プレーオフでミランに負けた後、リミニからレッジオエミリアにバスで戻り、そこで解散。

私はひとり車で誰もいない家に戻り、合宿からの数日間の荷物もそのまま、すぐにベッドにもぐりこみました。

 

優勝を逃した悔しさと、試合に出してもらえなかった悔しさと。

 

延長に入って、よし!と気合を入れ直し、

早く早く、と出番を待っていたのに…

延長後半に入り、まさかそのまま終了まで出してもらえないとは思いもしなかった。

監督はなぜ私を使わなかったのか、

明らかに皆足が止まっていたじゃないか!

そんなに信用してもらえていなかったのか!

なぜ、と頭の中を疑問符が巡り続けて消えません。

なかなか寝付けず。

朝になっても動く気力がないので、そのままベッドの中で、堂々巡りを続けていました。

 

すると、朝、まだ早い時間に玄関のチャイムがピンポーンと鳴ったのです。

誰だろう?

誰も来ないはずの休日に鳴ったチャイムをいぶかしく思いながら、

ゆっくりと立ち上がり玄関を開けに行きました。

ドアには覗き穴がついていて、そこを覗くと、

ドアの前に立っていたのは、外出して居ないはずのピッポです。

慌ててドアを開けました。

「あれ?ピッポいたの?今日は用事があるんじゃなかった?」

「そう、今から出かけるところ」

もしかしたら用事がなくなって一緒に過ごせることになったのかとちょっと期待してしまった分、

なぁんだ、やっぱり行っちゃうのかとがっかりしました。

「どうしたの?何かあった?」

「昨日の試合の後で…カオリが大丈夫か心配だったから…大丈夫?」

そんなに私、落ち込んでいるように見えたのかな。

ピッポだって試合に負けて落ち込んでいるだろうに、私を気遣って顔を見に来てくれたのね。

「昨日は残念だったね。私は元気出ないけど…大丈夫。来てくれて嬉しい。ありがとう。」

「本当に大丈夫だね?じゃぁ行くね!」

あっという間に行ってしまったけど、

このピッポの訪問のお陰で動く力が湧いてきて、食事をしたり、合宿からの大量の洗濯物を片付けたり出来たのです。

休日の日曜日は店も全部閉まっているし、誰にも会わず、誰とも話さず、1日が終わる。

あー、一言2言だったけど、ピッポに救われたなぁと思ったのでした。

 

 

 

さて、イタリア挑戦の1シーズンが終わり、来シーズンどうするか決めなくてはなりません。

会長のザンベッリはプレーオフに負けた後、怒って

「もう来シーズンは女子サッカーはやらないっ」

と言っていたらしく、周りを慌てさせていたようですが、

実際イタリアでは、こんな感じで潰れたチームが過去には何チームもあったらしい。

結局考え直してくれて存続する事になりました。

イタリアのリーグは外国人枠が一人という規定があるので、

新しい外国人を取ったら、私とは契約できないかもしれないと言われていました。

でも、ありがたいことにユベントス、ベローナ、ピストイヤという3チームから

私を欲しいとオファーが来ていたので、イタリアでプレーする事は出来そうでした。

チームに慣れてきたし、チームメートとも仲良くなれて、レッジアーナがいいけれど、

試合に出られないのなら、出られるチームに行くべきだろう、と大いに悩みました。

 

 

結局新しい外国人は来ない事に。

しかも「監督が変わるからレッジアーナに残ったら?」

と言うビニョットさんの一声で、レッジアーナ残留を決めたのでした。

 

よしっ!もう1年イタリアで頑張るぞ!

今度こそ監督の信頼を勝ち得ないと!