月曜日にはチームの事務所から日本に電話をかけて良い事になっていました。

いつも夕方4時頃かけると、日本は朝の8時くらいでした。

母が

「お兄ちゃんが結婚することになったのよ。結婚式が12月6日だけど、かおりも日本に戻って来られる?」

って、心が折れる寸前の危ない状況の中、まさに救い!

これで日本に帰れる!

イタリアでは家族の絆がとても強く、

ビニョットさんもカナテッロ監督も、私が日本に帰って兄の結婚式に参加することを快く許してくれました。

11月の末の試合を終えて、12月第1週を欠場し、第2週の試合に間に合うように帰ってくる、

というスケジュールを組んでもらいました。

良かった♪

と喜んでいた数日後…

エメジーに

「クリスマス休暇はどんな予定?」

と聞かれ、

ゲッ、クリスマス休暇だって!!

イタリアでは、12月末には長~い休みがある事に気付かされたのです。

「早めに予定を立てておいた方がいいよ」

だって。

私には予定をたてられるような選択肢はないのに…。

 

去年は代表戦で仲良くなったベネツィア方面にあるジャコの家に滞在させてもらいましたが、

ジャコは2人目の子供を出産したばかり、

しかも障害を持った子だったので、

とても遊びに行けるような状態では無いと推測できました。

エメジーが誘ってくれなければ、私には行く所がない。

2週間近く一人で過ごす事を想像しただけでゾッとしました。

そうだ!12月の第2週の試合に戻って来なければいいんだ。

1試合休むのも2試合休むのもたいして変わらない。

どうせ試合に出られないんだし、

そうすれば、そのまま1か月近く日本で過ごせるぞ!

ナイスアイディア!

あわよくば、お正月も!

と思いましたが試合再開は1月2日。

お正月はあきらめよう。

 

事務所に行き、その話をビニョットさんにしました。

てっきり簡単にOKが出ると思っていたのに渋い顔です。

カナテッロ監督も首を縦には振りません。

えーっなんで~。

クリスマス休暇をイタリアで過ごす事が私にとってどんなに酷な事か、

私も簡単に折れる訳にはいきません。

頭を下げてお願いし、

1か月の休暇を渋々ながら承諾してもらったのです。

 

そして、日本に帰る直前の12月第1週の試合。

なんと久々に試合出場!

途中出場でしたが、試合に出られるって素晴らしい。

よどんでいた空気が一気に快晴になった気分でした。

そして、試合後

「しばらく日本に戻ります」

とチームに挨拶すると、

監督が

「次の試合もカオリを使うつもりだったのに」

って言うんです。

えーっそんなーっ今更…。

 

サッカー選手としては、試合をすっぽかすべきではないのではないか…。

仕事から逃げ出すような罪悪感を感じていただけに、

今からでも予定変更して、イタリアにすぐに戻って来るべきなんじゃないか…

そもそもシーズン中に日本に戻るべきではないのかも。

そんな思いで大いに悩みましたが、

その後のクリスマス休暇の事を思うと、どうしても決断できませんでした。

逃げる事も時には必要!

と自分に言い聞かせ、

予定変更せずイタリアを後にしたのでした。

 

久々の日本!

 

日本語が上手く話せなくなっていることに驚きましたね。

単語が出てこない。

頭が混乱してパニック状態です。

弟にイタリア語で話しかけていた時には、

弟は目がテン。

「コーザストディチェンド?(私、何言ってんだ?!) 」

と独り言までイタリア語。

おかしくって、自分で笑っっちゃいました。

 

兄は自転車競技をやっていて、ツールドジャパンという大会で優勝したこともあります。

お嫁さんは同じ『なるしまフレンド』という自転車クラブのメンバーでした。

私と同い年なので友達が一人増えたようで嬉しかったですね。

 

結婚式は日野にある『野鴨の家』というレストランを貸し切りにしてやりました。

あー、あそこね。と分かるくらい目立つおしゃれなお店でしたよ。

とてもアットホームで素敵な式でした。お料理もとっても美味しかった。

数年後、食事をしに『野鴨の家』に行ったら、兄の結婚式の写真が飾ってありました。

今は残念ながらお店なくなっています。

 

 

2人は海外に行くのにも自転車を持っていきます。

スイスの国道を自転車で走っていると、

向かいから自転車で走って来た『なるしまフレンド』の元チームメイトだった人と偶然再会したそうです。

藤野くんって私も名前は聞いたことありましたが、

プロになって、チーム練習中だったそうです。

海外でバッタリ!

ってあり得る?

不思議…。

 

それにしても、旅行の写真で、

お義姉さんの顔がだんだんやつれていっているのが面白かった。

自転車旅行、過酷だったのねぇ(笑)

 

 

日本滞在の1か月はあっという間。

家族のありがたさを噛みしめ、

会いたい友人に会い、

充電完了!

 

気分一新、再びイタリアサッカーに挑戦です。