日曜日にエメジーの家に行くと、教会のミサによく行きました。
教会は歩いて３，４分の所にあります。
エメジーはなぜかギターを持っていく。
「なんでギターを持っていくの？」
「後でわかるよ」
と教えてくれません。
エメジー、ギター弾けるのかな？
教会に着くと、すでに３，４０人の人が居ます。
近くに家が無いのに、どこからこんなに人が集まってくるんだろう。
エメジーは一番前の牧師さんの横に椅子を置いて、そこに座ります。
牧師さんの説教の後に、皆で賛美歌を歌うのですが、エメジーが皆の前でギターを弾きながら歌うのです。
すごいっ！
こんな事をする人だとは思ってなかった（笑）
なんか、イメージとギャップがあって驚きでした。
イメージと違うと言えば、車を運転中のエメジーも人格が変わります。
普段は、穏やかな物腰なのに、度々イライラした口調で独り言をいうのです。
そんな時、
「タルタルーガ！！」
と言っています。
「タルタルーガって何？」
と聞くと、
「タートルだよ」
「タートルって何だっけ？」
私、イタリア語以上に英語に弱い（笑）
「アメリカのコミックに何々タートルズってあるでしょ？」
んー、なんとなくキャラクターは浮かんだけど、あれってなんだっけ？
しばらくして、あー、カメか！
と分かりました。
前を行くノロノロ運転の車をカメと罵っていたわけです。
「おっまたタルタルーガがいるぞ！」
「またタルタルーガだ！」
次から次へと現れるタルタルーガに、もうイライラする事なく、楽しんでいるエメジーでした。
エメジーは博識です。
何を聞いてもたいてい答えが返ってくる。
「エメジーは、本当に神様がいると信じているの？」
「もちろん！」
「神様ってどこにいるの？」
木を指さして、
「ここにもいるし」
石を指さして
「ここにもいるし」
空中を仰いで、
「ここにもいるし」
自分の胸に手を置いて、
「ここにもいるし」
私の胸をポンっと叩いて
「ここにもいる」
と教えてくれました。
へぇー、意外。
私はてっきり天の上に居るものかと思っていたよ…。
私はイタリアの歌、カンツォーネが大好きになりました。
特にミーナっていう歌手がお気に入りでした。
それを知ったエメジーが、最新のアルバム（CD）をプレゼントしてくれたのです。
「ミーナはもう６０超えたおばあさんだよ。カオリが好きな歌はミーナが若い頃の歌。」
「エー、そうなの？」
私の好みは渋いなぁ（笑）
日本で言ったら美空ひばりか？
早速そのCDを一緒に聴いていて、
「私、この曲すごく好き。どんな事を歌っているの？」
と聞くと、最初の一行から訳し始めた。
一生懸命、私が知っている単語を探しながら、説明してくれる。
結局あんまり理解できなかったけど（笑）
エメジーにとても好感を持ちました。
エメジーの部屋は本がたくさん。
本を良く読んでいるんだと思うけど、
日本の事もいろいろ知っている。
「日本の食べ物は甘いんでしょ？」
と言った時、
あー、イタリアに来たばかりの頃、一緒にラーメンを食べて、
なんで「甘い」って言ったのか…合点がいきました。
そう言えば、最初からずーっと私の事を気遣ってくれていたなぁ…。
遠征帰りのバスの中では、私の横に座ってイタリア語講座をしてくれていた。
いつも、
試合後で疲れているのにぃ～、
イヤホンをして音楽聴いているのにぃ…
勘弁してよ～
って思ってたけど、
あれはエメジーの優しさだったのね。
来たばかりの頃は何もかも刺激的。
寂しさを感じる暇もなかったけど、
慣れてくると、ホームシックとはこういう事か！
と身に染みてくる。
しゃべらなくても横に人がいるだけでいいんだよね。
一人になるってこういう事か…
エメジーはそれが分かってたんだね。
きっと。
いつの間にか、
平日の練習でエメジーに会えるのが楽しみになるくらい
大好きになっていました。
グラウンド脇で、下部チームの子とおしゃべりしていた時です。
「カオリはトップチームで誰が一番好き？」
と聞かれました。
「ピッポと…」
と言うと、ウンウンわかるわかるとうなづいています。
「エメジー」
と言うと、
「エメジー？！」
と言って首を横に振っているのです。
「私もピッポ。それとカオリも大好き」
なんと、嬉しい事言ってくれる。
「だけど…エメジーはなんていうか…
いつもこんな感じだし、（と言いながら自分の口角を下げて見せる）
秘書みたいだし」
秘書も銀行員もほぼ一緒でしょ？
印象私とおんなじだ、と思って笑っちゃった。
「まだまだエメジーの事わかってないなぁ」
って偉そうに言ってやりました（笑）