けの求愛行動というのが、天才的でテネンバウム家的。
リッチーはマーゴに告白する。マーゴは気持ちを受け止めるが、このことは秘密にしたほうがいいと彼の部屋のテントの中から出る際に言う。
破産したロイヤルが、エレベーター係の仕事をして、家族に責任を果たせる人間だと証明しようとする姿に泣いた。
ロイヤルはそういう修業期間で何かが浄化され、ある日あっさりとエセルに「朗報だ、離婚だ」と公証人連れでやって来る。あれだけ離婚を渋っていた人が......これもエセルの幸せを思えばこそ、とウルウル。ロイヤルは次男の親友の薬中のイーライに、「俺もテネンバウムズ一家に憧れていた」と言う。それなのに息子に家を乗っ取られ、建てた家から追い出される。この生物の世代のピストン運動に涙。
晴れて結婚式を挙げるエセル。そこに、マーゴと付き合っていた、リッチーの友人の薬中のイーライが、薬をキメて車を高速で走らせてくる。
エセルの新居となる、再婚相手の夫の家に、イーライの車が激突。イーライは、こどもの頃からテネンバウム一家に憧れ、その一員になりたかった人。
イーライの車の下敷きになって飼い犬が死ぬ。チャスは半狂乱になり、息子二人の無事を確かめる。そして堪忍袋の緒が切れたという感じで、イーライを投げ飛ばす。
この薬中のイーライの突入で、一家は長い眠りから覚め、こどもの頃の鮮やかさを取り戻した感じ。一家の血行が良くなり、血色が健康的になったという感じ。イーライは一家への恋患い、チャスは父という重責を、ぶつかって相殺した感じ。
それでめでたしかというと、そこでジ・エンドとはならず、ナレーションで、ロイヤル・テネンバウムの死が語られる。
墓地に集まった一家。
墓碑には、「沈没した軍艦から一家を救った父」というような文言。これは、ロイヤルが生前に書いていたもの。
しかし、家族とは、一隻の軍艦に乗り合わせたクルーのようなもの。
監督のウェス・アンダーソンの好みなのだろう。作品のヒロインは虚ろっぽい目で棒読み。
『ムーンライト・キングダム』のヒロインもそう演出されていた。
父というものが一家で重かった時代の、愛しさとウザさ。それが懐かしさと共に描かれていると思った。
愛すべき、偉大な、永遠に妻に片思いする男としての、父。
日本で言うと昭和時代の、石原裕次郎をヒーローと見ていた人たちが父だった頃の話、と思った。
ウェス・アンダーソンの映画はキャスティングが肝。この役者たちなら、抑えたセリフの方がむしろ饒舌。そういう人たちが一同に会している光景を眺める、静かな喜び。「ぶっ飛び」という言葉が昔流行ったが、ウェス・アンダーソンの映画は、常に静かに着々とぶっ飛んでいる。
全員がフォトジェニック。そこにいるだけでキマる。
生前の亡霊写真のように、各々の霊魂がクリアに写っている。
次男リッチーが自殺未遂したと聞き、駆け付ける父ロイヤル。秘書のような相棒の男と、病院から抜け出したリッチーがバスに乗り込んだのを見届けると、「自殺したのに元気だったな」と言う。そのセリフに笑った。↓リッチーは、血縁ではない養子の姉マーゴへの思いをどうにもできず、自殺しようとしたのだった。(しかし、腕を切って自殺するには切断レベルじゃないと死ねないと聞いたことがある。この程度だと、痛々しくはあるが、故に観客には派手な求愛に見える。そう見えるように作られているのだろうと思った。)
マーゴとリッチー。
髪や髭を剃ってついでに自殺未遂もする前の、リッチー。
リッチーの思い人、法律上姉であるマーゴ。
チャス、チャスの息子二人、薬中のイーライの車に轢かれて死んでしまう飼い犬、マーゴ、そしてロイヤル・テネンバウム。
ロイヤル・テネンバウム: ジーン・ハックマン
エセル・テネンバウム: アンジェリカ・ヒューストン
チャス・テネンバウム: ベン・スティラー
マーゴ・テネンバウム: グウィネス・パルトロウ
リッチー・テネンバウム: ルーク・ウィルソン
★
Amazon商品ページより ★
テネンバウム家、天才ファミリー
名前だけが、彼らのつながり。求めるものは、心のつながり。
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
<ストーリー>
ロイヤル・テネンバウム(ジーン・ハックマン)は、妻エセル(アンジェリカ・ヒューストン)と3人の子ども、チャス、リッチー、マーゴとともに静かに、平和に、いつまでも一緒に暮らしたいと望んでいた。35歳で大邸宅を手に入れ、有能な法律家として将来を嘱望されている身・・・と彼自身は思い込んでいたが、妻エセルへの「ほんのわずかな誠実さの欠落」により2人は別居することに。エセルは子どもたちを熱心に教育し、各々の才能を育んだ。やがて3人は「天才」と呼ばれるようになり、エセルの著書である「天才一家」はベストセラーとなった。ロイヤル&エセル夫妻と天才と謳われた3人の子どもたちとのテネンバウム家の22年は、裏切りと失敗と奇行の変転。そして、今また、新たな歴史が始まろうとしている。ロイヤルはエセルに「私はあと6週間で死ぬのだ、最後くらいは家族と一緒にいたい・・・。」と告げる。かくして、22年ぶりに一つ屋根の下に暮らすことになったテネンバウム家。ロイヤルの余命6週間・・・家族再生となるだろうか?
<キャスト&スタッフ>
ロイヤル・テネンバウム: ジーン・ハックマンエセル・テネンバウム: アンジェリカ・ヒューストン
チャス・テネンバウム: ベン・スティラー
マーゴ・テネンバウム: グウィネス・パルトロウ
リッチー・テネンバウム: ルーク・ウィルソン監督: ウェス・アンダーソン脚本: ウェス・アンダーソン、オーウェン・ウィルソン製作: ウェス・アンダーソン、バリー・メンデル、スコット・ルーディン
製作総指揮: ラッド・シモンズ、オーウェン・ウィルソン
撮影: ロバート・ヨーマン
(A.S.C.)★
★ウィキペディアより
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(英: The Royal Tenenbaums)は、2001年製作のアメリカ映画である。
ウェス・アンダーソン監督・脚本・製作。
出演しているオーウェン・ウィルソン
が共同で脚本・製作をこなした。ウェス・アンダーソンの作品で日本公開された初めての作品。
ストーリー
|
テネンバウム家の3人の子供たちは、長男はビジネスマンとして、長女は作家として、次男はテニス・プレイヤーとして10代のうちに成功し、天才児と呼ばれていた。しかしそれから20年後、彼等はそれぞれ問題を抱えていた。そんな時、死期が近いという父親の呼びかけで一緒に暮らすことになる。
キャスト
- ロイヤル・テネンバウム - ジーン・ハックマン: 元法律学者。破産している。
- エセル・テネンバウム - アンジェリカ・ヒューストン: ロイヤルの妻。考古学者。
- チャス・テネンバウム - ベン・スティラー: 長男。1年前に妻を飛行機事故で亡くしている。
- マーゴ・テネンバウム - グウィネス・パルトロー: 長女。養女。
- リッチー・テネンバウム - ルーク・ウィルソン: 次男。元プロテニス選手。
- イーライ・キャッシュ - オーウェン・ウィルソン: リッチーの幼なじみ。現在は人気作家。
- ヘンリー・シャーマン - ダニー・グローヴァー: 会計士。エセルに求婚。
- ラレイ・シンクレア - ビル・マーレイ: マーゴの現在の夫。精神学者。
- ダスティ - シーモア・カッセル: ロイヤルの常宿となっているホテルの従業員。
- パゴダ - クマール・パラーナ: テネンバウム家の召使。
- ナレーション - アレック・ボールドウィン
主な使用楽曲
- 「青春の日々」(ニコ)
- 「ウィグワム」(ボブ・ディラン)
- 「ポリスとコソ泥」(ザ・クラッシュ)
- 「フライ」(ニック・ドレイク)
- 「ステファニー・セッズ」(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)
- 「美しい季節」(ニコ)
- 「僕とフリオと校庭で」(ポール・サイモン)★