ピッポがイタリアで出来た一番最初の友達で、その後もイタリア滞在中ずっと仲良くさせてもらっていました。

ピッポがいなかったら私のイタリア滞在はとても難しいものになっていたでしょう。

家は別々だけど近所でした。

私の家はエンマが週末にしか居ないので、ひとりぼっちになってしまわないように

平日はほぼピッポたちチームメートの家に同居していました。

でも外国人と一緒に暮らすってなかなか大変です。

喧嘩をすることも度々ありました。

ほうれん草のゆで方で揉めたこともあったなぁ。

 

私がほうれん草を茹でると、

「こんな緑なのは、茹でが足りないから食べられない」

と言って誰も食べてくれないのです。

私が、「これ以上茹でたらビタミンがなくなっちゃうじゃない。ほうれん草はさっと茹がかないと。」

と言うと、

ピッポが「イタリアでは黒くなるまで茹でるんだよ!マンマに電話して証明しようか?」と。

くやしぃー…。

日本に居たら私が正しいって事になるのに、

ここイタリアでは私が間違っている事になってしまうのです。

こんな些細な事が何度もあり、

正しい事って、自分が正しいと信じているだけで、

場所や時間が変われば必ずしも正しいとは限らないんだ…

という事を学んだのでした。

 

こんな事もありました。

私が急いでどこかへ出かけようとしていた時、

その日は雨が降っていて、

一度車に乗り込もうとしたところで、忘れ物に気付いて家の中に走って取りに戻ったのです。

あー!

靴に泥が付いていて、玄関を汚しちゃった。

「ちゃんと掃除していって!」

と奥からピッポの声。

急いでいた私は

「あとで~!」

と言ってそのまま出かけてしまったのです。

 

すっかりその事は忘れていました。

 

翌日、ピッポと2人で車に乗っていました。

私が運転しながら助手席のピッポに話しかけても何も返事が返ってきません。

最初は気付かずにいましたが、

あれ?

なんか無視されている??

やっとピッポの様子がおかしいのに気づきました。

「何か怒ってる?」

「…」

「ねぇ、何か怒っているよね~」

「…」

「なんで黙ってるの?教えてよ~」

「わからない?」

「?なんだっけ?」

「昨日の事。」

昨日何があったか思い出します。

「私出かけて一日いなかったよ。」

「出かける前!」

出かける前何かあったっけ?

全く思い出せない。

「何かあった?」

「ハァー(ため息)昨日はすごく寒かったから、出かける前に“ちゃんと上着を着て行って”と言ったのに

“あとで~”とか言っっちゃってバタンってドア閉められちゃったんですけど!」

 

ピッポはせっかく親切心で厚着をするように勧めてくれたのに、私は聞き間違いしちゃったんだ。

汚したのに掃除もせずに出かけるのもそうとうヒドイけど(ひとの家なのに…)。

私がそのイタリア語の聞き間違いを説明すると、2人で大爆笑。

無事仲直りできたのでした。

掃除はピッポがしておいてくれたらしい。(本当にごめんなさい)

 

 

 

コッパイタリア優勝後、リーグ戦のプレーオフまでの間に

イタリア女子代表が欧州選手権の予選でチェコスロバキアと対戦しました。

この試合の前にはドイツともテストマッチを行い、ほぼ毎月の様に外国との対戦マッチがあるのですから、

島国日本との違い、うらやましい限りです。

レッジアーナのメンバーは、現代表や元代表だらけ。

数少ない代表歴のないメンバーだったピッポが、この時初めてイタリア代表に選ばれたのです。

右サイドバックで、驚異の運動量。

何度もオーバーラップをし、レッジアーナの好成績に貢献した活躍が評価されたのです。

31歳で遅咲きの初代表。

サッカー選手になる前はバレーボールの選手で、バレーボールのセリエAでプレーしてたっていうんだから相当な運動能力の高さです。

(セリエAってサッカーだけじゃなくて、どの競技もトップリーグの事をセリエAというのです。)

 

私も自分の事の様に嬉しかったです。

チームでもピッポの代表チーム入りを盛大にお祝いしました。

 

代表チームへの合流の前日には、

「カオリちょっと来て!」

と部屋に呼ばれ、

「着ていく服だけど、こっちの服とこっちの服はどっちがいいと思う?」

と聞かれ、

「んー、こっちかな?」

と言うと、

「やっぱり、そう思う?でも、こっちの方が良い気もするんだよね~」

「うん、そっちでも全然いいと思うよ。」

と言うと、

「えー、そうかなぁ…どうしよう…」

となかなか決められない。

もう、どっちでもいいよ~

と内心思いつつも付き合っていました。

結局さんざん迷った挙句最初に良いと言った方に決まりました。

その後も

「何持っていけばいいのかな?」

と荷物作りも忘れ物がないか一緒にチェックしたり、

夜遅くまでバタバタ大慌て。

私まで緊張してきちゃって、その日はなかなか寝付けなくなってしまったほどです。

 

代表選手が居なくなってしまうと、レッジアーナは4,5人の練習になってしまいます。

家にも私とデルナの2人だけ。とっても静かで、さみしいものです。

 

イタリア代表は3日間ローマで合宿をした後チェコスロバキアに入って試合をし、

3-0の勝利を飾って帰ってきました。

ピッポは「たった10分しか出してもらえなかった」と、不服そうでした。

 

「代表チームのユニフォーム1枚ちょうだいよ」

と言ってみたところ、ピッポはくれなかったけど、

横で聞いていたエンマが

「私ので良ければあげるよ」

と快く4番のユニフォームをくれたのです!

本物のイタリア代表のユニフォーム!

エンマは代表チームでは不動のセンターバック、

しかもキャプテンなんです。

すごい人たちに囲まれて私ってとても幸せです。