『ボックストロール』
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の世界最高峰映像工房スタジオライカ製作、
日本未公開の傑作ストップモーション・アニメ!
【キャスト】
エッグス:アイザック・ヘンプステッド=ライト
ウィニー:エル・ファニング
スナッチャー:ベン・キングズレー
リンド卿:ジャレッド・ハリス
シンシア・ポートリー・リンド:トニ・コレット
ハーバート:サイモン・ペグ
Mr.トラウト:ニック・フロスト
【スタッフ】
監督:グラハム・アナブル、アンソニー・スタキ
脚本:イリーナ・ブリヌル
原作:アラン・スノウ
製作:トラヴィス・ナイト
音楽:ダリオ・マリアネッリ
【ストーリー】
チーズブリッジの町では、夜な夜な現れては子供を襲って食べるという恐ろしいモンスター“ボックストロール"の噂が信じられていた。
町の権力者であるリンド卿は、悪徳害虫駆除業者のスナッチャーに駆除を依頼し、トロールたちは次々と捕えられていく。
そんな人々に忌み嫌われるトロールたちと地下で楽しく暮らしていた人間の男の子エッグス。
噂とは異なり、寝静まった夜の町でガラクタを集めては発明に勤しむ心優しいトロールたちであったが、エッグスの親代わりのフィッシュまでも捕獲されてしまい、
救出のために地上に出たエッグスは初めて人間の社会を知ることに。
大切な家族を取り戻すため、エッグスはリンド卿の娘の勝気な少女ウィニーと共にスナッチャー率いる駆除軍団に立ち向かっていく―。(Amazon商品ページより)
ボックストロール(The Boxtrolls)は、2014年のアメリカのストップモーション・アニメーション映画。
概要
アラン・スノウの「Here Be Monsters」という小説を元に制作された、「ボックストロール」と呼ばれるモンスターたちと、ボックストロールに育てられた少年の冒険を描くアニメーション映画。第87回アカデミー賞の長編アニメ映画賞とゴールデングローブ賞アニメ映画賞にノミネートされ、アニー賞では9部門にノミネートされ声優賞と美術賞を受賞した。
日本では、アメリカでの公開から4年後に、東京都写真美術館ホールにて、「スタジオライカ特別上映」として、「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」「コララインとボタンの魔女」と併せて特別上映された。
あらすじ
チーズブリッジの町には、夜な夜な地下から現れては、子供を襲って食べると言われている、ボックストロールという名のモンスターたちがいた。その存在を恐れるリンド卿は、害虫駆除業者のスナッチャーに彼らの退治を依頼した。
しかし実際は、夜の町でゴミをあさって、発明に明け暮れる毎日を送る平和なモンスターだった。彼らは次々捕らえられてゆき、地下で彼らと暮らしていた人間のエッグスは、自分を育ててくれたトロールのフィッシュが捕まったと聞き、彼らの救出のために初めて地上に上がったのだった。
キャスト
- エッグス:アイザック・ヘンプステッド=ライト
- ウィンフレッド・"ウィニー"・ポートリーリンド:エル・ファニング
- アーチボルト・スナッチャー:ベン・キングズレー
- フィッシュ:ディー・ブラッドリー・ベイカー
- チャールズ・ポートリー・リンド卿:ジャレッド・ハリス
- シンシア・ポートリー・リンド:トニ・コレット
- ハーバート・トラブショー:サイモン・ペグ
- Mr.ピクルス:リチャード・アイオアティ
- Mr.トラウト:ニック・フロスト
- Mr.グリッスル:トレイシー・モーガン
- ラングスデイル卿:モーリス・ラマーシュ
- ブロデリック卿:ジェームズ・アーバニアク
- ブーランジェ卿:ブライアン・ジョージ
制作
2008年6月、ライカは開発中のプロジェクトを発表し、その中には、アラン・スノウの小説「Here Be Monsters!」のアニメーション化された長編映画も存在した。
ライカは2013年2月7日、「The Boxtrolls」というタイトルの3Dストップモーションアニメを発表した。 ライカのCEOであるトラヴィス・ナイトは、「550ページの小説を90分の映画に凝縮することが最大の課題である」と指摘した[3]。(Wikipediaより)
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これがストップモーションアニメーションとは信じられない。
そういう動きの滑らかさ。
しかし、このキャラクターの物体感は、その方法でないと生じないのだろう。キャラクターの存在感に見惚れてしまい、そのキャラクターが動くだけでも嬉しい。この気持ちは何だろうと脳内検索すると、『プリンプリン物語』にヒットした。
プリンプリンと仲間の、人形だからこそのボディーのリアリティー。光の当て方次第で、人形たちは今という時間をクリエイティブに造形する。
主人公の男の子エッグスの、肌と目の質感の違いのコントラストが芸術的。ジュモーなどの陶器人形を想起した。
アーモンドアイが特徴の、ジュモー社の陶器人形。
この映画のこどもたち、女の子のウィ二―▼と男の子のエッグスも、アーモンドアイ。
エッグス▼は、ほとんど顔幅いっぱいが目。それがエッグスの性格、性質に合っている。エッグスは、まるで全身センサー。全身が感覚器。全身が触角で出来ている昆虫のよう。つまり、ザ・子供。
エッグスは、トンボに似ている。
トンボの目。
エッグスの立ち姿と、ボックストロールたち。
トンボの縦姿。
エッグスは赤ちゃんのとき▼、
人を食うモンスターということになっているボックストロール▼に
さらわれて食われて死んだことになっていた。
しかし、実は、発明家のお父さんが、この町チーズブリッジ▼の
悪徳害虫駆除業者のスナッチャー▼
から守るために、窓から赤ちゃんだったエッグスを投げ、偶然そこにいたボックストロールのフィッシュが、エッグスをキャッチして、▼
地下で育てていたのだった。
ボックストロールは、町ではモンスターとされていたが、実は妖精的キャラクター。
ムーミントロールに近い平和主義者たち。
地下に住み、真夜中に地上に出てゴミを拾っては、それを材料にして発明品を作っている。(この設定に、ワクワクする。)
ボックストロールたちは恥ずかしがり屋で、自己防衛の為に箱に入っている。何かあるとすっぽり箱に入り、蓋を閉じる。
箱から出られないと思い込んでいる。
これは鉢かつぎ姫っぽい。
▼成長したエッグスと、エッグスが自分の父親だと思い込んでいる、ボックストロールの、フィッシュ。
エッグスには本当のお父さんの記憶がない。
ここ(町の地下)▲しか知らないため、エッグスは自分もボックストロールだと思い込んでいる。
この設定が面白い。
ジャングルで狼に育てられた少年のアニメ、『狼少年ケン』を想起した。
ウィ二―▼は、
この町の貴族、チャールズ・ポートリー・リンド卿の娘。スナッチャーは、リンド卿の白い帽子がどうしても欲しい。スナッチャーはリンド卿に、
「この町の人食いモンスターは、あなたの大好物のチーズを食ってしまいます、全部駆除したらその白い帽子をもらえますか?」と取引を持ち掛ける。この町チーズブリッジの人々はチーズが大好物。その中で貴族となれば、最高級のチーズを好む、ということになる。
ウィニーのお父さんであるリンド卿は、スナッチャーから「赤ちゃん(エッグス)がボックストロールに食われた」と聞いてもびくともしない。しかし「あなたの大好物の、あの貴重な〇〇チーズが食べられてしまうかもしれない」となると、とたんに大変という顔になり、スナッチャーとの取引をすることになる。この取引をしたから、ボックストロールたち全員が駆除対象になり、危機に直面する。
このスナッチャーの欲望とリンド卿の愛のなさが、イコールこの町の悪。
このリンド卿の造形にリアリティーがある。
娘のウィニーも、お父さんに似た高慢なところがある。
しかしこどもであるウィ二―には、可塑性があり、刺激を受けるとそれによって変わる、変われる可能性を持っている。
エッグスは、駆除されそうになるフィッシュや仲間を救うために、地下から地上に出て、
ボックストロールたちが監禁されているスナッチャーのアジトに忍び込む。
その過程で、ウィ二―はエッグスを目撃する。
そして接触。
ここで、相互に急速に情報交換がなされる。
ウィ二―はエッグスに、「なんで『ぼくたち』って言うの?あなたはボックストロールじゃなく、人間でしょ?」。
エッグスは、父親というものについてレクチャーするウィ二―に、「じゃあなんで、きみのお父さんはきみの言う事を信じてくれないの?」。
ウィ二ーのお父さんは、ウィ二―が言うことを真剣にはきいてくれないのだ。
この辺りが現実、という感じがして良かった。
現実はそんなにファンタジーじゃない。
このウィ二―とエッグスの出会いが必然的で、素晴らしかった。
幕一枚隔てた濃度の違う水が、互いに水を移動させて濃度を同一にしてゆくような出会い。
ウィ二―はエッグスを通して、ボックストロールがモンスターではなく平和主義者たちだと知り、エッグスと一緒に彼らを救出しようとする。
最終的に、リンド卿の娘であることを利用して父に訴えそれが役に立ったりもする。
父親には暖かな親心が戻り、
ラストでは「うちの可愛いへんてこ天使」と言ってウィ二―のショーに拍手したりする。
スナッチャーは、実はリンド卿が大ファンである歌姫の正体。
そこも、社会の真実を穿っていると思った。
似た者同士が寄り合う。
同じ波長のもの同士が心の会話をする。
リンド卿とスナッチャーは、共に欲張りの見栄っ張りの威張りん坊の暴君。
スナッチャーは自爆するが、リンド卿は、正義感に満ちた娘のまっすぐさで、正気を取り戻すことになる。
このボックストロールというトロールの設定が凄い。
彼等は、箱が体の一部のように思い込んでいる。脱げない、と思い込んでいる。
これはまるで、安倍公房の『箱男』。
★「箱男」の発想のきっかけとしては、浮浪者の取り締まり現場に立ち会った際、上半身にダンボール箱をかぶった浮浪者と直に遭遇してショックを受け、小説のイマジネーションが膨らんだと語っている[10]。★
この箱が、臆病の比喩、思い込みの象徴として使われているのだ。
スナッチャーのアジトで、捕らえられたボックストロールたちは、圧縮機でペチャンコにされようとしていた。
吊るされて身動きのとれないエッグス。
エッグスの隣には、髪ぼうぼうで逆さづりにされている「狂人」。
実は彼こそ、生きていたエッグスのお父さん。
10年間逆さ吊りにされ、お父さんはどうかしてしまった。
スナッチャーに言われて父親なのだとわかるエッグス。
しかしお父さんは、「ゼリー」などと訳のわからないことを言い続けるばかり。
けれどトロールたちがプレスされる寸前、
「彼らは分かっている、変わるには自分で変わらないといけないことを」とお父さんは一瞬正気になったような冷静さで、言う。
その言葉にはっとなるエッグス。
「ボクも変われた、箱から出られた!みんなも変われる!」とボックストロールたちに叫ぶ。
しかしプレス機が落とされ、箱は全部ペチャンコ。
しかししかし、エッグスの声にハッとなったフィッシュは、仲間を促し全員を箱から脱出させ、「裸」で逃げていたのだった。
スナッチャーはアレルギーのチーズを食べて爆発(笑)。
トロールたちは箱なしで地上で生活を始めた。
適材適所の職に就き、町に馴染んで住民とも仲良し。
エッグスと、正気に戻ったエッグスのお父さんは、育ての父親フィッシュと、一緒に車に乗って家に帰るのだった、
というハッピーエンディング。
★ライカ(Laika, LLC.)はアメリカ合衆国のアニメーション制作会社。ストップモーション・アニメーションの映画やコマーシャルを制作するスタジオとして知られている。
沿革
2005年、ポートランドでストップモーション・アニメーションを制作していたウィル・ヴィントン・スタジオ(Will Vinton Studios)の流れを汲む形で、ナイキ創業者であるフィル・ナイトによりライカが設立される。同年、『ティム・バートンのコープスブライド』の制作に携わって名を上げる。
2007年、ライカの第1弾長編映画となる『コララインとボタンの魔女 3D』を公開する。アニー賞で作品賞を含む8部門にノミネートされ、ゴールデングローブ賞アニメ映画賞にもノミネートされた。
2012年、2作目の長編映画『パラノーマン ブライス・ホローの謎』を公開する。ストップモーション映画で初めてキャラクターの顔を3Dカラープリンターで作成した作品となった[3]。映画は第85回アカデミー賞長編アニメ部門にノミネート、アニー賞では8部門にノミネートされた。
2014年、3作目の長編映画『ボックストロール』を公開する。アラン・スノウのファンタジー小説「Here Be Monsters!」が元になっており、アンソニー・スタキとグラハム・アナブルが監督した。第87回アカデミー賞長編アニメ賞とゴールデングローブ賞アニメ映画賞にノミネートされ、アニー賞では9部門にノミネートされ声優賞と美術賞を受賞した。日本では長らく未公開となっていたが、2018年3月、次作『KUBO/クボ』のソフト化に合わせて2018年6月2日にDVD・BDが発売されることが発表された[4]。
2016年、4作目の長編映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を公開。第89回アカデミー賞長編アニメ賞と視覚効果賞にノミネートされた(アニメ作品が視覚効果賞候補になったのは『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』以来二度目)。英国アカデミー賞アニメ映画賞受賞の他、ゴールデングローブ賞アニメ映画賞にノミネート、アニー賞では10部門にノミネートされキャラクター・アニメーション賞と美術賞、編集賞を受賞した。★
ストップモーションアニメーションの、
『Mary and Gretel』(1916年)
尺取虫の動きを、ストップモーションアニメーションで表現。