イタリアへ戻り、出番は少ないながらもちょこちょこと試合に出られるようになります。
下部チーム(セリエC)の試合にも積極的に参加していました。
試合が日曜日だったので、暇が潰せて好都合だったし、
ゲーム感を落とずにいられたのもありがたかった。
選手たちは高校生年代。
イタリアで一番最初に仲良くなったモニカやソーニャもいました。
そういえば、モニカの家で2人が熱唱していた歌(第66話)、
youtubeって聞きたい曲をいつでも聞けるんだって知ってから、
その曲をずっと探していました。
そして、Vasco Rossiの『Vita Spericolata』っていう曲だったと発見したんです。
「これだ!」
見つけた瞬間、なんとも言えないなつかしさで、胸がいっぱいになりました。
「カオリが大活躍したんだよ!」
「カオリのお陰で勝てたよ!」
と試合後、若い子たちがビニョットさんにそんな風に報告してくれるんです。
それを聞いたビニョットさんの
「カオリはセリエAの選手なんだから、活躍するのは当然でしょ。」
と言うその顔が、とても嬉しそうだったのが、忘れられません。
コッパイタリアは準々決勝で宿敵ミランと当たります。
まずミラノでアウェー戦。
前半3-0とリード、3点差はサッカーでは、勝負あり、と思われる点差です。
後半開始と同時にベンチで待機していた私にウォーミングアップの指示がでます。
いつ声がかかっても良いように準備しますが、
なんとミランのモラーチェにゴールを入れられたかと思うと、
あれよあれよという間に、追加点を奪われ、
まさかの同点ゴールまで!
モラーチェひとりにやられてしまった感じです。
点が取られるたびに
(早く出してくれ~)と、
居ても立っても居られない気持ちでいましたが、
願いむなしく、そのまま交替の声がかからぬまま試合は終了…。
3-3の引き分けに終わりました。
そりゃ、もう、ガッカリです。
なんでよ~。
それでも腐ったら負け、と自分に言い聞かせ、
気持ちを切らさないように日々の練習に取り組み続けます。
その後のセリエAの試合では、
2月のベローナ戦にディフェンシブハーフで久々のスタメン出場!
調子は良かった。
試合後、皆が
「カオリ!良いプレーだったよ!」
と声をかけてくれるんです。
チームメイト、チームスタッフが私の事を気にしてくれていて、
久々のスタメン出場を一緒に喜んで、応援してくれている、
そう強く感じました。
そして、コッパイタリアのミランとのホーム戦。
新聞のスタメン予想にも私の名前が入っていたのに、
直前の練習で足首を捻挫してしまい、ベンチにも入れませんでした。
せっかくのチャンスだったのに、
なんてツイてないんだろう。
とてもショックでした。
試合は、またもやモラーチェに先制ゴールを奪われ、
レッジアーナにレッドカードが出されて10人で戦う事になってしまい、
とても苦しい展開でしたが、
どうにか1点入れ返し、
1-1の引き分けで終わりました。
アウエーゴールが多かったため、
2試合とも引き分けでしたがレッジアーナが勝ち進みます。
ひとりリハビリに励んだ右足首の捻挫がようやく治り、
下部チームの試合に出場したのですが、
ボールをアウトサイドでまたぐ、シザースという技で、
またいだ右足を地面に着いた瞬間、
グキッと膝を捻り激痛!
自滅だ…。
やっちまった~、
しばらく膝を抱えて痛みを堪え、
身動きもできませんでした。
そのまま試合は退場。
試合後、びっこをひいて歩けはしましたが、
軽いけがではない、そんな気がしました。
イタリアの病院で受けた診断はただの捻挫ということで、
しばらくリハビリを続けていましたが、
その後日本に一時帰国して診断してもらうと、
前十字靭帯損傷という事がわかり、
シーズン終了後に日本に戻って手術を受ける事になりました。
レッジアーナはこのシーズン、セリエAもコッパイタリアも優勝。
レッジアーナのザンベッリ会長は、両方制覇したことに満足し、
「女子はもう終わり。来シーズンから男子チームのスポンサーになる」
と、女子のレッジアーナ解散を電撃発表。
え~っ、
そんな気まぐれでチームがなくなっちゃうの~?
私は、来シーズンは日本でやろうと、
シーズン途中にすでに心は決まっていましたが、
チームがなくなってしまうのは、とても寂しく感じました。
チームの解散パーティーでは、
去年までチームメイトだった私の大好きなエメジーも、
私にイタリアのチームを探してくれた植芝さんも来てくれました。
皆の前で、イタリア語でスピーチをする時間をもらいました。
何日も前にピッポに手伝ってもらって、
文章を考え、
皆に気持ちが伝わる様、何度も何度も読む練習をして臨みました。
とにかく、感謝の気持ちを伝えたかったのです。
一人でイタリアまで来て、言葉もしゃべれなかった大変さ、
試合に出られなかった苦しさ、
だけど、スタッフ、チームメイトが常に助けてくれた事。
ここで大きく成長できた事。
本当にこのチームで良かった。
そんな話を涙ぐみながら読み終え、
顔を上げると、
聞いてた皆も泣いていた。
ピッポの原稿が相当良かったんだな(笑)。
ハッピーエンドではなかったけど、
良い人たちと巡り会えた私は幸せ者です。
イタリアに来て本当に良かった。