■社長の独り言…第171回「教育実習」(2022年6月21日) | ㈱日科技連出版社 社長、戸羽 節文 のブログ

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教師になるつもりはなかったが、せっかく教育学部に入ったので、教職課程を履修することにした。

無事に高校1級、中学2級の世界史の教員免許を取得することができたが、これまで一度もこの資格を使ったことはない。

 

そして、教職課程の最大の関門といえば、教育実習である。

実習先は、母校の長崎西高等学校が受け入れてくれた。

 

授業を受ける側は、いつものおじさん教師ではなく、教壇に立つ若い教師の卵のフレッシュな熱気が爽やかで、頼りなさや物足りなさはあるものの、教育実習の2週間は楽しいものだった。

 

しかし、立場が逆になると、これはもう緊張の連続で、在校生として通った母校の慣れ親しんだ校舎が、まるで別物のように眼に映った。

 

45分か50分の授業時間だったが、軽くその2倍は話せるほどの周辺知識を用意してから授業に臨んだ。

壷井栄さんの『二十四の瞳』ではないが、授業中、とても生徒の瞳を見る余裕はなかった。

 

職員会議で、あるベテランの教師から「もう、この歳になると、テクニックだけでこなしていける」というような意味の発言があった。

 

「先生は来年も居ますが、生徒にすれば一年一年が一生に一度きりです。テクニックだけでやられた方は、それこそたまったもんじゃないですね」

と、喉まで出かかったが、さすがに堪えた。

 

しかし、この歳になって、今になって考えてみると、あの教師は、「そう気張りなさんな。先生になるんだって、案ずるより産むが易しだよ。がんばって」と、カチコチの教師の卵たちに向かってエールを贈ってくれたのかもしれない。

 

あの頃の尖がっていた自分を、物事を一方向からしか見ることのできなかった自分を思い出すと、今でも顔が赤くなる。

 

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 (了)