『アンモナイトの目覚め』
静と動のコントラスト。
途中にインサートされる蛾や蟹や蟻が心の読点。
雷のように神様から直撃された出会い。
必要な人に必要なときに出会うというのは、神様が書いたシナリオ。
半ばで出て来る女性と古生物学者メアリー・アニングとの関係が謎だったが、そうだったのかと納得。
例えばメアリーの母の死も、死にました、とは説明しない。浮彫表現。影絵表現。間接照明のような表現。
ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンの演技は、体の絡みよりも、視線の絡みのほうが裸。
互いに解放されてゆく自己。
閉じた二枚貝は、沸騰した湯に入れないと開かない。
いつどこでその投入が訪れるのか、という心のチャンスの話。
若いと相手を所有したくなる。
しかし所有は愛ではなく独占欲。
という葛藤が、二者の心のやり取りで、化石から泥をのけるように明らかになってゆく。
齟齬を繰り返しながら心を剥がし合って二人が辿り着くのは、本当の関係のスタート地点。
二人はこれで幸せになりましたとさ、が全く通じない現代の、一つの映画の終わり方。
メアリー・アニングのお母さん役の俳優が、本物のお母さんにしか見えない凄さ。
ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンには少し昔の海岸がよく似合う。
シアーシャ・ローナンの現代的自意識のクリアさが、画面からも伝わってくる。
ケイト・ウィンスレットは、この笑わない役が似合っている。肉体が語り過ぎているので、むしろ引き算した方が心情表現になるのかもしれない。
古生物学者と裕福な化石収集家の妻、とは綺麗過ぎ、出来過ぎていて、19世紀の詩のようだと思った。
原作ありきかと思いきや、実話ベースに監督が脚本を書いている。
メアリー・アニングの人生の凝縮された美しさ、と思ったが、
つまりそれは時代の、世界の狭さゆえの凝縮の美しさなのか、とも思った。
制限がかかっているがゆえの、禁断の果実の甘さ輝き。
禁断だからもいでみたくなった、という衝動もあるだろう。
というか、人生そのものが禁断の果実で、我々は生き始めたときに禁断の道を歩み始めてしまったのだろう。
『ピアノ・レッスン』の同性版という感じもした。
ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンは攻めている。
しかし、守りに入ったらそれはつまり俳優廃業なのだろうけれど。
皆まで言わない、思いが至る寸前でシーンからはけるカメラワークに大人を感じた。
イギリスの海は、それだけで詩情。
この、横から光というアングルはフェルメールっぽい。電気がない時代の室内の光は、昼間は横から、夜は蝋燭だったのだ。
フェルメールの絵。
★メアリー・アニング
(Mary Anning、1799年5月21日 - 1847年3月9日)は、イギリスの初期の化石採集者で古生物学者。
人生
メアリー・アニングは1799年、イギリス南部沿岸ドーセット州のライム・レジス(英語版)村
で生まれた[1]。彼女が生後15か月だった1800年、雷がサーカスで賑わう村を襲い、4人に直撃した。その内3人が死亡したが、生き残った1人がメアリーだった。このことから、後年の彼女の天才的な才能は雷に打たれたからだとする迷信がうまれた[1]。
メアリーの父リチャードは家具職人だったが、ライム・リージス村沿岸の崖で化石を採集し、それを観光客に売ることで生計を立てていた[2]。ジュラシック・コーストの一地点であるライム・リージス村沿岸は、前期ジュラ紀には赤道直下の熱帯の海の底だった地質で、現在でも豊富な化石を産出する地層が露出する。彼は子供達にも化石採集のノウハウを教えていたが、メアリーは特に強い興味を示し、幼い頃から化石採集に積極的であったという。1810年に父が結核で亡くなるとアニング家の収入は途絶え、学校にも行けなくなった。メアリーと兄のジョセフで化石を採集し、生計を支えなければならなくなった[2]。崖は急斜面で海流の影響でがけ崩れをおこすこともこともあり、危険な仕事であったという[1]。メアリーの飼い犬「トレイ」は、彼女の化石採集に同行中に、地滑りに巻き込まれ命を落としている[1]。
化石採集は18世紀終わりから19世紀始めにかけてブームになった。始めの頃は切手収集とおなじような余暇であったが、しだいに地質学や生物学の理解に必要な科学になっていった。彼女は初めは観光客向けに化石の採集を始めたが、すぐに化石への興味が強く高い値段で買ってくれる科学界と関係を築いていった。
メアリーと科学界との関係が最初にできたのは、父の死の数か月後の1811年、彼女がイクチオサウルスの骨格の化石を見つけた時であった。魚竜はもちろん恐竜の存在すら当時はまだそれほど世間に知られてはおらず[1]、ジョセフが一年前に大きなワニのように見える頭蓋骨の化石を見つけていたが、骨格の残りの部分は始めは見つかっていなかった。しかしメアリーが嵐の後に来てみると、化石を含んだ崖の一部が削られあらわになっていた。イクチオサウルスの化石自体は1699年にウェールズですでに発見されていたが、彼女が発見したのは最初の全身化石であった[1][2]。これは重要な発見で、化石はすぐに王立協会の手に渡ったが、メアリーはこの時わずか12歳であった[1]。彼女はその後も2体の別のイクチオサウルスの化石を発見している[1]。
メアリーの評判が高まると、彼女はリンカンシャーの裕福な化石収集者であるトーマス・ジェームズ・バーチ(Thomas James Birch)の目に留まった。アニング家が貧困で困っているのを見て、彼は自身の化石を売り、売り上げの約400ポンドをアニング家に与えた。ここ10年で初めて財政的な態勢が整ったことで、メアリーはジョセフが家具職人として勤め始めてからも化石採集を続けた。彼女の次の大発見は、1821年のプレシオサウルスの骨格化石の初めての発見であった。この発見は後にウィリアム・ダニエル・コニベアによって記載され、メアリーの発見した化石がその後タイプ標本となった。その後、1828年には新種の魚の化石やドイツ以外では初めてとなる翼竜(ディモルフォドン)の、全身の化石などを発見した[1]。
以上の3つの発見によってメアリーの名前は歴史に残ったが、彼女は生涯を通じて化石の発掘を続け、初期の古生物学に大きく貢献した。30代後半になると、イギリス学術振興協会から収入を得ることになったが、女性であるという理由により本や論文を出版することは許されなかった[1]。ヴィクトリア朝時代のイングランドにおいて、労働者階級の女性が教育を受けられる階級の男性と同じ仕事に携わっただけでも異例のこととされる[1]。メアリーは乳がんのため47歳で世を去ったが[2]、死の数か月前にロンドン地質学会の名誉会員に選ばれた[2]。結婚はせず、生涯独身であった。
科学に与えた影響
メアリー・アニングの発見した化石は、人々の知るどのような動物にも似ず、過去に絶滅があったことの証拠となった[1]。その頃までは、動物が絶滅するとは信じられておらず、奇妙な化石が発見されても地球上の未開の地に棲息している未発見の動物だと説明されてきた。当時の人々は、化石を「蛇石」「悪魔の足の爪」などとみなしていたとされる[1]。アニングの発見した化石はこのような議論に終止符を打つものであり、古代の生物への正しい理解を導いた。なかでもベアゾールとよばれる石が化石化した糞であると結論付けるに至る発見は、古代の生き物の暮らしを知るうえできわめて重要な発見であったとされる[1]。
メアリーは死後、一旦は忘れ去られたが、後に再発見され、ロンドン地質学会は彼女を追悼して教区教会の聖ミカエル教会にステンドグラスを作った。銘にはこう書かれている。「このステンドグラスは、1847年3月9日に亡くなったこの教区のメアリー・アニングを追悼するために作られたものである。これは、司教代理とロンドン地質学会の会員有志によって、彼女の博愛、高潔と地質学への貢献を記念して作られた。」
英国科学史ジャーナルは、メアリー・アニングを「世界の歴史上で最も偉大な古生物学者」と称賛している[3]。
メアリーは、She sells sea shells by the sea shore.(彼女は海岸で貝殻を売った)という早口言葉のモデルになった人物であると考えられている[1]。また、「アーティチョーク」というグループの歌、Anning, Maryの題材になっている。その人生はフィクション作品など、文学にも多くの影響を与えた[1]。★
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ケイト・ウィンスレット×シアーシャ・ローナン圧巻の共演
孤独、愛、人生の選択―
歴史に隠された古生物学者メアリー・アニングの心の痛みと恍惚を、繊細かつ大胆に描く美しきヒューマンドラマ</b>
【キャスト】
ケイト・ウィンスレット
シアーシャ・ローナン
アレック・セカレアヌ
ジェマ・ジョーンズ
ジェームズ・マッカードル
フィオナ・ショウ
【スタッフ】
監督・脚本:フランシス・リー
製作:イアン・カニング、エミール・シャーマン、フォーラ・クローニン・オライリー
撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ
編集:クリス・ワイアット
プロダクションデザイン:サラ・フィンリー
衣装デザイン:マイケル・オコナ―
メイクアップ・ヘアデザイン:イヴァナ・プリモラック
音楽:ダスティン・オハロラン、フォルカー・バーテルマン
【ストーリー】
人間嫌いで、世間とのつながりを絶ち暮らす古生物学者メアリー。
かつて彼女の発掘した化石は一世を風靡したが、今はイギリス南西部の海辺の町ライム・レジスで、観光客の土産物用アンモナイトを探して細々と生計をたてている。
そんな彼女はある日、裕福な化石収集家の妻シャーロットを預かることとなる。
美しく可憐で奔放、何もかも正反対のシャーロットに苛立ち、冷たく突き放すメアリーだが、自分とはあまりに違うシャーロットに惹かれる気持ちをどうすることもできず―。
内容(「Oricon」データベースより)
人間嫌いで、世間とのつながりを絶ち暮らす古生物学者メアリー。かつて彼女の発掘した化石は一世を風靡したが、今はイギリス南西部の海辺の町で、土産物用アンモナイトを探し細々と生計をたてている。ある日、裕福な化石収集家の妻シャーロットを預かることとなる。美しく可憐で何もかも正反対のシャーロットに苛立ち冷たく突き放すメアリーだが、自分とはあまりに違うシャーロットに惹かれる気持ちをどうすることもできず―。★
★Wikipediaより
『アンモナイトの目覚め』(アンモナイトのめざめ、Ammonite)は、2020年のイギリス・オーストラリア・アメリカ合衆国のドラマ映画。監督はフランシス・リー(英語版)、出演はケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンなど。 19世紀半ばの英国社会を舞台に、女性古生物学者と若き人妻が運命の恋に落ちていくさまを描いている[4]。
ストーリー
主人公をはじめとする主要な登場人物は実在の人物であるが、年齢設定は実際と大きく異なっている。メアリーはシャーロットよりかなり年上の設定だが、実際にはシャーロットの方が11歳年上である。
1840年代、イングランドのライム・レジス(英語版)。人間嫌いで古生物学者のメアリー・アニングは同地で老母と暮らしていた。若い頃に博した名声はもはや忘れ去られつつある中、メアリーは観光客にありふれた化石を売って生計を立てている。そんなある日、地質学者のロデリック・マーチソンがメアリーの元にやってきて、「ヨーロッパ旅行にでている間、妻のシャーロットの面倒を見てやってくれませんか」と頼み込んでくる。化石発掘に専念したかったメアリーだったが、高額な報酬に目がくらみ、つい引き受けてしまう。
当初、異なる価値観で生きてきた2人は衝突するばかりだった。しかし、お互いに孤独を抱えていることを知り、徐々にその距離は縮まっていく。そして、2人の間には恋愛感情が芽生え、ついに2人は結ばれる。充実した日々を過ごしていた2人だったが、シャーロットのもとに夫ロデリックから家に戻るようにとの手紙が来る。シャーロットは家に戻り、メアリーは元の生活に戻る。しばらくしてメアリーの母が亡くなる。シャーロットから亡母を悼む手紙を受け取ったメアリーはシャーロットから家に招かれる。ロンドンの屋敷を訪ねたメアリーは、シャーロットがメアリーと同居する準備をしていたことを知ると、自分を束縛しようとするシャーロットに反発して屋敷を出ていく。
メアリーは大英博物館
でかつて自分が発見した
の化石
を見つめる。そこにシャーロットが現れ、2人は視線を交わす。
キャスト
- メアリー・アニング: ケイト・ウィンスレット - 人間嫌いな古生物学者。
- シャーロット・マーチソン(英語版): シアーシャ・ローナン - ロデリックの妻。
- エリザベス・フィルポット(英語版): フィオナ・ショウ - メアリーと過去に関係のあった年上女性。
- モリー・アニング: ジェマ・ジョーンズ - メアリーの母。
- ロデリック・マーチソン: ジェームズ・マッカードル(英語版) - 地質学者。シャーロットの夫。
- リーバーソン医師: アレック・セカレアヌ - 村に新しくやって来た外国人医師。
- エレノア・バターズ: クレア・ラッシュブルック
製作
2018年12月14日、フランシス・リー監督の新作映画にケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンが出演することになったと報じられた[5]。翌年3月、本作の主要撮影がイングランドのライム・レジスで始まった[6]。12月3日、フォルカー・ベルテルマンとダスティン・オハロランが本作で使用される楽曲を手がけるとの報道があった[7]。
公開・マーケティング
2019年2月、ライオンズゲートUKが本作の全英配給権を、トランスミッション・フィルムズが本作の全豪配給権を購入した[8]。5月14日、本作の劇中写真が初めて公開された[9]。2020年1月25日、ネオン(英語版)が300万ドルで本作の北米配給権を獲得したと報じられた[10]。当初、本作は同年5月に開催される予定だった第73回カンヌ国際映画祭でプレミア上映されることになっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大のために映画祭自体が取りやめとなった[11]。その後、9月のテルライド映画祭で改めてプレミア上映が行われると決まったが、新型コロナウイルスのためにまたしても映画祭自体が中止となった[12]。
2020年8月25日、本作の合衆国版オフィシャル・トレイラーが公開された[13]。9月11日、本作は第45回トロント国際映画祭でプレミア上映された[14]。10月15日、本作の英国版オフィシャル・トレイラーが公開された[15]。17日、本作はロンドン映画祭のクロージング作品として上映された[16]。
評価
本作は批評家から好意的に評価されている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには249件のレビューがあり、批評家支持率は69%、平均点は10点満点で6.7点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「シアーシャ・ローナンとケイト・ウィンスレット―後者の演技は特に素晴らしい―のケミストリーのお陰で、『アンモナイト』は歴史恋愛ドラマが陥りがちな罠を回避することに成功した。」となっている[17]。また、Metacriticには41件のレビューがあり、加重平均値は72/100となっている[18]。★