『スポンジ・ボブ スポンジ・オン・ザ・ラン』
世界中で大人気のスポンジ・ボブ、新作映画が待望のリリース!
勇気は心の中にある!押し寄せる笑いの大波で、みんな最高にハッピー!
■NHK Eテレで放送中の「スポンジ・ボブ」
映画最新作が遂にブルーレイ&DVDリリース!
グッズも多数販売され、日本でのキャラクター認知も抜群のスポンジ・ボブ。
『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ ザ・ムービー』(04)、『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!』(15)に続く映画版第3弾!
■映画版の見どころはCGアニメと実写の融合!
実写のゲスト出演はキアヌ・リーブス!
キアヌ・リーブスが“転がり草の賢者(セージ)"となって、スポンジ・ボブとパトリックに知恵を授ける!?
他にもスヌープ・ドッグ、ダニー・トレホら豪華ミュージシャン&俳優陣が実写にてゲスト出演!
さらにオークワフィナ(『フェアウェル』『オーシャンズ8』)が声で出演!
■2018年に死去した原作者ステファン・ヒーレンバーグに捧げられた作品。
【ストーリー】
突然さらわれたスポンジ・ボブの大切なカタツムリのペット、ゲイリーを救うため、スポンジ・ボブと親友パトリックが立ち上がる!
果たしてゲイリーを無事取り戻すことはできるのか?
なぜ人間ではないスポンジボブに感情移入できるのか。
スポンジボブの「身の回り」に見覚えがあるからだ。
スポンジボブの家の構造、仕事先のキッチンは「知っている」。「うちと同じ」。
人は、身の周りが似ていると、その現場に感情移入するのだ。できるのだ。脳が「そこはここ、ここはそこ」と錯覚するのだ。
その身の回りの範囲とは、まずコックピットレベル。
手が届く範囲。
ここが似ていると、自分だ、と誤認識する。
そして感情移入する。出来る。あとはどんなに動いても大丈夫。もう感情移入が完了しているから。
コックピットの範囲というと、「コポちゃん」
の作者・植田まさし先生の仕事場を想起する。
正にコックピット。自家製マジックハンド▼を使って、座りながらどこにでも、延長ハンドが届く(笑)。
部屋内高枝切りバサミ。
高枝切りバサミ。
スポンジボブは海綿動物。よって海中に住んでいる。(淡水に棲む海綿動物もいる。)
★海綿動物(かいめんどうぶつ、英: sponge)は、海綿動物門(羅: Porifera)に属する動物の総称である。海綿、カイメンなどとも表記される。
熱帯の海を中心に世界中のあらゆる海に生息する。淡水に生息する種も存在する。壺状、扇状、杯状など様々な形態をもつ種が存在し、同種であっても生息環境によって形状が異なる場合もある。大きさは数mmから1mを越すもの(南極海に生息する樽状の海綿 Scolymastra joubini)まで多様である。多細胞生物であるが、細胞間の結合はゆるく、はっきりとした器官等の分化は見られない。細かい網目状の海綿質繊維からなる骨格はスポンジとして化粧用や沐浴用に用いられる。★
水の抵抗がないという描き方。時々泡を吐く絵と音が出るのでそのとき海底であることを思い出すが(笑)、大体は思い出さない(笑)。それは地上の感覚と同じ。いちいち、自転公転している地球という星の表面に張り付いているのだということを気にしていたら、身が持たない。
比較的硬いサンゴが、海底の建築物めいてくる。
スポンジボブの職場、バーガーショップでの掃除シーンが楽しい。
ボブはスポンジであるため、水を大量に含むことが出来る。
スポンジの面白いのは、帯水すると体重が、自己同一性を破るほど増えることだ。
そこがスポンジのミラクル感。
自身は超軽い。しかし、その分、水の家となる穴が空きまくりで、自分より水に体重を乗っ取られてしまうところが面白い。水を最大限含んだスポンジは、体重的にはもうスポンジではない。水だ。つまりスポンジは水分を含むと、体重的には別人になってしまう。しかし絞り易い本人を最大限絞れば、水を追い出せる。そして何事もなかったかのように、体重的にはまた元の本人。
そこが、スポンジというものの変幻自在の面白さ。身の内に持つ他者性の可能性。自分が、自分じゃなくなってしまう!存在最大の危機に侵されたかと思いきや、解決策は「自身を絞る」。自身の体重が他者、水に乗っ取られたときの対処法が、自身の体積の最小化という、量の嵩解決(かさのかさかいけつ)。
スポンジボブは、バーガーショップで天然ぶりを発揮しまくっている。
そのカーニーバーガーのレシピを盗もうとしているライバル会社のプランクトンの調査では、スポンジボブに要注意、となる。
「あいつは予測不可能。一番敵わないのはああいう奴」となっている。
案の定。ライバル会社のプランクトンが忍び込んでバーガーのレシピを目の前で盗もうとしているのにそんなことはお構いなし。
ボブは自分の家の鍵を捜しに戻ってきたのだが、「あ、ポケットの中にずっとあったんだ!」というボケぶりを最大限に発揮。
「ほんとだ、あいつには敵わねえ……」と忍び込んだプランクトンも納得。
その頃、七つの海を支配する3000歳(笑)なのにピッチピチの(笑)ポセイドン王は、仕事そっちのけでお肌の皺に悩んでいた(笑)。ナンバーツーに進言されても、「己の肌も守れずに、国が守れるか」とポセイドン王。この論理には納得(笑)。些末を疎かにする者は大事も見失うだろう、というような。古今東西の帝王学のような。ナンバーツーも、これにはなるほどと納得する。
肌の皺対策にはカタツムリのヌルヌルの分泌液が有効。しかしカタツムリは不足している。
ポセイドン王は、海底の民に通達を出した。
曰く「カタツムリを差し出したら願いを叶えてやる」。
その通達を読んだライバル会社のプランクトンは、「これはちょうどいい!スポンジボブのペットのゲイリー(カタツムリ)をつかまえて……」と企む。
スポンジボブが「ゲイリー、ただいま」と家に帰ってくると、ゲイリーはどこにもいない。
スポンジボブは盛大に泣き出す。
(二人が初めて出会った、サンゴキャンプ▼のことを思い出してはまた号泣。)
ハッと泣き止むと、スポンジボブは「ゲイリーを捜してます」のビラを、街じゅうに貼りまくる。
その貼り紙を見た親友のパトリックが、「大変だ!ゲイリーが行方不明だ!」とスポンジボブの家にやって来る(笑)。
(パトリックとスポンジボブ▼)
泣いているスポンジボブを見たパトリックは、「可哀そうに、何が手掛かりはないか……」と辺りを見回し、ゲイリーのトイレの中にあの、ポセイドン王の通達貼り紙を見つける。
スポンジボブが旅の本を開くと、そこには、「ポセイドン王は気まぐれで残忍で、家来の処刑を見せしめにすることもある。旅のアドバイス【絶対行っちゃ駄目!】」と書いてある。
「自分はなぜすぐポセイドン王の宮殿を目指さないのか?それは勇気がないからだーー!」と自問自答して泣き出すスポンジボブ。
「勇気の次に必要なものは何だ?友達だよ!」とパトリック。
「冒険の匂いがしてきた!」とスポンジボブが言って、二人は、ゲイリーを救うためにポセイドン王の宮殿を目指すことになった。
しかし移動手段がない。
と思っていると、そこへオートボートがやって来て、その上にはあの一つ目の緑のプランクトン。
プランクトンは、二人にオートボートを提供。
二人が乗り込んで「オート、ゲイリーを捜して」と言うと、「了解」とオートが動き出し、岩に追突。もっと詳しく言わなくちゃとスポンジボブが「カタツムリのゲイリーを捜して」と言うと碇に追突。プランクトンが「アトランティックシティーに連れて行き、二度と戻るな!ちょっと大げさに言わないと」と言うと「かしこまりました」とオートは動き出した。
その頃、スポンジボブのいないバーガーショップの前には、お客さんが長蛇の列。
困った支配人たちは、「スポンジボブがいてくれたらいいのに!」。
パトリックとスポンジボブを乗せたオートは、西部劇の舞台のような乾いた町に着く。
二人を降ろすと、オートはどこかに行ってしまう。
困っていると転がり草が転がって来て。中にはキアヌ・リーブスの頭(笑)。
賢いセージです、とキアヌ(英語ではsageはセージの意味でもあり、賢いという意味でもある。)。
二人が困っていると言うと、キアヌは挑戦のコインをくれる。
目の前の西部劇スイングドアを通って中に入ると、そこにはゾンビたち。「キミたちの使命は、ゾンビたちの魂を解放することだ」とキアヌ。「夢じゃなかったらムリだよ」とパトリック。この「夢じゃなかったら」とか「これは夢じゃない」という言葉がよくファンタジーには出てくるが、こう言うことで、ファンタジーの中のリアルを裏打ちをしているのだろう。
ファンタジーがまず夢なのに、その中で「これが夢か否か」を問うのはナンセンスと言えばナンセンス。しかし、そのように普通に、観客と同様の問答をキャラクター同士がし合うことで、観客は画面の向こうに同期し、どう見ても地上事である海底の町の住人になる。
ゾンビにビビっていたスポンジボブは、「これはどうせ夢だ、魂を解放してあげる」と気楽になって歩き出す。すると、ゾンビたちの親玉、悪党のエル・ディアブロがやって来る。
ディアブロは実写。
二人はディアブロによって鳥籠のようなものに閉じ込められ、囚人と言われる。
ディアブロがナイフを研ぎ出すと、
二人は「これは二人が見ている夢です」と言う。
すると「誰が言った」とディアブロ。
「夢じゃない!」とディアブロは目からビームを出し、それで鳥かごを破壊。
夢じゃないことの証明とは、つまり予想外、都合の悪さ、ということなのだろう。
我々は、こんなに想定外で都合が悪いのだから、これは現実というものに違いない、と信じて生きている。
しかし、そのような想定外で都合の悪いことしか起こらない夢を、我々はずっと見続けているのかもしれない。
セージ、キアヌがくれたコインを見せると、ディアブロはそれを馬鹿にする。
ディアブロは、カーテンから漏れた光で焼けた。二人がカーテンを開くと、外からの光に当たってディアブロは消滅した。
ディアブロが消滅すると、ゾンビたちの魂が解放され、消滅した。
魂の解放とは、肉体からの解放というイメージ。
ゾンビとは、成仏できない魂が肉体に残っているということだろう。
ラスボスの消滅で魂が肉体から解放されるというのは、最悪が消え、それより小さい悪は全て、恩赦のように意味をなさなくなったということだろう。
これで挑戦をクリアしたとなった二人。
晴れてゲイリーを捜せるぞ、と喜ぶ。
西部劇ドアを開くと、そこにはオート。ディアブロは黒い竜巻のようになって追いかけてくる。
逃げると、「起きろ、夢はクビだ」とオート。起きる二人。海の底に戻っている。
さっきの乾いた西部劇シーンは全部夢だったとなる。
ここは納得。やはりあれは地上だから夢だったのかと。
しかし、セージのキアヌがいる。
そこはリアル。
「ゲイリーが見つからない。様子を知りたい」と言うと、
セージは「四次元の不思議な枠を使えば、今、別の場所で起きている出来事が見える。『その頃あちらでは』の窓だ」と言う(笑)。こどもの物も、アイディアが一周回った現在、常にお話の相対化、メタフィクション化が必要なのだろう。
こども向けのファンタジーほど、形而上的になってゆくということになる。しかし魂の包容力は幼年ほど大きいので、それでいいのかもしれない。
「何これ」とパトリックが言うと、「動画の同時配信みたいなものだ」とセージは言う。動画の同時配信とは、霊の瞬間移動だ。又は、霊の、一時複数所在化だ。又は、霊の瞬間細胞分裂だ。
ゲイリーが見える。ゲイリーはポセイドン王に大事にされている。しかしその大事は、条件付き。ゲイリーが分泌するヌルヌルの美容液が切れたら、即刻廃棄処分だ。
マジックミラーのような仕組みで、ゲイリーにはこっちが見えないしこっちの声も聞こえない。
その頃、スポンジボブが働いていたバーガーショップは廃業近く。
「負けを認めて秘密のレシピをよこせ」と、緑の一つ目のプランクトンは支配人に迫る。
ベルトのバックルから小瓶に入った秘密のレシピを出したザリガニ支配人は、「持ってけ」とそれをプランクトンに渡す。
すると手応えを失って呆然としたプランクトンは「諦めるのか?」。
「お前には分からんだろう。なぜか、この店は、スポンジボブがいないと、やっていけないんだ」とザリガニ支配人。
「この時を迎える為に人生を捧げてきたんだ。復讐の楽しみを奪うな!」と、あっけなく退散したザリガニ支配人に怒るプランクトン。
「奥さんによろしく」とすっかりやる気を失った支配人は退出。
拍子抜けしたプランクトンは、「勝ったぞーーー」と言うが、全然覇気がない。
海底王国アトランティックシティに着いた、オート。
「きれい!」と盛り上がると、「気を付けろ、すべて歪みだ。」とセージキアヌは未来の浦島太郎を諫めるような警句を言う。
「決して道を踏み外すな。集中力を失うな。なぜここに来たかを忘れるな」とセージは二人に言う。
「大丈夫、セージ先生。僕はゲイリーのことを世界一愛しているんだから」とスポンジボブ。
言ったそばから都会の誘惑に目を回す二人。
食べて飲んで遊んで、カジノでお金をプラスチックのゲームチップに替えてしまうスポンジボブ。
踊り狂ってさんざん遊びこけ、ゴミ箱の前で倒れていると、セージ先生がやって来て、
「せっかく授けた知恵が水の泡だ。集中力を失ったな?思い出させてやろう。取り戻しにきたんだろう?とっても大事なものを」と、ゲイリーのことを思い出させる。
二人に愛想をつかしたセージ先生に縋る二人。
するとため息をつきながら、セージ先生は「キミたちは運がいい。ここはポセイドン王の宮殿の前だ。仕切り直しだ。行け!」と言う。
謁見を希望すると、却下。
二人はどさくさに紛れ、ポセイドン王が観ていた舞台の上に上がってしまう。
「早くパフォーマンスを見せてくれ」と王。
二人は、パフォーマンス中に、王が美容液として顔に塗っているゲイリーを発見。
突進して「ゲイリーを返してください」と言うと「この子の名前はフレッドだ」。
フレッド、ゲイリー、フレッド、ゲイリー、と取り合う。
ゲイリーはガラスの容器に閉じ込められる。
その頃スポンジボブが働いていたバーガーショップには、潜水服を身に着けたリスが
やって来て、スポンジボブを捜す。
支配人は、スポンジボブがいないと困るんだ。稼げないからじゃないぞ。それも半分あるが、いないと悲しいんだ。
居候的な軟体動物も、同意。
その時、テレビのニュースが流れた。「カタツムリ窃盗未遂により、二人の容疑者を逮捕」。その二人とは、パトリックとスポンジボブだった。
そして今夜、二人の処刑が行われるとの報道。
驚く三人。
こうなった元凶のプランクトンも行くと言い出し、四人でポセイドン王の宮殿へ。
牢屋の中のパトリックとスポンジボブ。
「計画に集中して」と車の中の潜水服リス。
集中という言葉が何度も出て来る。今の時代、集中できるか否かが非常に重要だろう。
誘惑や情報は無限。その中でどの一点を選び、そこに注力するか。
とにかくそれが重要だ。
このようなアニメで繰り返される警句は、そのままこの時代の、ハマったら死ぬ沼が何であるかを言い得ている。
四人がポセイドン王の国に来ると、「海綿とヒトデの処刑ショー」の横断幕。
パトリックはヒトデだったのかと気づいた。
道理でボブはパトリックと喧嘩したときに「石の脳」と罵り、パトリックはその後頭から小石を出した訳だ。言われると五芒星で、もうヒトデにしか見えない。
ゲイリーは海カタツムリ。
リスは弁護人として、スポンジボブを弁護。
「スポンジボブは、わたしが科学者になんかなれないと言うのを、そんなことない、きみは何にだってなれるよと言ってくれた、海底一優しい人です。どうぞ彼を傷付けないで」と弁護。
パトリックは「スポンジボブはぼくがキャンプでホームシックになっているとき、ともだちになってくれた優しい人だ。」と弁護。
バーガーショップの支配人は、「ボブは、何にでも一生懸命なんです。前は、この店の秘密のレシピが繁盛の理由だと思っていたんですが、本当の秘密のレシピとは、そこに座っているボブなんです」
仲間全員がスポンジボブを弁護。
ボブは感涙。
プランクトンも応援。
ポセイドン王がみんなのパフォーマンスに拍手して気が緩んだとき、ボブたちはゲイリーを偽物にすり替えた。
そして逃走。
しかし追いつかれるスポンジボブたち。
するとポセイドン王は、「パフォーマンスが楽しかったから、許してやろう。訴えは取り下げだ。ただ一つ条件がある。そのカタツムリを返せ。そうしたら他の全員を逃がしてやる」。
一瞬怯むボブ。しかしセージ先生が心の中に現れ、「勇気はきみの中にある。それは必要な時に出てくる」と言う。
ボブは目を輝かせ、
「ぼくとゲイリーは、お互いに大好きなんです。一緒にいないと悲しいんです。絶対に離れません。今夜は、最高の仲間のおかげで、心がいつもの二倍大きくなりました。」
ボブが自分のともだちの素晴らしさを言うと、ポセイドン王も自慢をしようとする。しかし王には実は一人もともだちがいなかった。
ポセイドン王が号泣すると、「ぼくが友達になるよ。友達のペットは奪わないよね?」
喜んだ王は、若作りの一切をやめ、海底のすべての動物に優しくなることを誓った。
廃棄されたカタツムリたちは死んでいなかった。彼等を解放し、ボブは引き取ることにした。
日常が戻ってきた。
町には海カタツムリ保護区も出来、一段バージョンアップした幸福が生まれている、というところでエンディング。
BGMはなんとアーハのテイクオンミー。
とにかく、濁り皆無な元気が表現されたキャラクター、スポンジボブ。
原作はステファン・ヒーレーンバーグ