イタリアに来てから3試合後にクリスマス休暇がありました。
ヴィニョットさんが
「クリスマスは練習も休み、選手もみんな家に帰って誰もいなくなっちゃうけど、カオリはどうする?」
と聞いてきました。
どうする?って?どうしよう…。
私が行く当ては、ジャコの所くらいか…。
でも、ジャコは身重で小さい子もいるし、こんな時に行くのは迷惑かなぁとも思いましたが、一人でここに残るのも寂しすぎます。
「ジャコの家に行きたい」
と言うと、またすぐに電話をかけてくれました。
今度は自分でしゃべれと受話器を渡されます。
「クリスマス、あなたの家、行きたい。」
即答でOKしてくれました。
良かったぁ!
今回は、ピッポが車で送ってくれます。
ピッポの家はトリエステTriesteと言って、ベネチアの更に奥、スロベニア(当時はユーゴスラビア)との国境沿いにあるので、ジャコの住むジェモーナGemonaは比較的近かったのです。
トリエステもピッポに連れて行ってもらった事がありましたが、絶壁の海岸に白いお城が建っていて、また、イタリアの他の都市とは違う趣を持った素敵な街でした。
でも、チームメートからはよくトリエステなまりをからかわれていましたねぇ。
トリエステ弁は、なんとなく東北弁の様なイントネーション?(笑)
イタリア人の挨拶であるハグの仕方もピッポから習いました。
「顔をそむけると失礼だからね。」
「抱き合った時に、お互いほっぺにチュッとキスをする。そして反対のほっぺにもチュっとする。」
「もし、唇をほっぺたにつけるのに抵抗があったら、チュっと音をたてるだけでもいいんだよ」
何回か練習もさせてもらったから、ジャコと再会した時も、今度はちゃんと顔をそむけず、ハグする事ができました!
息子のアンジェロはちょっと見ない間に大きくなっていて、ジャコのお腹もますます大きくなっていました。
クリスマスはジャコの実家で過ごします。
1時間くらい車で更に山を登って行ったところでした。
途中、突然、私の肩を叩き、道を歩いている人を指さして、ジャコが
「今の人見た?私の元カレ。」
とか言うの。
あー、見逃した!
だけど、だんなさんも子供もいる中で、そんな事言うのはやっぱりイタリア人?!
ジャコの実家には、お父さん、お母さん、小さい子どもが2人いるお兄さん家族とジャコの家族が集まりました。
ジャコの家族は皆ジャコみたいにやさしい人たちでした。
部外者の私をとても温かくもてなしてくれました。
リビングの中央には大きな本物の木のクリスマスツリーが飾ってあって、その根元には、プレゼントの箱が山積みに置いてあります。
薪をくべた暖炉があって、その上にはイエスキリスト誕生シーンの馬小屋のミニチュアが飾ってありました。
マリアさまと赤ん坊、馬の人形がいるの。
日本で見たことがなかったけど、イタリアの家庭ではたいていあるみたいでした。
飾りもキリストの誕生を祝う本物のクリスマスって感じ。
生まれて初めて教会に礼拝にも行きました。
大勢の人が集まり、厳かな空気の中、賛美歌を歌い、牧師さんが何かしゃべって、儀式みたいにブドウ酒を飲んだりしていました。最後に牧師さんの前に皆1列に並んで、一人ずつ、口の中に白くて丸い一口大のせんべいみたいなものを口の中に入れられるの。
よくわからなかったけど、私も一緒に並んで、順番が来たら、他の人を真似て口を開け、押し込まれた味のないせんべいを食べました。
「何?」
ってジャコに聞いたけど、私のイタリア語力では、せんべいじゃなくてパンだって事がわかっただけで、なんであんな事をするのかはよくわからなかった。
後で調べたら、パンはイエスキリストの体を表して、ブドウ酒はイエスキリストの血を表しているらしい。
こちらのクリスマスは、家でのんびりご馳走を食べて、日本のお正月みたい。
プレゼントも皆、箱が一人一つずつあって、私の分まであったのには感激でした。
ジャコのおかげで、楽しく本場のクリスマスを体験する事が出来たのでした。