『オー・ブラザー!』
ラスト。これでめでたしめでたしかとほっとしているとそううまくはいかない。犬に脱獄囚の匂いをかがせて執拗に追いかけていた保安官が、三人を捕まえる。
首吊りひもの下でもはやこれまでかと思いつつ、いやそう肝が据わったからこそ神に救いを求めた三人。するとじわじわと水が土に滲んでくる。観客は始め、犬の排泄かと思うも、間もなく、洪水だと分かる。カタルシス的、全流し。なかったことに、というリスタート。この、ガラガラポンが、信仰かと思った。罪を犯しても、告白して懺悔すると、なかったことにしてくれる。やり直しをさせてくれる。そのリスタートの機能として、信仰とはあるのでは、と思う。人生詰まないように。流してくれる、カタルシス。いや生まれたときから原罪があるのですから、まっさらなことはもともとないんですよと言われれば気が楽。やり直せる。気の迷いから罪を犯しても、やり直せたら、やり直させてくれたことに感謝しかない。そういう込み込みホールインワン進行・信仰。
三人が犯した罪は、あと二週間で出所できるものだったりスーパーの強盗だったり無免許で弁護士をしていたためだったりと、人を殺めてはいない。
大恐慌に喘ぐ1930年代のアメリカ南部。ミシシッピ州で服役する無免許で弁護士をしていた詐欺師のエヴェレットは、共に鎖で繋がれていた囚人ピートとデルマーと共に脱獄を図る。三人は、このままおとなしく服役をしていれば、衣食住に悩まず安全に出所できるはずだったのに、野心を持ち自由を求めたために、身の危険に遭う。これこそ冒険で、人生の比喩に見えるが、運命共同体になった二人、特にピートは途中で「おとなしくしていればあと二週間で出所できたのに」と後悔もする。
三人が目指すのは、昔エヴェレットが埋めたという120万ドルの大金。だが、その隠し場所は人造湖建設の予定地であり、あと4日で水没する運命にあった。目標に向かって邁進する三人は、旅の途中で様々な人物と出会う。
時は州知事選挙戦中で、現職知事は小麦粉会社の社長。対立候補は革新派で、目新しいことをして市民の関心と支持を得ている。
危機を感じる現職知事。この選挙というのが、当時のお祭りだったのだろう。所々で選挙スピーチが行われ、そこに人が集まる。
脱獄した、ジョージ・クルーニー演じるエヴェレットは、スピーチ会場で舞台にあがって歌を披露している娘たちに近寄る。すると娘たちは、「パパは鉄道で列車に轢かれた」「ママは意中の人と婚約した」と言う。「俺は列車に轢かれていない」と訴えるエヴェレット。雑貨店にいた妻は、エヴェレットを無視。
婚約者はエヴェレットを殴る。
「いい話があるんだ」と妻に言っても、妻はまたかとうんざりした様子。
エヴェレットは、妻が入った、現職知事の対立候補が催すパーティーに他の二人ともう一人の黒人一人と入り込む。そして付け髭をして四人で歌を歌う。
すると聴衆は「ズブ濡れボーイズだ!」と盛り上がる。四人は、ラジオ局で成り行きで歌を披露し、そのレコードが四人の知らないうちに大ヒットしていたのだ。
入ってきた対立候補は、舞台上の四人に対して人種差別発言、そして「あいつは、私が信じている宗教の集団リンチを邪魔した」などと、ボロを出しまくる。すると会場は大ブーイング。ここの、誰かを指さし貶めようとしたその行為が正に自滅という様が面白く、爽快。ここでさっと状況を把握し、「出番だ」と舞台に上がり、四人を称え、三人が罪人なら現職の権威で恩赦、私は音楽が大好きなんだとアピールして拍手喝采される、劣勢だった現職知事の立ち居振る舞いがナイス。このように機を見るに敏でなければ、政治もうまくいかないだろう。というか、機を見るに敏か否かだけが大事と言っても過言ではないのが政治家。
現職知事の対立候補は丸太に載せられ自分のパーティー会場から退場となり、エヴェレットは妻に惚れ直されて元鞘に、でめでたしめでたしかというと、エヴェレットが二人に言っていた埋めた120万ドルの大金とは、実は嘘だったのだ。鎖で繋がれていた二人への、脱獄衝動への餌だったのだろう。または自分の妄想のシェア。
エヴェレット以外の二人は、エヴェレットに促され、捕らぬ狸の皮算用で、一人分が40万ドルだ、じゃあそれで何をする?と夢を描いていた。
デルマーは、金を返せなくて金貸屋に取られた農場を取り返したいと言う。ピートは、自分でレストランをやりたい、従業員は自分に敬語を使う、料理はただで食べられる......とうっとり。
大金は嘘だったのだが、これが伏線になっている。あと四日でその隠し場所の人造湖建設の予定地は水没。辿り着いたら、自分たちが水没。
水に沈んだものの、生命力の強い三人は浮かぶ。そして、自分たちのために用意された棺桶につかまる。すると、別れたはずの黒人の仲間も蓋付きの机につかまって浮いている。
その机の蓋を開けて出した指輪を妻に見せると、それはあなたがわたしにくれた結婚指輪ではなくおばの指輪だ、と言われる。
しかし、洪水という自然カタルシスのあと、万事浄化リボーン、リスタートといった雰囲気の中で、エンディング。
冒険とは危険を冒すこと。
おとなしくしていれば、従順にしていれば安定は得られる。が、しかし、心の翼は......という話。
安定とは実は、じわじわとした死。
革命とははみ出すことで、まさに日常からの脱獄。しかし色々大変だよ、でも雨降って地固まるもあるよ。という。
登場人物がこのメンバーだから楽しい。しかしショーマンシップのない人の集団でこれを現実としてやったら、悲惨地獄であること請け合い。
笑ったのは、女に誘惑されたピートが下着だけで連れ去られたシーン。
上着だけがきちんと、着ていたときの順番で石の上に残されていたため、酒を飲まされて起きたデルマーは、中に入っていたヒキガエルを魔法にかけられたピートだと思い込む。そして箱の中にヒキガエルを入れていると、ヤクザ者がその箱に金が入っていると思い込み、二人を「聖書販売のウハウハなビジネス」に誘う。二人を殴って箱を開けたヤクザ者は、それが金ではなくヒキガエルだと分かるとキレてヒキガエルを握り潰す。
このヤクザ者を演じたのが、
『バートン・フィンク』
で保険屋を騙った連続殺人者を演じていたジョン・グッドマン。
この人が入ると、画面が物凄くハイカロリーになる。ただごとでは済まされない感が濃厚になる。この人自身がカロリー爆弾だから。
人生とは、母の胎内からの脱獄とも言える。そこから出たからには危険しかない。それを冒険と楽しめるか否かが、人生を楽しめるか否かの分かれ目なのだろう。
脱獄したところで辿り着くのは棺桶。ならば楽しもうじゃないかというメッセージを、個人的には受け取った。
この犯罪者役の、躁鬱狂人ぶりも見事。この役は、時代の申し子ということだろう。大恐慌時代の鬱憤と発散。ビッグになりたいという妄想レベルの野心に、才能が付随しないと犯罪者になってしまうという見本。野心とは、現在地と夢との間の長過ぎる距離の異名なのだ。
★ (Amazon商品ページより)
現実とファンタジーが混在するおかしな世界で
繰り広げられるユーモアたっぷりのロードムービー
1930年代、ミシシッピー州の片田舎に服役する囚人エヴェレット、ピート、
デルマーの3人は、エヴェレットが隠したという現金120万ドルを求めて脱獄を決行する。
その隠し場所は、ダムの建設で間もなく水の底に沈んでしまうのだ。
そして見事脱獄に成功した3人の120万ドルを探す旅が始まる。
旅は予想外のハプニングが続く中で、ギター弾きの名人トミーと出会う。
そして4人は、なりゆきで「ズブ濡れボーイズ」として歌手デビューを果たしてしまう。
抜け目なく小銭を手に入れた彼らは、警察に追われながらも旅を続ける。
その一方で「ズブ濡れボーイズ」のレコードが売れに売れ、
3人は超有名人になっていたのだった。
一筋縄ではいかない手ごわい面々と出会い、そして別れを繰り返しながら、
3人は唯一無二の本当の宝に気が付いていく...
製作国 / 年 : 2000年 / アメリカ
収録時間 : 108分
出演者 : ジョージ・クルーニー、
ジョン・タートゥーロ、
ティム・ブレイク・ネルソン、
ジョン・グッドマン
監督 : ジョエル・コーエン
内容(「Oricon」データベースより)
1930年代、ミシシッピー州の片田舎に服役する囚人エヴェレット、ピート、デルマーの3人は、エヴェレットが隠したという現金120万ドルを求めて脱獄を決行する。その隠し場所は、ダムの建設で間もなく水の底に沈んでしまうのだ。そして見事脱獄に成功した3人の120万ドルを探す旅が始まるが...。ジョージ・クルーニー主演、現実とファンタジーが混在するおかしな世界観で繰り広げられるユーモアたっぷりのロードムービー。★
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(ウィキペディアより)
『オー・ブラザー!』(原題:兄弟よ、あなたはどこにいますか?)は、2000年制作のアメリカ映画。コーエン兄弟制作のコメディ映画。
概要
★ 『オデュッセイア』(古代ギリシア語イオニア方言:ΟΔΥΣΣΕΙΑ, Ὀδύσσεια, Odysseia, ラテン語:Odyssea)は、『イーリアス』とともに「詩人ホメーロスの作」として伝承された古代ギリシアの長編叙事詩[1]。題名は「オデュッセウス(について)の(詩歌)」の意味[2]。
概要
『イーリアス』の続編作品にあたり、そのため叙事詩環の一つに数えられることもある。長編叙事詩では、古代ギリシア文学最古期にあたる。
イタケーの王である英雄オデュッセウスがトロイア戦争の勝利の後に凱旋する途中に起きた、10年間にもおよぶ漂泊が語られ[1]、オデュッセウスの息子テーレマコスが父を探す探索の旅も展開される。不在中に妃のペーネロペー(ペネロペ)に求婚した男たちに対する報復なども語られる[1]。
紀元前8世紀頃に吟遊詩人が吟唱する作品として成立し、その作者はホメーロスと伝承されるが、紀元前6世紀頃から文字に書かれるようになり、現在の24巻からなる叙事詩に編集された。この文字化の事業は、伝承ではアテーナイのペリクレースに帰せられる。
古代ギリシアにおいては、ギリシア神話と同様に『オデュッセイア』と『イーリアス』は、教養ある市民が必ず知っているべき知識のひとつとされた。なお『イーリアス』と『オデュッセイア』が同一の作者によるものか否かは長年の議論があるところであり、一部の研究者によって、後者は前者よりも遅く成立し、かつそれぞれの編纂者が異なるとの想定がなされている(詳細はホメーロス問題を参照)。★
を原案に、物語の舞台を1937年のアメリカ合衆国ミシシッピ州の田舎に移した作品である[2] 。映画の主要登場人物となる脱獄囚三人をジョージ・クルーニー、ジョン・タトゥーロ、ティム・ブレイク・ネルソンが演じている。
原題の 兄弟よ、あなたはどこにいるのか。は、1941年に公開された映画『サリヴァンの旅』
★ 『サリヴァンの旅』(サリヴァンのたび、原題:Sullivan's Travels)は、1941年制作のアメリカ合衆国のコメディ映画。プレストン・スタージェス監督。
1990年、アメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
あらすじ
ジョン・サリヴァンはコメディ映画の監督として成功を収めていたが、最近自分の仕事に不満を感じ、社会派映画の撮影を熱望し始める。
サリヴァンは現実社会を知るためとして、ホームレスにカムフラージュして旅に出ようとするが、失敗を重ねてなかなかうまく行かない。
ある日、サリヴァンはハリウッドのカフェでブロンドの美女に出会う。彼女はエルンスト・ルビッチの映画に出演する夢に破れて、故郷に帰ろうとしていた。サリヴァンが映画監督だと知らない彼女は彼をホームレスだと思い込み、暖かいコーヒーをご馳走する。
これで意気投合したサリヴァンと彼女は、旅を再開するのだが...。★
で、主人公である映画監督が作ろうとしていた映画 兄弟よ、あなたはどこにいますか?からとられている[3]。
映画は2000年12月22日に全米公開。北アメリカで約4500万ドル、それ以外で約2600万ドルの興行収入を挙げた[1]。当時のコーエン兄弟にとって、最大のヒット作となった(2007年に公開された『ノーカントリー』が更新)。
作中にはカントリー、ブルース、ゴスペル、ブルーグラス等のアメリカン・ルーツ・ミュージックが多数使用されている。T=ボーン・バーネットがプロデュースした本作品のサウンドトラックは大ヒットを記録。全米で700万枚を超える売上を挙げ[4]、2002年度のグラミー賞最優秀アルバム賞に選ばれた。
ジョージ・クルーニーが2000年度のゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。同年度のアカデミー賞では撮影賞と脚色賞の2部門で候補になったが、受賞には至らなかった。
ストーリー
大恐慌に喘ぐ1930年代のアメリカ南部。ミシシッピ州で服役する詐欺師のエヴェレットは、共に鎖でつながれた囚人ピートとデルマーと共に脱獄を図る。
三人が目指すのは、昔エヴェレットが埋めたという120万ドルの大金。だが、その隠し場所は人造湖建設の予定地であり、あと4日で水没する運命にあった。目標に向かって邁進する三人は、旅の途中で様々な人物と出会う。
キャスト
役名 | 俳優 | |
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ユリシーズ・エヴェレット・マッギル | ジョージ・クルーニー | |
ビート | ジョン・タトゥーロ | |
デルマー | ティム・ブレイク・ネルソン | |
ビッグ・ダン・ティーグ | ジョン・グッドマン | |
ペニー | ホリー・ハンター | |
トミー・ジョンソン | クリス・トーマス・キング | |
パピー・オダニエル | チャールズ・ダーニング | |
ジュニア | デル・ペンテコスト | |
ジョージ・"ベビーフェイス"・ネルソン | マイケル・バダルコ | |
ホーマー・ストークス候補 | ウェイン・デュヴァル | |
ウォッシュ | フランク・コリソン | |
少年 | クイン・ガサウェイ |
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