『シザーハンズ』
ティム・バートンの映像マジックで贈る、甘く切ない現代のおとぎ話。
映画の言葉 “あなたはどこも悪くないわ あなたは“ユニーク"なのよ"
<ポイント>
●「パイレーツ・オブ・カリビアン」「フロム・ヘル」のジョニー・デップが、心優しい人造人間を演じている。
<ストーリー>
丘の上の広い屋敷に年老いた発明家が住んでいた。彼はたった一人で人造人間エドワードを作っていたが、完成間近に急死。エドワードはハサミの手のまま取り残されてしまった。化粧品のセールスで屋敷を訪れたペグは気の毒に思い彼を家に連れて帰る。エドワードはそこでペグの娘キムに恋してしまうが……。
<キャスト&スタッフ>
エドワード・シザーハンズ…ジョニー・デップ
キム…ウィノナ・ライダー
ペグ…ダイアン・ウィースト
監督・製作・原案:ティム・バートン
製作:デニーズ・ディ・ノービ
脚本・原案:キャロライン・トンプソン
●字幕翻訳:戸田奈津子
『シザーハンズ』(原題: Edward Scissorhands)は、1990年のアメリカ映画。純真無垢な心を持つ人造人間と少女の交流を描いたファンタジー映画。
あらすじ
寒い冬の夜。「雪はどうして降るの?」と孫娘に聞かれた祖母が話し始める。
昔々、町外れの山の上の屋敷に孤独に暮らす老発明家がいた。屋敷の中で、全自動クッキー製造機などの数々の発明品を作り出した彼は、遂には生命の創造に挑み、1人の人造人間を生み出す。彼はそれにエドワードと名付けて愛情をもって接する。不完全な部分を自らの発明品で補うために、ハサミを使って作った仮初の手を両手に、それから大きなハート形のクッキーを選んで心臓とする。そして、彼はついに本物の人間と同じ形をした両手を作り出すが、それをエドワードに披露した矢先、急な発作を起こし、エドワードを一人残してこの世を去ってしまう。エドワードは、両手がハサミのまま、屋敷に1人残された。
ある日エドワードの住む屋敷に、ペグという化粧品のセールスの女性がやってくる。心優しい彼女は、奇怪な姿をしたエドワードを発見したのち、彼をパステルカラーの家が並ぶ町に連れて帰ることにする。手がハサミのエドワードは食事さえままならないが、植木を様々な形に美しく整えたり、ペットの毛を刈ったり、女性たちの髪を独創的な感じにカットしたりして地域の人気者になっていった。やがてエドワードは、ペグの娘キムに恋をする。
ある時エドワードは、キムのボーイフレンドのジムに利用され、夜間に彼らと一緒にジムの家に不法侵入するが、警報装置にかかったエドワードだけ逮捕されてしまう。キムを気遣ったエドワードは真相を語らず、周囲の人々は彼を避けるようになったが、キムはエドワードの優しさに惹かれ始め、ジムは嫉妬を募らせてゆく。
クリスマスの夜、氷の彫刻を作って美しい雪を降らせていたエドワードは誤ってキムの手を傷つけ、ジムに罵られて家を追い出されてしまう。キムはジムに怒りを覚え、絶交を言い渡した。怒り狂ったジムはやけ酒を飲み、飲酒運転をしてしまいキムの弟のケヴィンを轢きそうになる。間一髪でケヴィンを助けたエドワードだが、その際にハサミでケヴィンに怪我をさせてしまう。危険な化け物として街の人々に責められたエドワードは、屋敷へと逃げ込んだ。
エドワードを案じたキムは彼の後を追うが、さらにそれを追ってきたジムともみ合いになり、エドワードは彼を殺してしまう。キムはエドワードに「愛してる」と言って別れを告げると、屋敷に残されていた、かつて発明家が作り出したエドワードの両手とはまた別の「ハサミの手」を持ち出すと、屋敷に押し寄せてきた町の人々にその手を見せてエドワードは死んだと偽り彼を匿った。
それ以来、エドワードが来る前には降らなかった雪が、毎年クリスマスの時期になると町に降るようになったのだという。
「どうしてそんな話を知ってるの?」と尋ねる孫娘に祖母は答える。「そこにいたからよ。彼には今も見えるはず。彼が降らせた雪の中で踊る私の姿が…」。その言葉の通り、山の上の屋敷では昔と変わらない青年の姿をしたエドワードが両手のハサミで氷の彫刻を作っていた。彫刻を作る最中に飛び散った細かい氷の粒こそが、空から降る雪の正体だった。そして、その氷の彫刻が模っているのは若き日の祖母、すなわちかつてのキムの姿であった。
繊細で心優しき人造人間エドワードと人間の娘キムの間に芽生えた愛が、今もなお生き続け、そしてささやかな奇跡を生み出しているのを明かす形で、物語の幕は下りる。
キャスト
役名 | 俳優 | ||
---|---|---|---|
エドワード・シザーハンズ | ジョニー・デップ | ||
キム | ウィノナ・ライダー | ||
キムおばあちゃん | |||
ペグ | ダイアン・ウィースト | ||
ジム | アンソニー・マイケル・ホール | ||
ジョイス | キャシー・ベイカー | ||
ビル | アラン・アーキン | ||
ケヴィン | ロバート・オリヴェリ | ||
発明家 | ヴィンセント・プライス | ||
ヘレン | コンチャータ・フェレル | ||
ジョージ | ビフ・イェーガー | ||
マージ | キャロライン・アーロン | ||
アレン巡査 | ディック・アンソニー・ウィリアムズ | ||
エスメラルダ | オーラン・ジョーンズ | ||
ティンカ | スーザン・ブロンマート | ||
テレビ司会者 | ジョン・デヴィッドソン | ||
隠居老人 | スチュアート・ランカスター | ||
ダフィールド | アラン・ファッジ | ||
心理学者 | アーロン・ラスティグ | ||
孫娘 | ジーナ・ギャラガー |
作品解説
映画の撮影のほとんどはフロリダ州タンパ近郊の町、デイドシティ、ウェスリーチャペル、ラッツなどで行われた。撮影に使われた家は全て現役の住居であり、住民の了承の上で貸し切って撮影を行っている。
製作
10代の頃のティム・バートンはいつも孤独で周囲の人間との関係に問題を持っており、そのような少年時代の経験がシザーハンズにも反映されている。ビートルジュースのプリプロダクションを行っている間に、バートンは当時まだ若い小説家であったキャロライン・トンプソンをシザーハンズの脚本家として雇った。バートンはトンプソンの短編小説『First Born』に感銘を受けており、「『First Born』には自分がシザーハンズで表現したいものと同様の心理的要素がある」と感じたからである[2]。トンプソンはシザーハンズの脚本を書き上げ、バートンはシザーハンズの企画をワーナー・ブラザースに持ち込んだ。しかし2か月後にワーナー・ブラザースは映画上映権を20世紀FOXに売却した[3]。20世紀FOXはトンプソンの脚本を評価し、バートンを監督に置いてシザーハンズの企画に予算を出すことに同意した。
配役
当初、エドワード役にはトム・クルーズが候補に挙がっていたが、彼が要求したハッピーエンドをティム・バートンが却下したため降板した。
ティム・バートンは初めて会ったときのジョニー・デップは箸にも棒にもかからない程に下手な役者だったとしている。同時に自分の枠を突き破ろうとする意欲のある役者であったとして、映画監督とはそんな役者と仕事をしたい職業なのだと語っている。ジョニー・デップはこの映画ののち、ティム・バートンと良きパートナーとなった。ジョニー・デップ自身この作品には思い入れがあるため続編をやりたいと語っている。
発明家役のヴィンセント・プライスは、この作品が遺作となった(1993年10月25日に他界)。
豆知識
- この作品をきっかけに、ジョニー・デップとウィノナ・ライダーは婚約しているが、後に解消した。
- 20世紀フォックス映画のロゴにも雪が降る演出が加えられた。
- エドワードのモデルとなったのはスタイリストのエドワード・トリコミである[4]。一方で監督であるティム・バートンをモデルともしているというが、どのような意味でのモデルなのかは記されていない。
- 2021年2月に行われた第55回スーパーボウルではハーフタイムの間に流されたキャデラック(ゼネラルモーターズが展開している高級車ブランド)のCMで本作のその後が描かれ、父親であるエドワードのハサミの手を受け継いだため、日常生活において支障を来している息子のために母親のキムがハンズフリーでの自動運転が可能な電気自動車をプレゼントするというものだった。なお、キム役は本作と同じくウィノナ・ライダーが演じた[5][6]。
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もし犬が人間だったら?というような話。
愛故にやらかしてしまう。
愛されるが故に、憎しみを買ってトラブルを招いてしまう。
戦時中に、檻が爆破されて逃げ出すことが想定されて殺された、上野動物園の象たちのことを想起した。
また、飼育員にじゃれるつもりで結果死なせてしまった大きな動物たちのことを思った。
この様子はデビルマンに似ている。
キムのボーイフレンドのジム▼が、とても嫌な奴に仕上がっている。この人物造形の嫌さが半端だと、全体が嘘っぽく、シロップのないかき氷、ただの削り氷になってしまうところだった。
一番ハッとなったのは、ウィノナ・ライダー演ずるキムとジョニー・デップ演ずるエドワード・シザーハンズが、屋敷で抱き合った後。
ジムを殺したエドワードを屋敷に残し、キムが庭に出ていったシーン▼。
庭には近隣住民のうるさい人達が集まっている。ここへ出て行って、どうする?住民たちはもう、窓から落っこちたジムの死体を見ているのに………。
キムは途中で刃物を取る。これは、エドワードのシザーハンズのスペアのようなもの。
そして血のついた白いドレスで、「彼らは殺し合って、死んだわ」。ほら、というように、そのスペアのハサミをバルコニーから見せる。するとうるさ方はしんみりして、納得。彼らはエドワードを好きだったから。死んだとなったらそれ以上は突っついてこない。弔いの気分になって俯き、ぞろぞろと帰宅。このシーンがクライマックス。
ザリガニのハサミが取れたんだ、それはザリガニとしては死んだね、というような感受、納得。シザーハンズのアイデンティティーはシザーなハンズ。なのでそれ単体を見せるだけで、本体の死体を見せなくても、ストーリーの中では死とイコールの質量になる。これでキムはエドワードを匿えた。
そして時は流れ、キムはおばあちゃんとして孫にシザーハンズのお話をしている。
これが冒頭とラスト。
キムおばあちゃんが孫から、「どうして雪は降るの?」と訊かれてこの話が始まった。
そしてラストシーンで、「なんでエドワードは今も生きてるってわかるの?」と訊かれたキムは、観客に正体をバラすかのようにメガネを外し、「エドワードが下りてくるまでは、この町に雪は降らなかったの。エドワードが山から下りて来てから毎年、この町に雪が降るの」。窓の外には雪。
この雪は、エドワードがクリスマスに氷の彫刻を作っているから飛んでくる、氷片なのだった。
という、夢たっぶりのファンタジー。
『エドワード シザーハンズ』という彼の名前が原題。シザーハンズがファミリーネームというのは、あるザリガニの名が鋏手 六兵衛というようなもので。存在に占める手の重要度が凄い。いや、名前こそ、宿命なのであり。鉄腕アトム然り。
ザリガニがハサミを失ったら、途方に暮れるだろう(▼左のハサミを失ったらしきザリガニ)。
片脚を失った人が、「今でも、ないはずのその足の先が痛むんだ」というような話をよく聞くけれど。
それは脳内マップの当該神経の話で、その神経に電気が通るから、そこが痛いと感じる脳システムであって、実際に該当部分が肉体としてあるか否かは実は関係なくて………。とすると真っ暗闇にいるかのように、肉体はあってもなくても脳には関係ない、いや、脳という肉だけは残しておいてね、とにんまり笑う脳、というようなイメージが浮かぶけれど。
ヴィンセント・プライス演ずる発明家とエドワード。発明家は、ハサミを付けていたエドワードの腕に、人間同様の手を付けようとした寸前に、倒れて死去。エドワードはこの発明家を、お父さんと認識している。エドワードの知能は、幼児というより、人間語をいくつか話せる犬のような感じ。エドワードはほとんど言葉を発しない。故に、発した言葉に切実さが宿る。
★ヴィンセント・プライス(Vincent Leonard Price, Jr.、1911年5月27日 - 1993年10月25日)は、アメリカ合衆国の俳優。クラシックホラー映画の戦後アメリカの第一人者。マイケル・ジャクソンの「スリラー」でナレーションを務めたことでも有名。イギリスのピーター・カッシング、クリストファー・リーと並び、「三大怪奇スター」と称された。
特に1960年代前半、AIP制作のエドガー・アラン・ポー作品を原作とするシリーズの主演俳優として圧倒的な存在感を示した。美声を生かし声優としても活躍した。美術や食に精通した文化人としても高名。ティム・バートンが熱烈なファンであったことでも知られており、バートンの監督した映画『シザーハンズ』がプライスの遺作となった。★
06:31から、ヴィンセント・プライスのナレーション
11:57から、ヴィンセント・プライスのホラーな発声の笑い声
『鉄腕アトム』を想起した。
天馬博士が、交通事故で死んだひとり息子に似せて作ったトビオ。しかしトビオが成長しないことに怒り、追い出した。後に自分も失踪。
サーカスに売られていたトビオを引き取り、アトムと命名して育てたのがお茶の水博士。
ヴィクター・フランケンシュタインと人造人間の話も想起した。こちらは、殺人犯の脳を使ったため、命を得た人造人間が、作ったヴィクターを殺してしまう。
あり得ないことの連続なのだが、あり得ると思える。
個性あるキャラクター同士の化学反応の連続、玉突きビリヤードで、こうなるな、と納得できる。
まず、エドワードの第一発見者、お母さんペグの生来の包容力と、化粧品の訪問販売という職業から来る、エドワードの顔の傷をメイクでどうにか目立たないようにしたいという使命感。そして、商品が全く売れないから、車のサイドミラーに偶然映り込んだ山の上の屋敷に営業に行ってみようかとふと思うという、動機の必然性。
お母さんが連れてこなければ、エドワードはこんな騒動には巻き込まれなかった。しかし、お母さんに連れてこられなければ、町はずれの山の上のお屋敷の中で、年を取らないまま、ずっと独りぼっちだった。(ラストの映像を観ると、エドワードは加齢されない設計らしい。いわゆる永遠の命か。そこも悲しく美しい。キムはおばあちゃんになっていて、やがて死んでいくというのに。しかし永遠の愛の象徴のように、エドワードが作っているのは若きキムの氷像。)
エドワードの、素直な適応力と、無邪気な犬のような、人の役に立ちたい感が、ここでの生活を切り拓く。
お母さんのヘアカットをする前に、椅子をブラシで丁寧に掃除する様に、胸熱。
エドワードの、無垢な、世間知らずでぎこちない様子。それが視線のまっすぐさと、遅いギゴギゴな歩き方、食事の仕方、人を抱こうとして抱けない様子で表現されている。
キムの、ティーンエイジャーの揺れやすい、しかし正直でピュアな感じが切ない。
エドワードは、ハサミ手であることの適性とその芸術性、美意識を、オーナメント、トピアリー、ヘアカット、トリミング、氷の彫刻で発揮する。奇跡的な集中力と100倍速のようなスピードで。
口数の少ないエドワードの心の熱量が、それらで視覚化され、人々は彼を受け入れ、信用し、愛する。
監督・製作・原案の、ティム・バートン
監督
『ピーウィーの大冒険』
『ビートルジュース』
『バットマン』シリーズ
『シザーハンズ』
『エド・ウッド』
『マーズ・アタック!』
『スリーピー・ホロウ』
『ビッグ・フィッシュ』
『チャーリーとチョコレート工場』
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』
『アリス・イン・ワンダーランド』
『ダーク・シャドウ』
『フランケンウィニー』
『ビッグ・アイズ』
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』
『ダンボ』
製作
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』
『バットマン フォーエヴァー』
『ジャイアント・ピーチ』
『リンカーン/秘密の書』
『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』
脚本・原案のキャロライン・トンプソン
★キャロライン・トンプソンは必ずしもハリウッドでのキャリアを追求するつもりはありませんでした。しかし、彼女の最初の小説が映画に選ばれると、彼女は脚本に挑戦することに決め、それ以来振り返っていません。1990年代以降、彼女は家族向けの作品を作ることに集中しており、一般的に敬意を表するレビューと優れた興行収入を得ています。★
★キャロライン・トンプソン(Caroline Thompson、1956年4月23日 - )は、アメリカの映画監督・脚本家である。★
★主な作品
- シザーハンズ Edward Scissorhands (1990) - 脚本・原案
- アダムス・ファミリー The Addams Family (1991) - 脚本
- 奇跡の旅 Homeward Bound: The Incredible Journey (1993) - 脚本
- 秘密の花園 The Secret Garden (1993) - 脚本
- ナイトメアー・ビフォア・クリスマス The Nightmare Before Christmas (1993) - 脚本
- 黒馬物語 Black Beauty (1994) - 監督・脚本
- バディ(英語版) Buddy (1997) - 監督・脚本
- スノーホワイト/白雪姫 Snow White (2001) - 監督・脚本
- ティム・バートンのコープスブライド Corpse Bride (2005) - 脚本
- エンバー 失われた光の物語 City of Ember (2008) - 脚本
- マーウェン Welcome to Marwen (2018) - 脚本★
ミニ裁縫道具、ソーイングセット。これもワクワクする。掌の上の相棒。指先の延長感。延長出来るなら、高スペックや、好きな感じで延長したい。
手動ミシン。見ているだけでワクワクする、ホッチキス的コンパクト感。
当時付き合っていた、お似合いの二人
町はずれの山の上のエドワードの屋敷。庭には手の形のトピアリーが。
アダムス・ファミリーのハンドを想起。
発明家は、生み出した人造人間の不完全な部分を補うために、自分で発明したクッキー製造機で作ったハート形のクッキーを心臓代わりに、ハサミを手代わりに付けた。
さあ、シザーハンズを人間そっくりの手に付け替えようとしたそのとき、発明家は発作で死んでしまう。
ここは、ピノキオっぽいムード。
発明家が日本人だったら、心臓代わりは源氏パイか、不二家のハートチョコレートにしたことだろう。
ほっぺたはこれ