『コープスブライド』
―この世のどんな物語より美しい―あの世に生まれた究極のバートン・ファンタジー
ホネまで愛してくれますか?
舞台は“死者の世界”!コープスブライドに連れ去られた若者の運命は――?
19世紀ヨーロッパのとある村。結婚を控えた気弱な若者ビクターが、ふとしたことから死体の花嫁(コープスブライド)に結婚の誓いを立ててしまい、死者の世界へと連れ去られる――。
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』から12年、ティム・バートン監督が新たなるストップモーション・アニメを完成。
しかも今作は盟友ジョニー・デップがビクターの声を担当。
最強のタッグが紡ぎだす最新型ファンタジーが誕生した!
『ティム・バートンのコープスブライド』(Tim Burton's Corpse Bride)は、2005年公開のティム・バートン監督によるロシアの民話を元にしたファンタジーアニメーション映画。1993年公開の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』同様、ストップモーション・アニメーション撮影で製作された。
アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートし、2005年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞の長編アニメ賞に輝いた。
あらすじ
時は19世紀、舞台はヨーロッパのとある小さな村。成金の金持ちだが品格のない魚屋のヴァン・ドート夫妻の息子ヴィクターは、由緒正しい身分ながら破産して一文無しの没落貴族であるエヴァーグロット夫妻の娘ヴィクトリアとの結婚が親同士の政略により着々と進められていた。お互い、逢ったこともない人と結婚することを不安がってはいたが、結婚式の前日、式のリハーサルのために初めて対面した2人は互いにまんざらでもない様子で、次第に両者ともに結婚に前向きになっていく。しかしドジなヴィクターは緊張の余り、リハーサルで失敗を連発。怒った牧師に式の延期を言い渡されてしまう。
切羽詰まった彼は一人、夜の森で結婚式の練習をする。すると、すらすらと結婚の誓いの台詞が言えてしまった。調子に乗ったヴィクターはその辺に突き出ていた枝を花嫁ビクトリアの指に見たて、指輪をそこへはめる。しかしその行動が一大事を引き起こす。枝だと思っていたのは“コープス・ブライド”の指だったのだ。婚姻の誓いを受けたと勘違いしたコープス・ブライド―エミリーはビクターを花婿と信じこみ、彼を地中にある“死者の世界”に連れ去ってしまう。
死者の世界は陰鬱とした空気に満ちた地上世界と大違いであった。24時間営業のパブ、地上世界のしがらみから解き放たれにぎやかに歌うガイコツたち、カラフルな色彩の建物。常識はずれのパワフルなエネルギーに満ちた死者の世界に、ヴィクターは次第に魅せられていく。その一方で、結婚詐欺によって殺されたエミリーの境遇に同情しつつなんとか地上に戻ろうと画策するが、生きている婚約者がいることを知られエミリーを傷つけてしまう。彼女の怒りをなだめるように弾き始めたピアノをきっかけに、ヴィクターはエミリーと心を通わせ、ただ一途に愛を追い求め続ける彼女の哀しみを深く理解していくようになる。そしてヴィクトリアとの再会を諦め、自ら死者となってエミリーの愛を受け入れることを決心する。
ヴィクターの故郷の教会で滞りなく式は進み、ついにエミリーの手からヴィクターへ、毒入りワインの盃が手渡された。しかし、エミリーは結婚の夢を奪われた自分が愛する人の夢を奪おうとしていることに気づいて寸前でヴィクターを制止し、駆けつけてきたヴィクトリアを笑顔で迎え入れる。生きた世界の2人の手を優しく重ね合わせ、エミリーは2人の幸せのために仲人として式を続けようとする。
そこへ、ヴィクターとヴィクトリアの式のリハーサルに姿を現し、ヴィクトリアの第2の花婿候補となった素性不明の男バーキスが乱入し、ヴィクトリアを我が物にせんと暴れ始める。エミリーは彼こそが自分を騙し死に追いやった詐欺師であったことを思いだし、彼の手から奪い取った剣を突きつけ出ていけと凄む。バーキスは怯みつつも憎まれ口を叩きながら毒入りブドウ酒の杯を口にしてしまい、たちまちの内に死者と化す。そして彼の所業に怒った死者の国の仲間たちの手により、死者の国へと引きずり込まれてしまった。
全てが終わった後、エミリーはヴィクターに指輪を返し、無数の蝶となって天に召されていくのだった。
キャラクター
主要人物
- ヴィクター・ヴァン・ドート
- 主人公の内気な青年。犬が好きでピアノが上手い。金持ち夫婦の間に生まれるが、日々の生活に息苦しさを感じ、階級違いの結婚に不安を抱いていたが、結婚式のリハーサル直前に対面したヴィクトリアに惹かれ結婚に前向きになる。しかし、肝心のリハーサルで失敗を繰り返してしまい、真夜中の森で式の練習をした際に誤って死体の花嫁エミリーと婚姻関係を結んでしまう。そのまま死者の世界へ連れていかれるが、何とか地上へと戻ろうと画策する。初めは、不幸な境遇に同情はするものの、死体であるエミリーを敬遠していたが、次第に彼女の健気さや一途な心を好ましく思うようになる。
- コープスブライド(エミリー)
- 本作のヒロインである、「死体の花嫁」。数年前に一文無しの恋人との結婚を父親に反対され駆け落ちを計画。決行の夜、母親のウェディングドレスで身を包み、ほんの少しの金と宝石を持って森で待ち合わせていたが、駆け落ちするはずだった恋人に殺害され、金と宝石を奪われてしまった。以後、彼女はウェディングドレス姿のまま死者の世界をさまよい、運命の人が現れるのを待っていた。そこへ現れたヴィクターからプロポーズされたと勘違いし、ヴィクターとの関係を深めようとするも生きている婚約者がいることを知って深く傷つき、生者と死者という壁ゆえに報われぬヴィクターへの想いに苦悩する。
- 当初は結婚への憧れからヴィクターと結ばれることに躍起になっており強引な面も目立っていたが、本来は心優しい性格であり、自分の結婚願望が生きている人間同士であるヴィクターとヴィクトリアの結婚を壊してしまうことに気づいて身を引いた。
- ヴィクトリア・エヴァーグロット
- 没落貴族であるエヴァーグロット家の娘で、ヴィクターの本来のフィアンセ。両親が勝手に決めた財産目当ての結婚に少し不安を感じていたが、相手のヴィクターと顔を合わせたその日に彼と心通わせ、彼と同様に心から結ばれたいと望むようになる。物静かでおしとやかな性格で、自分の気持ちとは裏腹に強引に決められた結婚に不満を抱きつつ諦めを覚えていたが、一目ぼれしたヴィクターがエミリーに連れ去られたことで、内に秘めていた芯の強さと行動力を発揮していくようになる。しかし高圧的な両親の態度には逆らえず、音沙汰のないヴィクターとの婚約を一方的に破棄された上、バーキスと結婚させられることになってしまう。
地上の世界
- ウィリアム・ヴァン・ドート
- ヴィクターの父親。魚の行商で財を成した成金であり、とぼけた性格で品格もない。妻のネルはお世辞で相手を持ち上げようとするが、それに対してウィリアムの方は、ちょっとしたケチを付けるような物言いをする。自分の魚店の商売を成功させ、大きな財を築く。妻のネルとともに上流階級への仲間入りを夢見ている。
- 妻とともに馬車に乗ってヴィクターの捜索に出たが、御者のメイヒューが呼吸器不全で死んでしまったことに気付かず、そのまま何処かに行ってしまう(その後の顛末は不明)。
- ネル・ヴァン・ドート
- ヴィクターの母親。肥満した体に高価な服や毛皮、帽子に扇子を身につけた成金婦人。夫と共に上流階級への仲間入りを夢見ている。ヴィクターが姿を消した夜、その夢のために必死に彼を捜索する。
- 捜索中、御者のメイヒューが呼吸器不全で死んでしまったことに気付かず、そのまま夫とともに何処かに行ってしまう(その後の顛末は不明)。
- フィニス・エヴァーグロット
- ヴィクトリアの父親。没落貴族で路頭に迷うことを恐れ、娘を成金と結婚させようと計画する。いらつきやすい。マスケット銃を用いようとすることが多い。
- ヴィクトリアとバーキスの挙式後、闇の中から現れた死者たちに恐れ慄いて逃げ出した。その後の顛末は不明。
- モーデリン・エヴァーグロット
- ヴィクトリアの母親。夫とは愛し合っていないと断言し、結婚に愛は必要ないと言う。音楽は情熱的過ぎるとしてピアノを弾くことを禁じている。
- 夫と同様、地上に現れた死者たちに恐れ慄いて逃げ出してしまい、その後の顛末は不明。
- メイヒュー
- ヴァン・ドート魚店の従業員で馬車の御者。呼吸器が悪いのか、しょっちゅう咳をしており、物語の途中で呼吸器不全で死亡、死者の世界でヴィクターと再会する。
- 死後は呼吸が楽になったことを喜んでいた。
- ヒルデガート
- 通称“ヒルデ”。エヴァーグロット家に仕えるメイドの老婆。ヴィクトリアの世話役も務める良き理解者。
- ヴィクトリアがバーキスとの望まない結婚に絶望している様子を見て、一人泣いていた。
- エミール
- エヴァーグロット家に仕える執事。エヴァーグロット邸に死者が大勢進入した際、主人たちを見捨てて逃げ出した。
- バーキス・ビターン卿
- 結婚リハーサルにいきなりやってきた謎の男。ヴィクターが行方不明になったことをいいことに、エヴァーグロット夫妻に取り入ってヴィクトリアと結婚しようと目論む。
- 地上に死者たちが現れてパニックになった際は、テーブルの下に隠れて怯えるという醜態を晒した。
- その正体は悪徳結婚詐欺師で、エミリーを騙したあげく死に追いやった張本人。
- エヴァーグロット家に資産がない事を知り、ヴィクトリアを人質に逃げ出そうとするも、エミリーら死者たちの助けを借りたヴィクターによって追い詰められる。
- 最期は負け惜しみと言わんばかりにエミリーに向かって憎まれ口を叩きつつ、そばにあったブドウ酒の杯を(毒とは知らずに)飲み干してしまい、たちまちのうちに死者と化す。
- そして彼の所業に怒った死者たちによって、死者の世界へと引き摺り込まれてしまった。
- ゴールズウェルズ牧師
- 非常に頭が固く、意地悪な牧師。ちょっとしたことで怒鳴り、ヴィクターを杖で叩く。
- ヴィクターがコープスブライド(エミリー)に攫われたことをヴィクトリアから訴えられても一向に信じず、逆に彼女を屋敷に連れ戻してしまった。
- 終盤、教会に入り込もうとした大勢の死者達を追い返そうとするも、教会で大声を出すというマナー違反を指摘されて茫然自失、為す術もなく押し入られてしまう。
- 町の触れ役
- ベルを鳴らし、大声で町のニュースを叫んで知らせる。ヴィクターの結婚リハーサルの失敗や、エミリーとの逢引きや姿の晦ましなど、情報を掴むのはかなり早い。
死者の世界
一般的に生者が死後に向かう天国や地獄とは異なる世界で、物語の舞台となる街の住人が死後に向かう場所。 無数の棺桶や歪んだ建物が立ち並ぶ不気味な様相とは裏腹に、そこに住む死者たちは地上のしがらみから解き放たれた反動で活力に溢れている。 キャラクターの肌の色や周りの景色などが全体的にくすんでいる地上と対比する形で、全体の色調が鮮やかに描かれている。
- マゴット
- エミリーの頭蓋骨の中に住み着いている蛆。
- 時にエミリーの頭の中で冷やかしの言葉をかけたりもするが、ヴィクターとの結婚式の為に新しいドレスに身を包んだエミリーを見て号泣するほどの良き理解者。
- 蛆は人の頭に住み奇想や妄想をもたらすという海外の伝承がモチーフ。
- クロゴケグモ
- 自称「後家さん(英語名のBlack Widow Spider のwidowにも、後家の意味がある)」。マゴットとはいいコンビで、ヴィクターの本来の婚約者の存在に悩むエミリーを共に励ましたりもした。
- ヴィクターとエミリーの結婚式が決まった際は、仲間の蜘蛛とともにヴィクターの服を縫った。
- スクラップス
- ヴィクターが子供の頃に飼っていた犬(物語冒頭に登場するヴィクターの幼少期の写真で生前の姿が確認できる)。亡くなって久しく、死者の国ですでに白骨化していたが、エミリーによって結婚の贈り物としてヴィクターに返された。死んでいるため、生前は得意技だった“死んだフリ”ができなくなっている。
- バーキスがヴィクトリアを人質に取った際、その右足に噛みついて隙を作った。
- グートネクト長老
- 死者の世界の頼れる長で、骸骨の老人。彼の部屋は埃の積もった本で溢れ返っている。定期的に薬を飲むのが習慣になっており、頭蓋骨のてっぺんが割れて開いている。エミリーの結婚に、知恵を貸す形で尽力する。
- ヴィクターとエミリーの結婚式の際は、神父役も務めた。
- ポール・ヘッド・ウェイター
- 生首だけの姿をした死者で、曰く「パブの“ウェイター頭”」。新たな死人が死者の世界にやってくるとすぐ急行し、自己紹介する。たくさんのゴキブリに首を持ち上げてもらって移動する。
- ミセス・プラム
- パブの女将さん。パブの料理やウェディングケーキを作っているが、男に目がない。
- 常に側にいる旦那らしき料理人は全身に包丁が刺さっており、左目がなく、もう片方の目と鼻はちょっとした衝撃で外れてしまうほど脆い。
- ヴィクターとバーキスの決闘の際、ヴィクターにナイフを投げ渡そうとして、誤ってフォークを渡してしまった。
- ちび将軍/ドワーフ将軍
- 大きな サーベルが身体に突き刺さっている小柄な将軍。サーベルの向きはその時々によって変わる。
- 相方の長身将軍とは日々杯を交わしている。
- バーキスが結婚式に乱入した際、胸のサーベルを引き抜かれてしまう。
- 長身将軍/ウェリントン将軍
- 腹部に大砲であいた大きな穴がある。ちび将軍の相方。特典映像の中では大砲(キャノンボール)将軍とテロップがあった。
- ボーンジャングルズ
- パブの人気バンドで、メンバーは全員骸骨。
- 帽子を被った下あごの大きいメインボーカルは片目の眼球があり、肉のある女に目がないらしい。
- 他のバンドメンバーは自身の一部を楽器にしつつ、バックダンスと演奏をこなす。
- ピアノ担当はサングラスを着用。
- アルフレッド
- いつもタバコを吸っている骸骨。妻のガートルートはまだ存命で、ヴィクターの結婚式の為に地上に出た際に再会する。
- 地上の教会に現れたバーキスがエミリーを殺した張本人と知った際は、驚きのあまり顎が外れた(文字通り)。
- エセル
- 貴婦人の姿をした死者。“上の階(地上の世界)”の存在を知らなかった。
- 夫は存命中で、アルフレッドと同じく地上にて再会する。
- スケルトンボーイ & ガール
- おもちゃのボートを持って水兵の格好をした骸骨の男の子と、金髪ツインテールでピンクのワンピースを着た骸骨の女の子。スクラップスとも仲良し。
- ヴィクターとエミリーの結婚式の際は、エミリーが入場する際のフラワーボーイ・フラワーガールを務めた。
- ハーフマン
- 体が正面から真っ二つに切れている紳士。パブでもお酒を半分しか頼まない。
- ヴィクターとバーキスの決闘の際は、使用している武器が違いすぎることに文句を言った。
- 老人の死者(名称不明)
- 初老の男性の死者。地上にて存命中の家族と再会し、幼い孫と抱き合った。
- これにより、地上世界の住民は死者たちがかつての家族や友人であることに気づく。
- エヴァーグロット家の先祖(名称不明)
- エヴァーグロット家の祖先。生前の写真が屋敷の額縁に飾られている。
- 他の死者同様、ヴィクターとエミリーの結婚式の際に地上に現れ、フィニスに酒を求めた。
上記の他にも、様々な死者が数多く登場する。
キャスト
役名 | 原語版声優 | 日本語吹替 |
---|---|---|
ヴィクター・ヴァン・ドート | ジョニー・デップ | 木内秀信 |
コープスブライド (エミリー) | ヘレナ・ボナム=カーター | 山像かおり |
ヴィクトリア・エヴァーグロット | エミリー・ワトソン | 小林さやか |
ネル・ヴァン・ドート | トレイシー・ウルマン | さとうあい |
ヒルデガード | 定岡小百合 | |
ウィリアム・ヴァン・ドート | ポール・ホワイトハウス | 鈴木勝美 |
メイヒュー | 宮澤正 | |
ポール・ヘッド・ウェイター | いずみ尚 | |
モーデリン・エヴァーグロット | ジョアンナ・ラムレイ(英語版) | 宮寺智子 |
フィニス・エヴァーグロット | アルバート・フィニー | 土師孝也 |
バーキス・ビターン卿 | リチャード・E・グラント | 山野井仁 |
ゴールズヴェルス牧師 | クリストファー・リー | 家弓家正 |
グートネクト長老 | マイケル・ガフ | 西川幾雄 |
クロゴケグモ | ジェーン・ホロックス | まるたまり |
ミセス・プラム | 磯辺万沙子 | |
マゴット | エン・ライテル(英語版) | チョー |
東西屋 | 大西健晴 | |
ちび将軍 | ディープ・ロイ | 宮田幸季 |
ボーンジャングルズ | ダニー・エルフマン | 南木直樹 |
エミール | スティーブン・バランタイン | 岩崎ひろし |
厳粛なビレッジボーイ | リサ・ケイ | 本城雄太郎 |
⛪⛪⛪⛪⛪⛪
親の「あっちに行っちゃいけませんよ」をブッチギッテ究極のあっちに行っちゃった話。
総お膳立てされた結婚を前に、全力反抗期を短時間で総コンプリートさせ人間成長階段を一気にかけ上がって、お膳立てをオリジナル料理に変える話。
生者のほうがよっぽど死んでる、死者のほうがよっぽど生きてるという真実。生きてるとはつまり、連綿とした繋がりが生きてる、繋がりの中にしか生きられないということで、しがらみしかない。全然自分自身になれない。
よって、そのような肉体関係(笑)が全部切れた死者の世界は、自分自身になれるサッパリ楽しい世界とも言える。
ティム・バートンの作品を観ていると、価値観が覆される。
社会的価値観、同調圧とは、もともと一人一人の感覚の「こうしたい」の集合だ。
しかし集合化、固定化が長引くと、それは化石化、悪しき因習になってしまう。
そのような、もとはwant「したい」がmust「しなければならない」になって人の生き辛さとなり首を絞めたり足枷になっているものものを、ティムバートンは解き放ってくれる。
究極の解放が、例えば骸骨の音楽、ダンス、なのだろう。
骸骨は死んでいない、哀れでもない。最も身軽な形態なのだ。人の悩みとは、つまり肉の悩み、しがらみの悩み。骸骨のようにただ「いる」だけならば、存在はもっとミュージカルでダンサブルなはずだ、という提示。
- ゴールズウェルズ牧師▼を観ていると、
- 本来心の救済の場であるはずの教会、宗教は、こういう牧師を名乗る人たちの権威発動の場、メディアにされてしまっていたんだな、と思う。それを、蘇った、権威が効かない死者たちが、暴く。
- ヴィクターとコープスブライド (エミリー)の結婚式
- をしようと教会に乗り込んだ死者たちにガミガミ喚く牧師に、「静かに、ここは教会なんだ」と骸骨が言う。教会は、もし本来の意味で考えるなら、心の公園のはずだ。しかし、他に心身の居場所のない牧師が威張る場所になってしまっていたのだろう。
- ★ゴールズウェルズ牧師★非常に頭が固く、意地悪な牧師。ちょっとしたことで怒鳴り、ヴィクターを杖で叩く。
- ヴィクターがコープスブライド(エミリー)に攫(さら)われたことをヴィクトリアから訴えられても一向に信じず、逆に彼女を屋敷に連れ戻してしまった。
- 終盤、教会に入り込もうとした大勢の死者達を追い返そうとするも、教会で大声を出すというマナー違反を指摘されて茫然自失、為す術もなく押し入られてしまう。★
- コープスブライドのエミリー。
- コープスとは死体という意味。
- エミリーは、数年前に一文無しの恋人との結婚を父親に反対され駆け落ちを計画。決行の夜、母親のウェディングドレスで身を包み、ほんの少しの金と宝石を持って森で待ち合わせていたが、駆け落ちするはずだった恋人に殺害され、金と宝石を奪われてしまった。以後、彼女はウェディング姿のまま死者の世界をさまよい、運命の人が現れるのを待っていた。そこへ現れたヴィクターからプロポーズされたと勘違いし、(あがり症のヴィクターは、ヴィクトリアとの結婚式のリハーサルで何度もミス。よって一人で練習していたら、土から出ていた死者のエミリーの指に指輪をはめてしまったのだ)ヴィクターとの関係を深めようとするも生きている婚約者がいることを知って深く傷つき、生者と死者という壁ゆえに報われぬヴィクターへの想いに苦悩する。
- 当初は結婚への憧れからヴィクターと結ばれることに躍起になっており強引な面も目立っていたが、本来は心優しい性格であり、自分の結婚願望が生きている人間同士であるヴィクターとヴィクトリアの結婚▼を壊してしまうことに気づいて身を引いた。
- エミリーと駆け落ちすると言って騙していたのがバーキス・ビターン卿▼。バーキスは悪徳結婚詐欺師(良徳結婚詐欺師はいないのだろうが、程度の問題だろう。「約束破りの複数付き合いのチャラい遊び人」程度ならただの結婚詐欺師。バーキスは強盗のための殺害までしているので、悪徳結婚詐欺師)。(画像向かって右)
- ★バーキス・ビターン卿★結婚リハーサルにいきなりやってきた謎の男。ヴィクターが行方不明になったことをいいことに、エヴァーグロット夫妻に取り入ってヴィクトリアと結婚しようと目論む。
- 地上に死者たちが現れてパニックになった際は、テーブルの下に隠れて怯えるという醜態を晒した。
- その正体は悪徳結婚詐欺師で、エミリーを騙したあげく死に追いやった張本人。
- エヴァーグロット家に資産がない事を知り、ヴィクトリアを人質に逃げ出そうとするも、エミリーら死者たちの助けを借りたヴィクターによって追い詰められる。
- 最期は負け惜しみと言わんばかりにエミリーに向かって憎まれ口を叩きつつ、そばにあったブドウ酒の杯を(毒とは知らずに)飲み干してしまい、たちまちのうちに死者と化す。
- そして彼の所業に怒った死者たちによって、死者の世界へと引き摺り込まれてしまった。★
- これはつまり、成仏できないエミリーの話。
- ヴィクターはたまたま巻き込まれた。
- しかし、ヴィクターの、あらゆることに対する弱気弱腰がなければこうはならない。とすると一つの出会い。
- この出会いにより、エミリーもヴィクターも魂のステージを何段も上がり、ヴィクターは愛する人とこれから生きることを選び、エミリーは晴れて成仏出来る。この、晴れて成仏できるという魂のコンディションになるには、ヴィクターとの時間が必要だった。ヴィクターのような、自身が弱くてすぐ他者に同期シンクロする魂との、交流が必要だった。
- そのヴィクターの、観察して絵を描いたらその蝶を逃がす優しさで、エミリーは癒され、枯れ葉が枝から自然に落ちるように諦めがついたのだ。
- こだわりも恨みも、諦めのつかなさ、執着。それを有効に使えば偉大なことを、私欲、私怨の為のみに使うと生きながらにしてゾンビストーカーになってしまうのだろう。人生には見極めと努力が大事、ということなのだ。エミリーの、結婚願望でしか自己実現の道や夢が持てないというのは、前時代までの女性の悲劇。この映画の舞台は19世紀。基になっているのはロシアの民話だ。今の人達には滑稽な笑い話に映るだろう。しかしロシアで話が生まれた当時の土壌には、生生しい、血なまぐさい実在の男女の色々があったと想像する。また当時、男女の色々以外に物語はなかったことだろう。よって深刻も軽みも男女関係の話となる。村祭りの内容同様、男女関係の延長の子孫繁栄と作物の成長収穫の為の天候の安定以外に関心を持つ必要はなく、それだけが肝心で、それだけに注力するのでいっぱいいっぱいで、それ以外に関心を持つ人は集団に益をなさないダメな人、怠け者、変な人として排斥されたことだろう。
- エミリーが死者の世界に来たヴィクターと束の間心を通わせ安らぎを得て、最後に肉体から解放されて成仏でき、良かったと思う。この連弾▼のフィーリングの合い方が切なかった。エミリーはきっと、初めて人を愛したのだ。それがヴィクターで、だから自分も成長でき、よって相手の本当の幸福を願って身を引けたのだ。本当の愛とはきっと、寛大をもたらすのだ。愛も美も、より大きい、より広いものを希求する魂の正のベクトルなのだ。
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ティム・バートンには愛犬が死んだという悲しい過去があるのだろう。そうでなければ犬の骸骨があんなに生き生きしている訳がない。(▼スクラップスという名の犬の骸骨)
パッチワークや継ぎ接ぎ(つぎはぎ)の可愛さ、不出来の愛しさ、をティム・バートン作品にはいつも感じる。それはそのまま、生きている人間の可愛さ、愛しさなのだ。
ストップモーション制作会社ライカが生む作品の質感と空間と時間感覚が大好き
音楽はダニー・エルフマン
★ダニー・エルフマン(Danny Elfman、1953年5月29日 - )は、アメリカ合衆国の音楽家[1]。ロックバンドのオインゴ・ボインゴの元リーダー[1]。カリフォルニア州出身。★
主な作品 | |
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『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』 『スパイダーマン』 『バットマン』 『マーズ・アタック!』 |