『E.T.』
地球に取り残されたエイリアン、E.T.。孤独な10歳の少年は、そのエイリアンを家へ連れて行きたいと思った・・・。あまりにも有名なテーマ曲と共に今もなお色褪せない、スティーブン・スピルバーグ監督の最高傑作!
【キャスト】
ディー・ウォーレス/ヘンリー・トーマス/ドリュー・バリモア
【スタッフ】
監督:スティーブン・スピルバーグ
制作年:1982年
(C) 1982 & 2002 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
『E.T.』(イーティー、原題: E.T. The Extra-Terrestrial)は、1982年のアメリカのSF映画。製作・監督はスティーヴン・スピルバーグ、脚本はメリッサ・マシスンが務め、ディー・ウォレス、ヘンリー・トーマス、ピーター・コヨーテ、ロバート・マクノートン、ドリュー・バリモアなどが出演した。地球に取り残された地球外生命体(E.T.)と少年エリオットとの交流を描いた物語[5]。
コンセプトは、スピルバーグが両親の離婚後に作った空想上の友人が元になっている。1980年、スピルバーグはマシスンと出会い、失敗したプロジェクト『Night Skies』から新たなストーリーを展開した。撮影は1981年9月から12月にかけて、1,050万ドルの予算で行われた。他の映画とは異なり、若いキャストが感情を込めた演技をしやすいように、大まかな年代順に撮影された。E.T.のアニマトロニクスは、カルロ・ランバルディがデザインした。
約1,000万ドルという予算で製作されたが、公開後にはアメリカ国内でおよそ3億ドルという当時の映画史上最大の興行収入を記録する。『スター・ウォーズ』(1977年)の全世界興収記録を抜いて、世界歴代興行収入1位の記録を更新し、『ジュラシック・パーク』(1993年)に抜かれるまで記録を保持した[6]。日本では『ジョーズ』(1975年)が保持していた配給収入の日本記録を更新し、『もののけ姫』(1997年)に抜かれるまで日本最高配給収入記録を堅持していた。批評家からも高く評価され、史上最高の映画の一つとされており、第55回アカデミー賞では、作曲賞、視覚効果賞、音響賞、音響編集賞の4部門を受賞した。1985年には再公開され、2002年には公開20周年を記念して、ショットや視覚効果、シーンの追加などが行われた。1994年には「文化的、歴史的、美学的に重要な作品」として、米国議会図書館のアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
ストーリー
アメリカのとある杉の森に球形の宇宙船が着陸し、中から数人の小さな宇宙人が現れた。彼らの目的は地球の植物を観察し、サンプルを採集する事だった。その内の1人は宇宙船から遠く離れ、崖の上から光の海を見て驚く。それは郊外の住宅地の灯だった。その時、宇宙船の着陸を察知した政府機関の人間達が車で近づいてきた。宇宙船は危険を察知して離陸するが、遠くにいた宇宙人1人は地上にとり残されてしまう。取り残された宇宙人は叫び、近づいてくる人間から逃げ出した。
その頃、住宅地のある家では、少年達がテーブルトークRPGをしていた。10歳のエリオットは小さいという理由から、兄マイケルやその仲間から馬鹿にされてTRPGに混ぜてもらえず、嫌気がさしていた。彼らが注文したピザの出前を受け取りに外へ出たエリオットは物置小屋で音がしたことに気付いて怖くなり、みんなを呼びよせた。しかし中には誰もおらず、見慣れない足跡が残されていただけであった。その日の深夜、エリオットは隣のトウモロコシ畑に物音の正体を探りに行き、宇宙人を目撃する。翌日、家族と夕食を食べながら、エリオットは宇宙人を見たことを話すが誰も信じない。「パパなら…」というエリオットの言葉に母のメアリーは動揺する。メアリーと折り合いが悪いパパは、愛人とメキシコに行っていたからだ。
夜もふけ、エリオットがポーチで見張っていると、ついに宇宙人が彼の前に姿を現わす。エリオットはReese's Pieces(英語版)のキャンディで、空腹だった宇宙人を部屋に導きクローゼットに隠した。翌日、エリオットは仮病をつかって学校を休み、宇宙人とのコミュニケーションを試みる。そして帰宅した兄マイケルと妹ガーティに宇宙人を紹介する。宇宙人は念力でボールを宙に浮上させて、太陽系を遠く離れた星からやって来たことを説明した。次の朝、エリオットはマイケルの友達から「怪物がいたか」と尋ねられ、宇宙人だという答えを信じてはもらえないものの、「ではエキストラ・テレストリアルだな」と聞かされる。こうしてその宇宙人は以後、「エキストラ・テレストリアル」を略して「E.T.」と呼ばれることになる。
エリオットとE.T.は交流を続けるうちに感覚も共有するようになり、留守宅のE.T.が冷蔵庫からビールを取り出して飲むと、学校で授業を受けているエリオットも酔っぱらう。さらにE.T.がテレビで「静かなる男」を見て、ジョン・ウェインとモーリン・オハラのキスシーンに見とれていると、学校ではエリオットが好意を抱いていた女の子にキスをする。E.T.は「セサミストリート」を見たり、ガーティに教えてもらいながら英語を覚える。また新聞に載っていたSFコミック『バック・ロジャース』の1シーンを見たことで、家に電話したいと言い出す。E.T.はエリオットとマイケルが集めてきた様々なガラクタを使って通信機を作り上げる。
ハロウィーンの日、エリオットとマイケルはE.T.に白い布をかぶせてガーティに見せかけ、メアリーの目を欺いて外出させる。エリオットは自転車でE.T.を郊外の森に連れ出す。E.T.はエリオットと自転車ごと浮遊し、森に到着。通信機で故郷の星に連絡をとる。道に迷ったE.T.は、川に落ち流されてしまい翌朝瀕死の状態となり、マイケルが彼を家に運ぶが、エリオットも体調を崩してしまった。E.T.を初めて見て驚くメアリー。突然、宇宙服を着た政府機関の科学者達が家に押しかけてきた。科学者達はエリオットの家にE.T.がかくまわれていることを察知し、監視していたのだ。エリオットの家に仮設研究所が作られ、防護服を着た科学者たちはエリオットとE.T.の治療を始める。NASAの科学者の男は、エリオットに「私も10歳の時からE.T.を待っていた。助けたい」と語りかけた。
翌朝、エリオットは回復したものの、E.T.は器官が停止し、科学者たちから死亡したと判断され冷凍コンテナに納められる。対面したエリオットが悲しみに暮れて語りかけると、突然E.T.の胸が赤くなり蘇生する。E.T.は迎えが来ると言う。マイケルはE.T.を乗せたバンに乗り込み逃走。途中エリオットの自転車に乗り換え、マイケルとガーティ、マイケルの友人であるグレッグ、スティーブ、タイラーの協力を得て、郊外の森へ急ぐ。たちまち警察や大人達から追跡されるエリオット達。だが追い詰められる寸前、E.T.は念力で自転車ごと子供達を浮遊させた。唖然とする大人達を眼下に起き空を飛ぶエリオット達はついに森の中へと辿り着く。やがてE.T.が連絡を取った場所に宇宙船が現れた。エリオット達とE.T.は最後の別れをし、E.T.は宇宙船に乗り込む。離陸した宇宙船が見えなくなった後、空に美しい虹がかかるのであった。
登場人物
- エリオット
- 演 - ヘンリー・トーマス
- 10才の少年。得体のしれないE.T.を偏見なく受け入れる分け隔てのない性分。兄にゲームに入れてもらえなかったり、それでいてパシリにされるなど立場が悪い。一方では結構気が強く、兄たちに対して強い口調で言うこともある。またE.T.が怪獣扱いされたことで「怪獣ではなく宇宙人」と冷静に言い返すなど皮肉屋な部分もある。
- メアリー
- 演 - ディー・ウォレス
- エリオットの母。夫がいるが、その夫はメキシコに愛人とともに出かけている。気の強い部分もあり、エリオットを「あほんだら」呼ばわりしたタイラーを軽くだが小突いた。
- マイケル
- 演 - ロバート・マクノートン
- エリオットの兄。母のことは慕っており、母が気にしていることを言ったエリオットを非難したこともある。弟を小馬鹿にする一方、弟の言うとおりに動いてあげるなど面倒見よく接することがある。E.T.を伴っての逃走では子供ながらに車を運転する活躍を見せる。
- ガーティ
- 演 - ドリュー・バリモア
- エリオットの妹。少し生意気。
- グレッグ
- 演 - K・C・マーテル
- マイケルの友人。
- スティーブ
- 演 - ショーン・フライ
- マイケルの友人。
- タイラー
- 演 - トム・ハウエル
- マイケルの友人。アンチョビは苦手の模様。
- E.T.
- 声 - パット・ウェルシュ
- 宇宙人。名前は「エキストラ・テレストリアル」を略したもの。言葉は話せないが念力でボールを浮かせることなどが出来る。また、自分の描いたイメージ通りに現実の人間を操ることもできる。
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公開されたときから、これを見たら号泣する、と警戒していて、ちゃんとは見ないようにしていた。
今回初めて最初から最後までちゃんと観た。
号泣する準備はできていた。
そして想定通りに号泣した。
あの自転車がズルい、と思う。
あんな自転車で、普段馬鹿にしてる子とされている子が一体となってE.T.を家に帰してあげよう、となったら、それは人類として泣くしかない。そして最後の最後のピンチで、それまで守られていたE.T.が、守ってくれている子たち全員を空に浮かせるのも、それは絶対浮くだろう、と信じるしかない。超自然現象が、あまりにも自然。
E.T.とエリオットが同期しているというのも興味深いしリアル。
E.T.が死にそうになると、エリオットも死にそうになる。
恋愛中の恋人同士も同期する。同期して一緒にお腹が空いたり一緒にお腹が痛くなったり。同じ時間に同じ所でまた会ってしまったり。電話をかけたら「ちょうど今かけようとしてたんだ」と言われたり。
そういう感じ、わかる、の連続。正にニコイチのE.T.とエリオット。
E.T.が、置かれた環境から情報をダウンロードして、急速に脳内をアップデートしてゆく様がリアルで軽快。
つまり脳とは、神経細胞の集まりとは、周りから情報収集、それの順序を整え、そしてプライオリティーの高い目的順に使用、を繰り返しているのだと思う。
E.T.にとっては「痛い(ouch アウチ)」が一番エモーショナルな言葉。
お別れのシーンで妹のガーティがE.T.に「さよなら」と言うと、
「E.T.はさよならは知らないよ」とお兄ちゃんのマイケル。
ここで、子供の頃買ってもらったリカちゃん電話のことを想起した。
受話器を取って(いや、実は受話器は取らなくてもいいのだが)、ダイヤルを回して(いや、ダイヤルも実は回さなくていいのだが)、ボタンを押すと、「もしもし、わたしリカちゃん」「こんにちは、元気?」「きょうはゆうえんちにいくの」「じゃあまたあいましょうね」のような4つの録音が再生されるというもの。
何かE.T.は、この電話のようでもあり、それが健気で愛しいのだ。三つの言葉しか知らず、その三つでやりくりする。三つで賄う。お年玉でお父さんやお母さんへのプレゼントを買うこどものように。
気持ちを伝えるときも、この三つしかないから、それで何とかしようとする。
日本に慣れない外国の人が、「好き」を伝えようとして、既知の三つのワード、「おおきに」、「さいなら」、「まいどあり」と言ってしまうような。
お兄ちゃんのマイケルは、妹と自分がお別れを済ませると、一番親しい、一心同体の弟エリオットに存分にお別れをさせてあげようと、妹と少し下がる。このシーンがお葬式のときのようでグッときた。
またこのお兄ちゃんマイケルが、
普段馬鹿なことをしているが、きょうだい思いでお母さん思いの、とてもいい子なのだ。
友達とふざけたりするが、お父さんと別居しているお母さんのことを本気で気遣う。
これは、両親が離婚したときのスピルバーグそのものなのかもしれない。
E.T.はエリオットに、お別れの言葉として「痛い(ouch)」と言う。
E.T.は、E.T.の為の電話を作っていて血の出たエリオットが「痛い(ouch)」と言ったとき、「痛い(ouch)」と言いながら指を傷に触れ、直した。同じ言葉を言い合う同期パワーチャージだ。凄くわかった。
鉢植えの花もE.T.に同期していて、E.T.の元気がなくなると萎れ、瀕死になると枯れ、復活すると花開く。
これはまるで、温度計のようだ。E.T.の心の視覚化。
コンセプトは、スピルバーグが両親の離婚後に作った空想上の友人が元になっているという。
そうだろうなと思う。E.T.がリアル過ぎるから。E.T.に命を感じるから。
自分ちに宇宙服を着た政府機関の科学者達がある日突然大勢で押しかけてくるとか、NASAの人が「自分も10歳のときから宇宙船が来るのを待っていた」と言うとか、もういかにもな、ザ・子供の夢だろう。
歴史の浅いアメリカのE.T.とは、日本に換算すると「かぐや姫」、「竹取物語」なのかもしれない。
日本における最古の物語がSF。
日本最古の書物古事記も十分、存分にSFだ。
生まれたてのこどもが瀕死の人同様最もあの世に近いように、若い国から生まれた物語があの世に近く、ぶっ飛んでいてもさもありなん、納得する。
E.T.が宇宙船、いわば自分ちの車に帰っていくときに、
思い出の品のように全身で鉢植えの花を持っていく姿が胸に刺さった。
E.T.は自分ちに帰ったら、あの鉢植えの花を眺めるのだろう。そして眺めるたびにエリオットたちのことを思い出すのだろう。
いつか、E.T.が自分の星の自分ちでもっと成長したら、向こうで通信機器を開発して、エリオットとラインやズームで話せることだろう。
いやもう、それは何度も行われているのかもしれない。
一度死んだと診断されたE.T.。しかし鉢植えの花が開いているのを見て、E.T.は生き返ったと悟るエリオット。エリオットは一人で必死の演技をして、大人たちを退出させ、E.T.を連れ出そうとする。お兄ちゃんや友達も協力。しかし大人たちが追いかけてくる。という事の流れがリアル。
中盤。ハロウィンでお化けの仮装をして外に連れ出されるE.T.。両目の穴からこのようにスター・ウォーズのヨーダの仮装をした人が見えると、「おうち、おうち」と言うのもいかにも幼児っぽくてリアル。
E.T.のデザインをしたカルロ・ランバルディ
脚本はメリッサ・マシスン
音楽はジョン・ウィリアムズ
『E.T.』は、宇宙的以心伝心念力映画。